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お披露目式と前世の記憶
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「お体は大丈夫なのですか?」
屋敷の外から一人で歩いてきたのであろう殿下の体調が気になり、見た目では分からないため聞いてみた。
「ああ、大丈夫だよ。少し前に侍医が来てね。魔力が安定しているからもう大丈夫だと言われたんだ」
柔らかく微笑みながら答えてくれる殿下。
軍服を着ている殿下は、中庭で出会った時に見せていた、同じ年頃の幼さはなく、とても凛々しい。
「それは良かったですわ」
誕生日よりも早く魔力が安定する方は数十年に2人ほどいらっしゃるらしいのだが、まさかお目にかかれるとは思わなかった。
殿下の視線は私から、私の背後にある大噴水へと移る。
「公爵から是非とも大噴水を見てほしいと言われてきてみたのだが、こんなに美しいものを2つも見る事ができるとは」
「2つですか?」
「大噴水と君のことだよ。エリーシェ。大噴水も様々な色へと移り変わってとても美しいが、この淡い光の中にいる君は一段と美しい」
音が出そうなほどに顔が赤くなってしまう。こういう時はどう言えば良いのか。混乱してしまう。
「で…殿下。そんな言葉をかけられてしまったら勘違いされるご令嬢方が絶えなくなりますわ。お控えくださいませ」
顔を背ける私。不敬になってしまうかもしれないが、見逃していただきたい。隠れる場所があったら隠れてしまいたいほどに恥ずかしい。
くすっと笑う殿下に私は、再び殿下を見つめる。
「そろそろ皆の元へと帰ろうか。エリーシェ。もし良かったら公爵の元まで私にエスコートをさせてくれないかい?」
手を差し伸べる殿下に、再び既視感を感じるが、返事をしながら手を重ねた瞬間…
どこか懐かしい…見知らぬ服を着た黒色の髪の、学園に通っているぐらいの年齢の女性が、ゲームを買ってくれてありがとうと私に向かってお礼を言う姿。
お気に入りのスチルがあると見て見てと楽しそうに教えに来る妹。
「お姉ちゃん!見て見て!学園に通ってるアイザックも素敵なんだけど。悪役令嬢が恋に落ちるきっかけになった幼いアイザックの大噴水でのスチルも最高なの!」と私に見せてくれたスチルのアイザックが、今の私が目にしている殿下とセリフは違うが、手を差し伸べる姿が、とても似ていて固まってしまう。
今のはなに?突然脳裏に浮かんだ記憶らしきものに戸惑う…
「エリーシェ?どうしたんだい?」
不思議そうに見つめる殿下。
「少しボーッとしておりました。さぁ行きましょう」
私は、殿下とともにお父様たちが待つ屋敷へと向かいながら…部分的にではあったが、前世の日本という国に住んでいた山岡美波の記憶を思い出していく。
屋敷の外から一人で歩いてきたのであろう殿下の体調が気になり、見た目では分からないため聞いてみた。
「ああ、大丈夫だよ。少し前に侍医が来てね。魔力が安定しているからもう大丈夫だと言われたんだ」
柔らかく微笑みながら答えてくれる殿下。
軍服を着ている殿下は、中庭で出会った時に見せていた、同じ年頃の幼さはなく、とても凛々しい。
「それは良かったですわ」
誕生日よりも早く魔力が安定する方は数十年に2人ほどいらっしゃるらしいのだが、まさかお目にかかれるとは思わなかった。
殿下の視線は私から、私の背後にある大噴水へと移る。
「公爵から是非とも大噴水を見てほしいと言われてきてみたのだが、こんなに美しいものを2つも見る事ができるとは」
「2つですか?」
「大噴水と君のことだよ。エリーシェ。大噴水も様々な色へと移り変わってとても美しいが、この淡い光の中にいる君は一段と美しい」
音が出そうなほどに顔が赤くなってしまう。こういう時はどう言えば良いのか。混乱してしまう。
「で…殿下。そんな言葉をかけられてしまったら勘違いされるご令嬢方が絶えなくなりますわ。お控えくださいませ」
顔を背ける私。不敬になってしまうかもしれないが、見逃していただきたい。隠れる場所があったら隠れてしまいたいほどに恥ずかしい。
くすっと笑う殿下に私は、再び殿下を見つめる。
「そろそろ皆の元へと帰ろうか。エリーシェ。もし良かったら公爵の元まで私にエスコートをさせてくれないかい?」
手を差し伸べる殿下に、再び既視感を感じるが、返事をしながら手を重ねた瞬間…
どこか懐かしい…見知らぬ服を着た黒色の髪の、学園に通っているぐらいの年齢の女性が、ゲームを買ってくれてありがとうと私に向かってお礼を言う姿。
お気に入りのスチルがあると見て見てと楽しそうに教えに来る妹。
「お姉ちゃん!見て見て!学園に通ってるアイザックも素敵なんだけど。悪役令嬢が恋に落ちるきっかけになった幼いアイザックの大噴水でのスチルも最高なの!」と私に見せてくれたスチルのアイザックが、今の私が目にしている殿下とセリフは違うが、手を差し伸べる姿が、とても似ていて固まってしまう。
今のはなに?突然脳裏に浮かんだ記憶らしきものに戸惑う…
「エリーシェ?どうしたんだい?」
不思議そうに見つめる殿下。
「少しボーッとしておりました。さぁ行きましょう」
私は、殿下とともにお父様たちが待つ屋敷へと向かいながら…部分的にではあったが、前世の日本という国に住んでいた山岡美波の記憶を思い出していく。
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