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婚約の証③

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 再び内職パッチワークの時間。でも、単調作業をしてると眠くなる。少し気分転換に別の事でもしようかと思ったら、扉を叩かれた。

 軽く返事をして立ち上がる。迎えるために傍に寄って扉を開けたらフェルと、その後ろにガルシアさんがいた。

「いいかな?」
「どうぞ」

 フェルを部屋に通すと後からガルシアさんもついてくる。ワゴンを押しながら。

 ソファに座ったタイミングで素早く作られた紅茶が出てくる。さりげなくお菓子つきだ。当然、私の分も用意してくれる。

 甘いものが食べたかったんだよね、なんて。ガルシアさんはエスパーかしら。

 紅茶に手を伸ばして早速と本題に入る。

「それで、渡したいものとは?」
「それは後程。それより聞いたよ。今度はアゼリス嬢が入ってきたそうだね。すまない、君の安全をもっとしっかり考えるべきだった。近いうちに屋敷の警護を増やして」
「いえ、大丈夫です」

 これ以上、私のためにお金を使われちゃたまったもんじゃない。

 いずれ帰るつもりなんだから。無駄遣い、ダメ、絶対。それに対策済みだからね。効果はまだ分からないけど。

 私の言葉に動きを止めたフェルは少しして苦笑する。

「わかったよ。なら出来るだけ人が傍にいるよう手配しておこう」
「無理のない範囲でお願いします。それより、このお屋敷の図面か何かありません? 少し広いので見取り図のようなもので構わないんですが……」

 そう言うと聞いていたフェルが訝しげに見てくる。

「何に使うんだい?」
「迷わないように……ですかね」

 本当は他に不審者の侵入口がないか、確認したり、飾り付けるイメージを決めるのに使いたかった。でもそんなこと言えば心配かけそうだ。だから黙っていたかったんだけど。

 相手からしてみれば唐突に図面が欲しいなんて怪しまれるのも頷ける。

 けど今さら上手い言い訳も浮かばなくて、どうしようと焦っていたら急にフェルがくくっと笑い始めた。

 
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