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本日は3年生だけがお昼までとなっておりましたから。先程鳴り響きました鐘は、午後からの授業の始まりを告げる鐘なのでしょう。
「長居してしまったようだね。行こうか。リア」
少し名残惜しそうに言う殿下は、立ち上がり手を差し伸べてくださいました。我が学園の制服は特殊な糸が使用されて作られているからか殿下の膝は汚れておりません。
私は殿下の手の上に乗せ立ち上がり言葉を紡ぎますが途中で遮られてしまいました。
「ありがとうございます。ジー…」
「リア?」
とても不満そうな顔をされていらっしゃるわ。愛称呼びを忘れていた私はすぐに言葉を紡ぎました。
「あ…ありがとうございます。フリード殿下」
愛称を呼ばれてとても嬉しそうにされている殿下は、私をエスコートしながら庭から校舎の方へと進んでいきました。
────────
私達は庭への入り口へと戻ってきました。校舎内では適切な男女の距離へと戻るべく、殿下へと声をかけさせていただきました。
「フリード殿下。エスコートしていただきありがとうございました」
感謝を伝え、礼をしました。
「名残惜しいけれど。仕方がないね」
殿下と適切な距離をとった私は、他に行きたい所を聞いたりしながら新たなる目的地へと向かい始めたのでした。
─────
私達は本日の案内の最後の場所として、食堂へとやってきました。
殿下が私を労いお茶をともにしようとお誘いしてくださいましたの。
お昼時には様々な方が集い、とても賑やかな食堂という印象でしたけれど。現在は授業中で他学年の方々がいないため、とても静かな食を楽しむ場へと姿を変えておりました。
私と殿下は眺めの良い席へと座りまして、テーブルに設置されている今年この学園に導入された注文端末を操作して、それぞれの食したいものを注文していきました。
隣国にいた殿下はとても驚かれていましたが、当時の私もとても驚きましたもの。
以前ならば侍女や侍従と共に来ている方々は席に座り侍女達が料理を受け取ってくるのを待っておりましたし。
他の方々は注文受付という場所で口頭で注文し、受取口にて頼んだ料理が出来上がるのを待ち、受け取ってから空いているテーブルを探したりしていたため、大変混み合っておりましたからね。
現在はテーブルに座り、手のひらサイズの注文端末からメニューを選び、注文端末に料理が出来上がったとの表示が出たら、メニュー端末を受け取り口へと持っていき受取口にある赤い光の出ている場所にメニュー端末をかざして料理を受け取るという仕様へと変わっておりますから。
メニュー端末があれば空席、メニュー端末がなければその席は満席というように分かりやすくなっております。
料理を頼まずにメニュー端末を席以外に持ち出した場合は防犯機能が作動しまして持ち出されたメニュー端末から警告音が鳴り響くようになっておりますので、場所取り行為はできなくなっております。
二人で窓の外から見える景色を見ながらしばらく会話をしておりますと、メニュー端末の表示が切り替わり食事ができた事を告げる小さな鈴の音がなりました。
私は立ち上がり、注文した食事たちを取りに行こうと思いましたが、殿下に止められました。
「リアはここで待っていて。僕が取ってくるから」
殿下に取りに行っていただくのは恐れ多いとは思いましたけれど。私は甘えさせていただくことにしました。
「分かりましたわ。お待ちしておりますね」
「すぐ戻ってくるからね」
殿下はそう言うと、注文端末を持って受取口の方へと歩いて行かれました。私はその後ろ姿を見ながらほんのりと微笑みます。
一人でしか来たことがなかった食堂でしたけれど。こんなに楽しきものだとは思いませんでしたわ。
景色を見たり、何気ない日常の出来事をお話したりしながら食事を待つことがこんなにも楽しきことだなんて。殿下には感謝しかありませんわ。良き経験ができて私とても嬉しいです。
「何をそんなにお一人で楽しそうにされているんですかぁ?」
「お気楽なものだな」
声のした方を見てみると、エイクズ殿下とエイクズ殿下の腕に絡みつくボニータ様がいらっしゃいました。
お二人とも謹慎処分となっていると聞きましたが、もう謹慎期間は終わっていたようですわね。
「ごきげんよう」
私は立ち上がり、優雅に礼をとりました。
「長居してしまったようだね。行こうか。リア」
少し名残惜しそうに言う殿下は、立ち上がり手を差し伸べてくださいました。我が学園の制服は特殊な糸が使用されて作られているからか殿下の膝は汚れておりません。
私は殿下の手の上に乗せ立ち上がり言葉を紡ぎますが途中で遮られてしまいました。
「ありがとうございます。ジー…」
「リア?」
とても不満そうな顔をされていらっしゃるわ。愛称呼びを忘れていた私はすぐに言葉を紡ぎました。
「あ…ありがとうございます。フリード殿下」
愛称を呼ばれてとても嬉しそうにされている殿下は、私をエスコートしながら庭から校舎の方へと進んでいきました。
────────
私達は庭への入り口へと戻ってきました。校舎内では適切な男女の距離へと戻るべく、殿下へと声をかけさせていただきました。
「フリード殿下。エスコートしていただきありがとうございました」
感謝を伝え、礼をしました。
「名残惜しいけれど。仕方がないね」
殿下と適切な距離をとった私は、他に行きたい所を聞いたりしながら新たなる目的地へと向かい始めたのでした。
─────
私達は本日の案内の最後の場所として、食堂へとやってきました。
殿下が私を労いお茶をともにしようとお誘いしてくださいましたの。
お昼時には様々な方が集い、とても賑やかな食堂という印象でしたけれど。現在は授業中で他学年の方々がいないため、とても静かな食を楽しむ場へと姿を変えておりました。
私と殿下は眺めの良い席へと座りまして、テーブルに設置されている今年この学園に導入された注文端末を操作して、それぞれの食したいものを注文していきました。
隣国にいた殿下はとても驚かれていましたが、当時の私もとても驚きましたもの。
以前ならば侍女や侍従と共に来ている方々は席に座り侍女達が料理を受け取ってくるのを待っておりましたし。
他の方々は注文受付という場所で口頭で注文し、受取口にて頼んだ料理が出来上がるのを待ち、受け取ってから空いているテーブルを探したりしていたため、大変混み合っておりましたからね。
現在はテーブルに座り、手のひらサイズの注文端末からメニューを選び、注文端末に料理が出来上がったとの表示が出たら、メニュー端末を受け取り口へと持っていき受取口にある赤い光の出ている場所にメニュー端末をかざして料理を受け取るという仕様へと変わっておりますから。
メニュー端末があれば空席、メニュー端末がなければその席は満席というように分かりやすくなっております。
料理を頼まずにメニュー端末を席以外に持ち出した場合は防犯機能が作動しまして持ち出されたメニュー端末から警告音が鳴り響くようになっておりますので、場所取り行為はできなくなっております。
二人で窓の外から見える景色を見ながらしばらく会話をしておりますと、メニュー端末の表示が切り替わり食事ができた事を告げる小さな鈴の音がなりました。
私は立ち上がり、注文した食事たちを取りに行こうと思いましたが、殿下に止められました。
「リアはここで待っていて。僕が取ってくるから」
殿下に取りに行っていただくのは恐れ多いとは思いましたけれど。私は甘えさせていただくことにしました。
「分かりましたわ。お待ちしておりますね」
「すぐ戻ってくるからね」
殿下はそう言うと、注文端末を持って受取口の方へと歩いて行かれました。私はその後ろ姿を見ながらほんのりと微笑みます。
一人でしか来たことがなかった食堂でしたけれど。こんなに楽しきものだとは思いませんでしたわ。
景色を見たり、何気ない日常の出来事をお話したりしながら食事を待つことがこんなにも楽しきことだなんて。殿下には感謝しかありませんわ。良き経験ができて私とても嬉しいです。
「何をそんなにお一人で楽しそうにされているんですかぁ?」
「お気楽なものだな」
声のした方を見てみると、エイクズ殿下とエイクズ殿下の腕に絡みつくボニータ様がいらっしゃいました。
お二人とも謹慎処分となっていると聞きましたが、もう謹慎期間は終わっていたようですわね。
「ごきげんよう」
私は立ち上がり、優雅に礼をとりました。
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