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殿下はどこか心ここにあらずな状態になっていらっしゃるようで、お声をおかけしても自分の世界に入られているようでした。
小声で何やらぶつぶつとおっしゃっているようなのですけれど。小さすぎて何を言ってらっしゃるのかは理解できませんでしたわ。
私は再びお声掛けをすることにしました。
「ジークフリード殿下?お気を確かになさいませ。体調があまり芳しくないようですが、本日はまっすぐ城へと帰ったほうが良いのではありませんか?」
………
駄目だわ。フリード殿下はいったいどうされたのかしら?私の声が全く聞こえていらっしゃらないようだけれど…
殿下の側へともう少し近づき、殿下の目の前で手を振ってみせるもなんの反応もありません…
目を開けたまま眠ってらっしゃってぶつぶつ言っているのは寝言なんですの?と聞きたくなるほどに無反応なフリード殿下に、私は貴族の令嬢としてははしたないとは思いつつも、とある行動に出ることにしました。
今現在はお互いに隣同士の席に座っている状態ですけれど。席自体はそんなに離れておらず、手を伸ばせばすぐに殿下に触れることができる距離なのです。
私は意を決してフリード殿下の左手に触れてみることにいたしました。
殿下にしか聞こえないだろう音量で1言断りを入れながら、殿下の手に触れる。
ビクッと殿下の体は反応し、
「リア?あれ?」
ちょっと間の抜けた感じで名をお呼びになり、私に触れられている自身の手を見つめたフリード殿下は、熟れた果実のように赤く頬を染めあげられました。
どうやら私に触れられたことで現実世界へと戻って来ることができたようです。
「驚かせてしまいまして申し訳ありませんわ。何度かお声掛けをさせていただいたのですけれど。上の空のようでしたので、実力行使に出てしまいました」
「そうだったんだね。ごめんね。リア。ちょっとあまりにもリアが愛らしくて、今が幸せすぎて少し気が遠くなってたみたいだ」
殿下の頬の熱がだんだんと引いて来たのとは対象的に、お恥ずかしながら私の頬には熱が集まってきております。
それを誤魔化そうとするかのように、私は淡々と言葉を紡いでいきます。
「良いのです。帰宅の準備が遅くなってしまいましたし。逆に待たせてしまって申し訳なく思っておりますわ」
「リアの側で待つ時間は、とても幸せを感じられるから気にしないで」
殿下は素晴らしき微笑みを浮かべてそうおっしゃいますけれど。
「フリード殿下…」
「なんだい?リア」
「その…手を離してくださいまし。お恥ずかしいです…」
私が殿下の左手に触れたことで、殿下は上の空状態から現実世界へと戻って来てくださいましたけれど。
私の右手を…離してくださらないのです…
あっという間の出来事でしたわ。私は殿下の手の甲にそっと触れただけなのに。
殿下にあっという間に指と指とを交互に絡ませるような握り方をされてしまいまして…とても恥ずかしかったのです…
──────
読んでくださりありがとうございます。
ジークフリード殿下のぶつぶつは…
「あぁ…ヤバイ…リアがリアが可愛すぎて辛い…いつもは綺麗なリアなのに。今日は凄く可愛い。ヤバイ可愛すぎて食べちゃいたい…うわぁ…誰にも見せたくないな…このままどこかに閉じ込めて抱きしめたい…リア…」
みたいなことをひたすら呟いていたって事にしておきたいと思います。
小声で何やらぶつぶつとおっしゃっているようなのですけれど。小さすぎて何を言ってらっしゃるのかは理解できませんでしたわ。
私は再びお声掛けをすることにしました。
「ジークフリード殿下?お気を確かになさいませ。体調があまり芳しくないようですが、本日はまっすぐ城へと帰ったほうが良いのではありませんか?」
………
駄目だわ。フリード殿下はいったいどうされたのかしら?私の声が全く聞こえていらっしゃらないようだけれど…
殿下の側へともう少し近づき、殿下の目の前で手を振ってみせるもなんの反応もありません…
目を開けたまま眠ってらっしゃってぶつぶつ言っているのは寝言なんですの?と聞きたくなるほどに無反応なフリード殿下に、私は貴族の令嬢としてははしたないとは思いつつも、とある行動に出ることにしました。
今現在はお互いに隣同士の席に座っている状態ですけれど。席自体はそんなに離れておらず、手を伸ばせばすぐに殿下に触れることができる距離なのです。
私は意を決してフリード殿下の左手に触れてみることにいたしました。
殿下にしか聞こえないだろう音量で1言断りを入れながら、殿下の手に触れる。
ビクッと殿下の体は反応し、
「リア?あれ?」
ちょっと間の抜けた感じで名をお呼びになり、私に触れられている自身の手を見つめたフリード殿下は、熟れた果実のように赤く頬を染めあげられました。
どうやら私に触れられたことで現実世界へと戻って来ることができたようです。
「驚かせてしまいまして申し訳ありませんわ。何度かお声掛けをさせていただいたのですけれど。上の空のようでしたので、実力行使に出てしまいました」
「そうだったんだね。ごめんね。リア。ちょっとあまりにもリアが愛らしくて、今が幸せすぎて少し気が遠くなってたみたいだ」
殿下の頬の熱がだんだんと引いて来たのとは対象的に、お恥ずかしながら私の頬には熱が集まってきております。
それを誤魔化そうとするかのように、私は淡々と言葉を紡いでいきます。
「良いのです。帰宅の準備が遅くなってしまいましたし。逆に待たせてしまって申し訳なく思っておりますわ」
「リアの側で待つ時間は、とても幸せを感じられるから気にしないで」
殿下は素晴らしき微笑みを浮かべてそうおっしゃいますけれど。
「フリード殿下…」
「なんだい?リア」
「その…手を離してくださいまし。お恥ずかしいです…」
私が殿下の左手に触れたことで、殿下は上の空状態から現実世界へと戻って来てくださいましたけれど。
私の右手を…離してくださらないのです…
あっという間の出来事でしたわ。私は殿下の手の甲にそっと触れただけなのに。
殿下にあっという間に指と指とを交互に絡ませるような握り方をされてしまいまして…とても恥ずかしかったのです…
──────
読んでくださりありがとうございます。
ジークフリード殿下のぶつぶつは…
「あぁ…ヤバイ…リアがリアが可愛すぎて辛い…いつもは綺麗なリアなのに。今日は凄く可愛い。ヤバイ可愛すぎて食べちゃいたい…うわぁ…誰にも見せたくないな…このままどこかに閉じ込めて抱きしめたい…リア…」
みたいなことをひたすら呟いていたって事にしておきたいと思います。
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