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途中にいくつか扉がありましたけれど。フリード殿下は見向きもされず、とある両開きの扉の前で立ち止まられました。
「ちょっと目を閉じていてもらえるかな?」
私は言われるままに目を閉じることにしました。
するとすぐにフリード殿下の手が離れていくのを感じ、両開きの扉の開く音が聞こえてきました。
「もう大丈夫だよ」
フリード殿下のお声と共に、私はそっと瞼を開きました。
そこにはとても広く天井の高い部屋があったのです。目の前には壁ではなく、とても大きなガラスがあり、夕陽に照らされた湖がキラキラと輝いているのが見えましたわ。
部屋の内装も見たことがない不思議なものが多くあり、部屋の照明もあたたかみのある光を放つものでした。
のんびりと景色を楽しみながら過ごすのにうってつけの場所なのだと身を持って感じましたわ。
「綺麗……」
思わず口から漏れ出てしまった言葉を、フリード殿下は微笑んで聞いてくださいました。
「気に入ってくれたようで嬉しいよ。さぁ、あちらのソファに座ろうか」
そのソファは、変わった作りのソファでした。L字型なのですけれど。一部ベッドのようになっており、その部分には背もたれがありませんでした。
私はフリード殿下の隣に座るのが恥ずかしく、背もたれのないベッド部分に座りました。
「リア。そのような事をすると勘違いしてしまいそうになるじゃないか」
私はフリード殿下のおっしゃられた意味が分からずに小首をかしげました。
「他の男の前ではやってはいけないよ」
と何故か注意されましたけれど。
結局はフリード殿下もベッド部分に座り直されてしまいましたので、隣同士になってしまいましたわ。
私達は背もたれが無いこともすっかりと忘れ、夕陽が沈んでしまうまで景色を眺めながら話に花を咲かせたのでした。
─────
しばらく話をしていると、フリード殿下に喉が渇いていないかと尋ねられまして、ええ確かに喉が渇いてきましたわと返事をしました。
紅茶とコーヒーどっちが良い?やら、熱いものと冷たいものどちらが良い?と聞かれましたので、紅茶が飲みたいことと、今から湯を沸かすのはどちらかに控えているであろう侍女たちも大変だろうと思い、冷たいものが良いですと答えましたわ。
すると少し待っていてと、フリード殿下はソファから立ち上がり、移動されていくので、もしやと思いまして私は慌てて立ち上がり、フリード殿下の後を追いました。
フリード殿下は綺麗な透明のガラスでできた物を取り出し、背の高い机に置くと長方形の箱を開けられました。
その中から不思議な絵の大きなものを取り出し、ひねり開けて、ガラスで出来たものに注がれました。
「それは?」
「これはガラスで作られたコップというティーカップに似た感じのものだよ。そしてこれは紅茶さ。とても冷たいけれど。美味しいものなんだ。ゆっくりと少しずつ飲んでみて」
優しい瞳をした殿下に、コップというものを渡され、受け取りました。
触れるとひんやりと、まるで冬の雪解け水のような冷たさでしたので、私はとても驚いてしまいました。
私はコップにそっと口付けて、冷たい紅茶を一口飲んでみました。
「これはとても美味ですわね」
上質の茶葉を使っているのか、とても香り高く、甘みもあり、とてもおいしいものでした。
「お気に召したようで良かった。では僕も頂こうかな」
フリード殿下は私の持っているコップと同じものを片手に持ち、そのまま一口飲まれました。
「うん。やはり冷えている方がより一層おいしく感じるね。リアに振る舞えて良かったよ」
そう言ってとても満足そうに微笑むフリード殿下のご尊顔に見惚れてしまった私なのでした。
──────
お読みいただきありがとうございます。亀さん並みのノロノロペースですけれど。最近は少しずつ物語を進めることができて良かったです。
次回は二人きりのお食事の回にしたいと思います。
とあるイベントも発生させたいのですが仕事次第になるのでどうか気長にお待ちくださいませ。
「ちょっと目を閉じていてもらえるかな?」
私は言われるままに目を閉じることにしました。
するとすぐにフリード殿下の手が離れていくのを感じ、両開きの扉の開く音が聞こえてきました。
「もう大丈夫だよ」
フリード殿下のお声と共に、私はそっと瞼を開きました。
そこにはとても広く天井の高い部屋があったのです。目の前には壁ではなく、とても大きなガラスがあり、夕陽に照らされた湖がキラキラと輝いているのが見えましたわ。
部屋の内装も見たことがない不思議なものが多くあり、部屋の照明もあたたかみのある光を放つものでした。
のんびりと景色を楽しみながら過ごすのにうってつけの場所なのだと身を持って感じましたわ。
「綺麗……」
思わず口から漏れ出てしまった言葉を、フリード殿下は微笑んで聞いてくださいました。
「気に入ってくれたようで嬉しいよ。さぁ、あちらのソファに座ろうか」
そのソファは、変わった作りのソファでした。L字型なのですけれど。一部ベッドのようになっており、その部分には背もたれがありませんでした。
私はフリード殿下の隣に座るのが恥ずかしく、背もたれのないベッド部分に座りました。
「リア。そのような事をすると勘違いしてしまいそうになるじゃないか」
私はフリード殿下のおっしゃられた意味が分からずに小首をかしげました。
「他の男の前ではやってはいけないよ」
と何故か注意されましたけれど。
結局はフリード殿下もベッド部分に座り直されてしまいましたので、隣同士になってしまいましたわ。
私達は背もたれが無いこともすっかりと忘れ、夕陽が沈んでしまうまで景色を眺めながら話に花を咲かせたのでした。
─────
しばらく話をしていると、フリード殿下に喉が渇いていないかと尋ねられまして、ええ確かに喉が渇いてきましたわと返事をしました。
紅茶とコーヒーどっちが良い?やら、熱いものと冷たいものどちらが良い?と聞かれましたので、紅茶が飲みたいことと、今から湯を沸かすのはどちらかに控えているであろう侍女たちも大変だろうと思い、冷たいものが良いですと答えましたわ。
すると少し待っていてと、フリード殿下はソファから立ち上がり、移動されていくので、もしやと思いまして私は慌てて立ち上がり、フリード殿下の後を追いました。
フリード殿下は綺麗な透明のガラスでできた物を取り出し、背の高い机に置くと長方形の箱を開けられました。
その中から不思議な絵の大きなものを取り出し、ひねり開けて、ガラスで出来たものに注がれました。
「それは?」
「これはガラスで作られたコップというティーカップに似た感じのものだよ。そしてこれは紅茶さ。とても冷たいけれど。美味しいものなんだ。ゆっくりと少しずつ飲んでみて」
優しい瞳をした殿下に、コップというものを渡され、受け取りました。
触れるとひんやりと、まるで冬の雪解け水のような冷たさでしたので、私はとても驚いてしまいました。
私はコップにそっと口付けて、冷たい紅茶を一口飲んでみました。
「これはとても美味ですわね」
上質の茶葉を使っているのか、とても香り高く、甘みもあり、とてもおいしいものでした。
「お気に召したようで良かった。では僕も頂こうかな」
フリード殿下は私の持っているコップと同じものを片手に持ち、そのまま一口飲まれました。
「うん。やはり冷えている方がより一層おいしく感じるね。リアに振る舞えて良かったよ」
そう言ってとても満足そうに微笑むフリード殿下のご尊顔に見惚れてしまった私なのでした。
──────
お読みいただきありがとうございます。亀さん並みのノロノロペースですけれど。最近は少しずつ物語を進めることができて良かったです。
次回は二人きりのお食事の回にしたいと思います。
とあるイベントも発生させたいのですが仕事次第になるのでどうか気長にお待ちくださいませ。
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