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「この世界…というかこのゲームについてだな。43の迷宮~双賢の覇者~は運営に用意された迷宮を攻略していくVRmmoだ。プレイヤーは前衛、後衛、回復役に補助士、四属性の職種でキャラメイキングができる。ただ、個々の身体能力は本体に基づいて計算される」
「本体?」
「つまりリアルの自分ってこと。俺とか本体の筋肉量が少ないから、狙撃手を選んだってところはあるんだけど」
「そうなんだ」
「ああ。そういえばさっき気づいたんだが、狙撃手は物理攻撃力が低いはずなのに闘技場では大幅にアップしていたんだよね。たぶんキミの身体能力が高いからだろ? 本体は筋肉あるタイプ?」
スープを飲み込んで「うん?」とアリアが頭を傾ける。ワンテンポ遅れて「そうね」と返した。
「まあ、ある方かもね。おじいちゃんが大昔に道場?やってたみたいで教え込まれたの。私が生まれた時にはその道場自体なくなっちゃってたから本当かどうかは知らないけど、おじいちゃんの指導って遊びみたいなものだったし、今も習慣化してるかな」
「へー、そうなんだ」
「それでさ、その身体能力って、あの小型の機械で測ってるんでしょ」
「体組計双通機、通称FBCのことだろ? こめかみに当たるようセットして全身スキャンしデータを43に送る専用機器」
「そう、ダイブするときはベッドで寝ながらやりなさいって友だちに言われたわ」
「一応意識失うし危ないからな。今はゲーミングベッドとかもあるよ」
「あの光るやつ?」
「うん。FBCと繋げておくと帰還時に光って教えてくれるんだ。ちなみに俺も使ってる」
「え」
「ん?」
「ゲーム終わると光るの? ピカッて?」
「ふわーって感じだけど」
「寝てるとこふわーって?」
「ふわーって」
「ふわー……って、ふっ」
想像したのかアリアが吹き出しクスクス笑い出す。急に恥ずかしくなったのかリューズが「あのさ」と口を挟む。
「通販サイトじゃ、いつも上位にあるんだからな」
「はいはい、今度見てみるよ」
軽くあしらわれたのが不満なのか口をとがらせ、そっぽ向く。けれどすぐ思い出したように顔を戻した。
「って、そうじゃないよな。話が逸れたけど、とにかくここはゲームの中で俺たちはキャラクター。個々の特徴を生かしていろいろイベントを楽しもうってことだ」
「さっきの喧嘩もイベント?」
「いや…さっきのは…売られた喧嘩を買ったというか、なんというか」
指摘されリューズは口ごもる。言いづらそうにしながらも自身のコップの飲み物を飲み干して続けた。
「あれは単純な喧嘩だよ」
「何があったの?」
「たいしたことない。アイテム売買のときに割り込んで来たから文句言っただけ。あ、売買についてはそのうち教えるな」
「うん。それで喧嘩になったんだ?」
「そ。あの男、ブルースってやつはランカーなんだよな。このゲームでのランキング上位者、つまりめちゃくちゃ強いってこと。たまにいるんだよ、強ければ何してもいいって思ってるやつ」
「ふーん」
「まあ、実際ああやってサシの戦いになると普通は負けるんだけどな。戦力差激しいし。だから適当に相手して離脱しようと思ってたんだけどさ……ふっ」
「突然なに?」
「いや、ごめん。まさか勝つなんてさ。あんなにステータス差あったのに。しかも狙撃手相手に殴られるなんて思いもしなかっただろうし…見ただろ? あの顔」
ニコニコするリューズにアリアは呆れたように肩をすくめる。
「嬉しそうで何より」
「まあ、アリアにはとばっちりだよな。でもギミックも発動したしキミかなり強運タイプ?」
「わからないけど。そういえばそのギミックってなに?」
「闘技場ってさ、もとは大規模戦闘用なんだよ。たくさんのプレイヤーが集まってボスを倒すとかそういうの」
「そうなんだ」
「そ。そういうときにプレイヤーだけの力じゃ倒せないときもあってさ、ああいうギミック…罠みたいなのが、用意されてるんだよ」
「ボスを倒すほどの威力ってこと?」
「うん、まあ、それに近いかな。だからプレイヤー同士の戦いで発動するはずないんだけど」
「それもバグなんじゃない?」
「うーん……そうかなあ~」
考え込むように顎に手を添える。けどすぐ目の前の料理に意識が移った。軽く手を伸ばしてアリアに声をかける。
「あ、ねえ。そっちの魚とってもらっていい?」
「これ? はい」
「あんがと」
その後は、軽い雑談を交わしながら食事を楽しむ。周りもいつの間にか賑やかになり、窓の外は夕日が沈みかけていた。
「本体?」
「つまりリアルの自分ってこと。俺とか本体の筋肉量が少ないから、狙撃手を選んだってところはあるんだけど」
「そうなんだ」
「ああ。そういえばさっき気づいたんだが、狙撃手は物理攻撃力が低いはずなのに闘技場では大幅にアップしていたんだよね。たぶんキミの身体能力が高いからだろ? 本体は筋肉あるタイプ?」
スープを飲み込んで「うん?」とアリアが頭を傾ける。ワンテンポ遅れて「そうね」と返した。
「まあ、ある方かもね。おじいちゃんが大昔に道場?やってたみたいで教え込まれたの。私が生まれた時にはその道場自体なくなっちゃってたから本当かどうかは知らないけど、おじいちゃんの指導って遊びみたいなものだったし、今も習慣化してるかな」
「へー、そうなんだ」
「それでさ、その身体能力って、あの小型の機械で測ってるんでしょ」
「体組計双通機、通称FBCのことだろ? こめかみに当たるようセットして全身スキャンしデータを43に送る専用機器」
「そう、ダイブするときはベッドで寝ながらやりなさいって友だちに言われたわ」
「一応意識失うし危ないからな。今はゲーミングベッドとかもあるよ」
「あの光るやつ?」
「うん。FBCと繋げておくと帰還時に光って教えてくれるんだ。ちなみに俺も使ってる」
「え」
「ん?」
「ゲーム終わると光るの? ピカッて?」
「ふわーって感じだけど」
「寝てるとこふわーって?」
「ふわーって」
「ふわー……って、ふっ」
想像したのかアリアが吹き出しクスクス笑い出す。急に恥ずかしくなったのかリューズが「あのさ」と口を挟む。
「通販サイトじゃ、いつも上位にあるんだからな」
「はいはい、今度見てみるよ」
軽くあしらわれたのが不満なのか口をとがらせ、そっぽ向く。けれどすぐ思い出したように顔を戻した。
「って、そうじゃないよな。話が逸れたけど、とにかくここはゲームの中で俺たちはキャラクター。個々の特徴を生かしていろいろイベントを楽しもうってことだ」
「さっきの喧嘩もイベント?」
「いや…さっきのは…売られた喧嘩を買ったというか、なんというか」
指摘されリューズは口ごもる。言いづらそうにしながらも自身のコップの飲み物を飲み干して続けた。
「あれは単純な喧嘩だよ」
「何があったの?」
「たいしたことない。アイテム売買のときに割り込んで来たから文句言っただけ。あ、売買についてはそのうち教えるな」
「うん。それで喧嘩になったんだ?」
「そ。あの男、ブルースってやつはランカーなんだよな。このゲームでのランキング上位者、つまりめちゃくちゃ強いってこと。たまにいるんだよ、強ければ何してもいいって思ってるやつ」
「ふーん」
「まあ、実際ああやってサシの戦いになると普通は負けるんだけどな。戦力差激しいし。だから適当に相手して離脱しようと思ってたんだけどさ……ふっ」
「突然なに?」
「いや、ごめん。まさか勝つなんてさ。あんなにステータス差あったのに。しかも狙撃手相手に殴られるなんて思いもしなかっただろうし…見ただろ? あの顔」
ニコニコするリューズにアリアは呆れたように肩をすくめる。
「嬉しそうで何より」
「まあ、アリアにはとばっちりだよな。でもギミックも発動したしキミかなり強運タイプ?」
「わからないけど。そういえばそのギミックってなに?」
「闘技場ってさ、もとは大規模戦闘用なんだよ。たくさんのプレイヤーが集まってボスを倒すとかそういうの」
「そうなんだ」
「そ。そういうときにプレイヤーだけの力じゃ倒せないときもあってさ、ああいうギミック…罠みたいなのが、用意されてるんだよ」
「ボスを倒すほどの威力ってこと?」
「うん、まあ、それに近いかな。だからプレイヤー同士の戦いで発動するはずないんだけど」
「それもバグなんじゃない?」
「うーん……そうかなあ~」
考え込むように顎に手を添える。けどすぐ目の前の料理に意識が移った。軽く手を伸ばしてアリアに声をかける。
「あ、ねえ。そっちの魚とってもらっていい?」
「これ? はい」
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その後は、軽い雑談を交わしながら食事を楽しむ。周りもいつの間にか賑やかになり、窓の外は夕日が沈みかけていた。
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