馬鹿な婚約者と自称ヒロインがまぐわっておりましたので、婚約破棄後に真実の愛とやらの行く末を見守りますわ

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有意義な時間というものは早く過ぎていくものですね。

お茶の時間を終えた私と殿下は、馬車の前へとやって参りました。


殿下はスーザン様に我が家への言伝を頼み、殿下自身が責任を持って私を送るから先に城へと帰るようにとおっしゃられておりましたけれど。

幸い、我が公爵邸が学園と城のちょうど中間に位置していたおかげで殿下のお手をあまり煩わせずに済むことができますわよね。


この場で、本日はお礼とお別れの挨拶をいたしましょう。


「ジークフリード殿下」

「なんだい?リア」

柔和な笑みを浮かべて聞いてくださる殿下。殿下を見ているとなんだか心が温まりますわね。


「本日はとても有意義な時間を過ごせました。ありがとうございます」


心から感謝の気持ちを込めて微笑みながら言うユミリア。


フィッセル爺やや、ジークフリード殿下の御者。その他にも数人の方々が微笑ましそうに二人を見つめていることに当の本人達は気づいておりません。


「僕がそばにいたかっただけだから。お礼を言わなきゃいけないのは僕の方だよ。ありがとう。リア。おかげで幸せな時を過ごせた」

「う…」


殿下は女性の心を掴むのがとてもうまいようです…

恥ずかしすぎて私の顔に熱が集まってきているのが分かり、私は言葉を飲み込みながら視線をそらし、公爵令嬢らしからぬ行動に出てしまいます。


「また明日。それでは失礼いたしますね」

早口でそう言葉を紡ぐと、誰の手も借りずに馬車の中へと入ってしまいました。

「リア。ちょっと待って」


殿下の止める声が聞こえたような気がしましたが、気のせいだと思い、馬車内にあるお気に入りのクッションを抱きしめ顔を隠しました。

外でかすかに話し声が聞こえますけれども。防音性がやや高めの馬車であるため、どなたが何を話しているのかは分かりません。


殿下から離れたことで少しずつ冷静になってきたのか頬の熱は少しずつ下がり始め、それと同時に私は…殿下になんて失礼なことをしてしまったのかと反省し始めます。


すると馬車の扉が突然開きました。

「リア。入るよ」

その声とともに殿下が、馬車内の私の前の迎え合わせの席へと座られました。


「ジークフリード殿下?」


「置いて行かないでよ。それに今は二人だけだから愛称で呼ぶ約束でしょ。リア」

幼い子どものように少し拗ねた表情をされた殿下は、御者と話をするための小さな手のひらサイズぐらいの大きさの小窓を開け…


「出して」

と御者台にいるであろうフィッセル爺やに指示を出し、小窓を閉めました。



「え?」


馬車が前へと進み始めたことを体感した私は、この移動する密室的状況に驚きを隠せません。

「言ったでしょう?責任を持ってリアを送るって」






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