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この先の予感①

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 石材建築の鍛練場はとても広く、全体の作りがシンプルだった。円形の中心は芝生でいろいろな訓練が出来るようになっているし、付随する施設は側面に並んでいる、といった感じ。

 隣を歩くフェルがひとつひとつ部隊の説明をしてくれる。

「この国には…端的に言ってしまえば、実働部隊とその下準備を行う師団がある。我が隊は魔導術を扱う実働部隊に配されているが、その名の由来は古代語で黒豹を意味してるんだ」

 つまりは黒豹アズール・べルテ隊ってことね。フェルの説明を聞きながら、チラリと後ろに視線を向ける。

 メディとアンバル様が並んで歩き、ノア…様は、その後ろからおまけのように付いてきていた。

 先程、施設内を案内してくれると言ったフェルに「程々にしろよ」とアンバル様が離れて行きそうになった。

 それじゃあ今回の目的が果たせない。だから慌ててメディの腕を掴み、彼女を咄嗟に押し付けた。

 『フェルは私の相手で忙しいので、彼女の相手をお願いします』と。

 あなたの都合なんて完全に無視です。って行動に、一瞬ポカンとしたアンバル様。フェルも驚いた表情をしていた。

 でも意外にもアンバル様とやらは無下にせず、無表情に戻っちゃったけど、とにかく一緒に来てくれることになった。後ろのおまけと共に。

「…………」
「…………」

 でもずっと会話もなく無言のまま。さっきから様子を窺ってるけどお互い話す兆しすら見えない。

 このままじゃ、せっかく憧れの人にお会いしたのに先がなくなってしまう。今日で関係が切れてしまうかもしれない。

 丁寧に話をしてくれてるフェルには悪いけど、正直見てられない。

 私はつい口を挟む。

「そういえば、アンバル様も実働部隊と伺いました。名前の由来などはあるのでしょうか?」

 話の糸口を探る。なにかメディとの繋がりそうな話題はないかと。その返答は……。

「知らねえな」

 はい。一刀両断。取りつく島もない。
 まあ、返事してくれただけマシなのかも。

 そうですか、と返したら、まさかのノア様が入ってきた。

「僕の部隊はあるよ。レイリーはふくろうの姿をした神の名。気高き化身。ああ、君にはわからないかな」
「今度見てみます」

 この人、一言余計とか言われないのかな。返事をしてくれるのはいいんだけど。

 でもチャンスとばかりに流れに乗って、メディに話を振る。

「メディは、何かお訊きしたいことあるかしら?」
「……」

 間を置いて、今まで一言も話さなかったメディがようやく顔を上げる。そして、真っ直ぐアンバル様を見つめた。

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