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家政婦…もとい、婚約者は見た!③

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「……すみません。どちら様でしょうか?」
「……」

 ローブの人物は足を止めて、じっとこちらの様子を窺う。間を置いて、ゆっくりフードを外した。

 短い桃色の髪。こちらを見る瞳は青色をしている。直後、その瞳が鋭く細められた。

「あんたこそ……誰?」
「私は……?!」

 既視感ある状況に、またもや自己紹介もままならない。ズンズンと向かってくる少女の迫力に思わず私も後ずさった。

 けど、すぐに窓際の壁に追い詰められた。その子はバンッと壁に片手をついて凄んでくる。

 ちょっと! なんで皆こんなに気性が荒いの?!

 罪の意識があるからバレるのを恐れて攻撃的になっているとか、と頭の片隅に浮かぶけど、とにかく理由よりも今は冷静に話し合う方が先決かもしれない。

 どう切り出そうか、と考えるより早く目の前の彼女が訝しげに眉根を寄せる。

「あんた見ない顔ね。新しい使用人? あたしが誰だか分かって声かけてんの?」
「いえ。存じ上げませんのでお名前を」
「使用人でもフェル様の屋敷に女が居ちゃいけないのよ! どこから来たわけ? 協会? 個別の契約? どっちにしてもあたしが金払うから今すぐ荷物をまとめて出ていきなさい!」

 捲し立てられて驚いてしまう。けどこれじゃあ相手のペースに引き摺られるだけ。そんな状態では会話にすらならない。

 こっちにだって言い分がある。ちゃんと伝えるために必要なのは冷静さ。そして少しだけ強気でいこうと決めた。

 素早く呼吸して彼女の目を見据える。ハッキリ聞こえるように答えた。

「私は使用人じゃありません。フェルの婚約者です。もう、こんなことは止めていただけませんか? 彼にも迷惑です」
「……婚、約者……?」

 ふらりと一歩下がる。同じ言葉を繰り返しながらも理解できていない様子だった。

 でも、効果はあったみたい。彼女は呆然とした後うつむいた。しばらく無言だったけど徐々に肩を震わせる。

 一瞬泣いてるのかな、と心配になる。でもすぐにそれが間違いだと気づく。
 
 くくくっと笑い始め手に持っていたガラスペンをバキッと…………バキッ?

 え?と思う間もなく顔をあげた少女は柔らかい笑みを浮かべた。

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