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おはようございます①

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 幼い頃、お姫様に憧れていた。
 だって女の子だもん。そんな時期があっても、おかしくないじゃない?

 きらびやかなドレスに豪華な食事。お城の広い庭では『ジェームズ』なんて名前のヨークシャーテリアのワンコと戯れる。

 アハハー、ウフフーって。

 そして執事が呼ぶの。ティーパーティの準備ができましたって。可愛らしい食器が並ぶテーブルで、紅茶を注ぎながら私の名前を──。

「ルミ様」

 そう、こんな風に呼んで。

「ルミ様」

 うんうん、わかってるよ。ジェームズに待てをさせてからね。

 ほら、ジェームズ……。

「ルミ様」

 わかってるってば。ジェームズがなかなか待てをしてくれない…って、言ってるのに声をかけられる。

「ルミ様、そろそろ起床の準備をなさってください」

 ……。
 ……ん?
 ……きしょう……?
 キショウ…………。

 起床?!

 ガバッと身を起こすと、室内は眩しい光で溢れていた。一瞬、その明るさにクラっとしたけどなんとか留まる。

 そのまま室内を見渡すと夢の続きかと思うくらい豪華なお部屋だった。まるでホテルのスイートルーム。

 そういえば私、よその家にお泊まりしたのよね。忘れてた。

「……」

 ふわっと、風を感じて視線を動かす。窓からは日射しが差し込んでいる。レースのカーテンが吹き込む風に揺れていた。

 その向こうでバルコニーに繋がる大きなガラス戸が、わずかに開いている。風は、そこから入り込んでいるようだ。

「ルミ様、お支度を致しましょう。僭越ながら、このガルシアめが手伝いますので」

 声に顔を動かすと執事のガルシアさんが軽く頭を下げて、傍に来ようとした。

 今日も髪型がピッチリ決まってるねー、じゃない!

 慌てて片手で制止する。

「ま、待ってください! 大丈夫です! 一人で出来ますから!」

 支度の手伝いって着替えとかだよね? 絶対無理でしょ! ガルシアさん男性よ?! 一応、恥じらいくらい持ってるんだからね!

 夢うつつで思い出した中世の着替え風景、何もせずに立ってるだけで着替えが済んでしまうという姿に自分を重ね慌てる。私の必死の形相に気付いたのか、彼は足を止めて目を瞬いた。けどすぐにクスッと笑い声を洩らした。

「そんなに焦らずとも……我々は旦那様のお客人に無体は働きませんよ。婚約者様となれば尚のこと」
「あ、いえ……そうですよね……あはは」

 よくよく考えればすでに寝起きを見られてるわけで。今さら着替えくらいどうってことない……とはやっぱならないよね。「あの」と、ふたたびガルシアさんに声をかけると近くに寄ってきた彼が眉根を寄せる。

「ですが、貴女の不安ももっともです。近いうちに侍女の手配を旦那様へ打診しておきましょう」
「そんな……お構い無く。自分のことは自分で出来ますので」
「そうは言っても、このままご不便を強いるわけにはいきませよ。ひとまず今日はお任せしますが何かあればお呼びください」
「はい、了解しました!」

 気合いの入った返事をしたら、ガルシアさんが一瞬驚いた表情をしたものの、すぐ和らげる。

「洗面所は入り口寄りの扉、衣装部屋は反対の扉になります。衣装部屋の中にあるものはどれでもお好きなものをお召しください。私は扉の前でお待ちしておりますので終わり次第、お声がけくださいませ」
「分かりました。有難うございます」

 頭を下げてガルシアさんが部屋を後にする。一人残された私は、早速と洗面所に行ってそれから教えてもらった衣装部屋とやらに行ってみた。

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