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衝撃④
しおりを挟む目的地の建物は想像以上に大きかった。洋館、という雰囲気がピッタリで、敷地の全貌は一目で見きれない。なんだかこっちも映画に出てきそうだと思う。
先に動き出すフェルクスさんが慣れた様子で中に入っていく。私も遅れて後を追った。
門を抜けて入り口にいた白い服の男性に馬を預けて建物の大きな扉に近づく。勝手に開いたのに驚いて、でもそれが人の手によるものだと、茶髪の黒いベストの男性を見ながら気づいた。
「おかえりなさいませ」
その声に視線を前に向ける。片眼鏡をかけた初老の男性が頭を下げていた。まるでイメージ通りの執事といった感じで、燕尾服を身に付けている。
その男性にフェルクスさんが声をかける。
「ああ、今戻った。悪いが今日は客人がいるんだ。迎える準備を頼む」
「! か…しこまりました。すぐに」
顔を上げた執事さんが私を見て、思いっきり目を見開いていた。ものすごく動揺してたみたいだけど、やっぱり服装が気になるのかしら。でも色合い的には、この屋敷で動いてる人たちと変わらないと思うんだけど。
それともあれかな。街でもそうだったけど、この国では異国の人はあまり受け入れられないとか。そういう文化もあるよね。だとしたら早めに出国を考えないといけないのかも。
でもせめてホテルのひとつはあってほしい。
改めて自分の置かれた状況をまとめていたら、中央の階段を上りかけていたフェルクスさんに声をかけられた。
「ルミ? 付いてきてくれるかい? 部屋は二階だから」
「あ、はい。わかりました」
返事をして慌てて追いかける。隣に並ぶと彼は屋敷ついて話し始める。
「ここは先々代が建てた家でね。王城に近いのが気に入ってる。ただ建物自体は古いんだ。清掃は皆が細かく手入れしてくれてるが華やかさはないかな。知り合いからは寂れているなんて言われたこともあるんだけどね」
「そうなんですね。私は落ち着いていて居心地がいいと思いますけど」
静かな雰囲気に合わせて品の良い装飾品。あまり派手なものは好まない私からすれば居心地は良い。まあ確かに花でも飾ったら、また違うかもしれないかもしれないけど。
そんな風に窓の外を眺めていたら、フェルクスさんが柔らかい声を出した。
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
その様子からは先程までの体調の悪さは感じられない。一時のことだったのかな、と思った矢先、廊下の途中で彼が立ち止まった。
その顔は街で見たのと同じように曇っている。
「……」
「?」
フェルクスさんは、その表情のまま横の扉に視線を向ける。私も同じように隣から覗きこんだ。
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