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衝撃⑤
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なんの変鉄もない茶色い扉。よくある洋室の扉。でも、彼はその前で立ち止まったまま全く動こうとしない。不思議に思って問いかける。
「ここですか?」
「あ、ああ……」
訊いてから、ようやく動き始める。ゆっくり躊躇いがちにノブへ手を伸ばすけど、なかなか触れようとしない。
なんだろう? なにかあるのかな?
何気なく見上げると彼は片手で口元を覆っていた。その顔色の悪さに焦ってしまう。
「大丈夫ですか?! また吐き気が戻ってきちゃったんですね?! 今、お部屋に」
「だ、大丈夫だから……」
今にも吐きそうなその顔で、ノブに伸ばしていた手を私の前に出して制止する。そしてすぐ扉へ向き直し、大きく呼吸をしたあと一言呟いた。
「巻き込んでしまったら、すまない」
「え?」
フェルクスさんが意を決したようにノブを回す。瞬間、甘ったるい匂いが鼻を掠めた。どこかで嗅いだことのある香り。
ああ、あれだ。質の悪い芳香剤を間近で嗅いじゃった感じ。それに似ている。ちょっと気持ち悪い。
室内はカーテンが閉め切られていて薄暗かったけど、すぐに照明が点いて明るくなった。
けど直後、それを後悔する。
「フェ・ル・ク・スさま♡」
「…………」
弾んだ声で艶やかな赤髪のお嬢さんが全裸でフェルクスさんに抱きつく。反してフェルクスさんは死にそうなほど真っ青な顔で、額に片手を当てていた。
「……ソール嬢、離れ」
「きゃあ!」
「え」
全裸のお嬢さんは私の存在に気づくと悲鳴を上げる。私も反射的に反応してしまう。彼女は両手で体を隠しながら金切り声をあげた。
「誰よあんた!! 人の裸見て!! この、変態!!」
「え、ええーー!!?」
見ず知らずの全裸女に変態と呼ばれるショック。しかも見たくて見た訳じゃないのに!
でも言い返す言葉が浮かばなくて、しばしの間混乱していた。
「ここですか?」
「あ、ああ……」
訊いてから、ようやく動き始める。ゆっくり躊躇いがちにノブへ手を伸ばすけど、なかなか触れようとしない。
なんだろう? なにかあるのかな?
何気なく見上げると彼は片手で口元を覆っていた。その顔色の悪さに焦ってしまう。
「大丈夫ですか?! また吐き気が戻ってきちゃったんですね?! 今、お部屋に」
「だ、大丈夫だから……」
今にも吐きそうなその顔で、ノブに伸ばしていた手を私の前に出して制止する。そしてすぐ扉へ向き直し、大きく呼吸をしたあと一言呟いた。
「巻き込んでしまったら、すまない」
「え?」
フェルクスさんが意を決したようにノブを回す。瞬間、甘ったるい匂いが鼻を掠めた。どこかで嗅いだことのある香り。
ああ、あれだ。質の悪い芳香剤を間近で嗅いじゃった感じ。それに似ている。ちょっと気持ち悪い。
室内はカーテンが閉め切られていて薄暗かったけど、すぐに照明が点いて明るくなった。
けど直後、それを後悔する。
「フェ・ル・ク・スさま♡」
「…………」
弾んだ声で艶やかな赤髪のお嬢さんが全裸でフェルクスさんに抱きつく。反してフェルクスさんは死にそうなほど真っ青な顔で、額に片手を当てていた。
「……ソール嬢、離れ」
「きゃあ!」
「え」
全裸のお嬢さんは私の存在に気づくと悲鳴を上げる。私も反射的に反応してしまう。彼女は両手で体を隠しながら金切り声をあげた。
「誰よあんた!! 人の裸見て!! この、変態!!」
「え、ええーー!!?」
見ず知らずの全裸女に変態と呼ばれるショック。しかも見たくて見た訳じゃないのに!
でも言い返す言葉が浮かばなくて、しばしの間混乱していた。
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