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婚約の証④

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 フェルはなにがおもしろかったのか、一通り笑ってから口を開く。

「君はウソが苦手なんだね」
「いやいや嘘じゃないですよ!? それも理由のひとつというか……」
「そうだね、それで他の理由は?」

 見透かすような瞳に言葉が詰まる。しどろもどろにならながら、なんとか頭を巡らしたけど出てきたのは言い訳にもならない呟き。

「それはえっと……」
「言えない?」
「うっ……」
「ルミ」
「……っ」

 別に悪いことはしてない。してないはずなのに……耐えきれず、とうとう白状してしまった。

「すみません! 他の侵入口がないか確認したかっただけです!」

 私の早口にフェルがきょとんとする。

 他の?と聞かれてメディとの会話を伝える。彼は聞き終えてから「なるほど」と言った。

「事情はわかったけど…あまり無茶はしないでくれ。ひとまず図面は用意するから」
「ありがとうございます!」

 会話が途切れたタイミングで再び扉がノックされた。立ち上がりかけた私を、フェルが片手を出して止める。代わりに扉へ向かった。

 その場で二言、三言なにかを話して、そのまま訪問者はいなくなる。

 戻ってきたフェルが手にしていたのは、四角い紺の箱。ベルベット調に似た品の良さを出していた。

 大きさはだいたい中くらいのタブレットサイズ。それでもはみ出るくらいかもしれない。何が入ってるんだろう、と思ったのも束の間、フェルは私の前に立つと手を差し出した。

「?」

 わけもわからずその手を取って、促されるままに立ち上がる。

 すると彼は一歩下がり、その箱を前に出すと蓋をゆっくりと持ち上げた。

 そこには並んだ黒いチョーカーが二本。しかも普通の布とは違う、硬めの革のようなものだった。真ん中には水色の石が埋め込まれている。

 綺麗だけど……アクセサリーはいらないと言ったはず。フェルを窺うと彼は柔らかく微笑んだ。

「これを、婚約の証に」
「婚約の証……?」

 婚約指輪のようなものかしら? 首を傾げたらフェルがガルシアさんに視線を流した。

 その視線を受け取った彼が、私たちの横に立つとフェルから箱を預かる。

 手の空いたフェルが、チョーカーの小さい方を持ち上げた。
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