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殿下との出会い

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 大泣きする男の子は泣くのに夢中で、私の声が聞こえていない。このまま泣かせ続けるわけにもいかないので、家族や婚約者以外の男の子には気軽に触れてはいけませんよと教わってはいたが…男の子の手に触れることにした。

流石に触れられたら、自分自身が死んでいないことに気付くだろうし。話も聞いてくれるのではないかと思ったからだ。

「!」
男の子の手に触れて、
「大丈夫ですよ。あなたは死んではおりませんわ」

優しく話かける。とめどなく流れ続けていた涙が嘘のようにひき、大きな瞳が私を見る。

「…僕は生きているの?」
まだ信じられないような顔をしている男の子。

「えぇ」
笑顔でうなずく私。

安心したのか落ち着いてきた男の子。泣いていたためほんのりと赤くなっていた顔は、白い肌へと戻ろうとしている。

「あ…」
男の子の視線が握られている手の方へといくと、音が出そうなほどに顔を真っ赤に染めた。

「申し訳ありませんわ」
すぐに手を離すと、寂しそうな顔をする男の子。早くご両親の元へと連れて行かなければと思った私は、男の子に名前や、ご両親はどんなお仕事をしているのかを聞くことにした。

本日はお披露目式の準備のために宝石商から食材屋まで様々な商家の方々がいらっしゃっているから。職業さえ分かれば、食材屋なら厨房へ、演奏家なら楽屋代わりに開放されている舞踏場へとスムーズに男の子を両親の元へと送ることができると思ったからだ。


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