馬鹿な婚約者と自称ヒロインがまぐわっておりましたので、婚約破棄後に真実の愛とやらの行く末を見守りますわ

文字の大きさ
上 下
53 / 127

52(ジークフリード視点)

しおりを挟む
兄上とリアのお茶会の日。僕はリアがお茶会の行われる部屋へと案内されていく姿を別の部屋から見ていたんだよね。


どこか緊張したような不安そうな顔のリア。

そんな顔をしないで。僕がそばにいるよってリアを抱き締めてあげたいけれど出来ない自分がもどかしい。


目的の部屋へと到着し、部屋の中に入っていく姿を見届けたあと、自身に課せられた沢山の課題に取り組んでいく。


15分ほど時が経ち、視界の隅でお茶会の部屋の扉が完全に開ききったのに気付き、課題をやる手を一旦止めて、部屋の方へと視線を移す。


兄上が出てきた。品のない大股歩きで出ていく兄上は、明らかに怒っていることをアピールしながら、自室の方へと歩いていった。


兄上付きの近衛騎士がやれやれといった感じで、慌てて兄上のあとを追いかけていく。


部屋の中にはリアだけが残され、異性である兄上はもういないため扉はしっかりと閉じられた。


部屋の外にはリアを案内した近衛騎士が不安そうに扉の前で警備を続けている。


リアは大丈夫なのだろうか。僕は心配になりながらも課題に取り組みながら視界の隅に見えるお茶会の部屋の様子をうかがう事ぐらいしかできなかった。


それから15分後…


ゆっくりとお茶会の部屋の扉が開き、リアが静かに部屋から出てきた。


とても悲しそうに瞳を揺らしているリア。


兄上に酷いことを言われたのは明白だ。机から離れた僕は、窓から食い入るように見つめた。



「リア…」

思ったよりも弱々しい僕自身の声が部屋に響く。



─────

近衛騎士達によると兄上のリアに対する態度はお茶会の度に酷くなっていったらしい。


怒鳴られたあとに愚痴を延々と聞かされるリア。苦痛の時間を過ごし、部屋に残されお茶会を終えても不自然ではない時間まで1人で待ち、公爵邸へと帰っていく。


僕は兄上や父上に抗議したが、聞き入れてはもらえず、兄上には俺の勝手だろと言われ父上には、婚約者である2人の問題だと相手にされなかった。


僕はなんて無力なんだろうか…


最愛の人が苦しんでいるというのに、何もできないだなんて。


──────

兄上とリアとの交流は、王太子(仮)としての教育が本格的に始まった事を理由に段々と減っていった。


兄上は相変わらず学ぼうとせず怠惰な生活を送っているだけなのだが、これでちょっとはリアが苦しまずにすむと思うと。

兄上の割に良い選択をしたじゃないかと思った。


でもこのままじゃ…兄上と婚姻する未来は、リアにとって地獄でしかない。


僕はリアには幸せになってほしいんだ。本当は自分の手で幸せにしてあげたいけれど。



そんな僕に転機が訪れたのは、僕が10歳となり王太子(仮)となった日だった。


 我が国は15歳から18歳まで通うことになる全寮制の王立学園を卒業すると共に成人とみなされる。


それは王族も同じで、学園を卒業しなければ本当の王太子になることはできない。


10歳から18歳になる8年間の間常に周りの審査員から審査されていることを聞かされた僕はとても驚いた。


兄上もこの事は知っているはずなのに、あの様に怠惰に過ごしていたのかと。


もし兄上がこのまま改善されなければ、兄上は学園を卒業するとともに、兄上は王太子としての資格を失い、ただの王族になるらしい。


そして僕には父が決めた婚約者があてがわれると…


父上にその時はリアを婚約者にと望むが、父上はそのまま兄上と婚姻させるか、リアに年齢も家柄も相応しい者を別に紹介するとだけ言った。


年齢という壁が再び僕の前へと立ちはだかった。


学びも今では数年先に学ぶはずの事を学んでいるし、剣の腕も身についた。


だが僕の本当に望むものは…たった1つ望む者に愛を乞う権利も得られぬまま時が過ぎていく。


2年の月日が流れ、兄上とリアは王立学園へと入学していった。



──────

「母上?」


とある日のこと。自室で課題の復習に励んでいると母上が入室してきた。


僕は慌てて立ち上がろうとするが…

「そのままで良いわよ。ジギー。あまり長居はできないから」


父上は、母上の事を物凄く溺愛している。幼き頃だとまだましだったんだが…現在は実の息子ですら母には近づけさせたくないようだった。


母は背後から僕を抱きしめて、ジギーも大きくなったわねとゆっくりと頭を撫でてくれた。


「ジギーはユミリアちゃんのことはまだ好きかしら?」


「うん。好きだよ。物凄く…」

母上からの質問にすぐに答えた僕に、母上はうふふと笑いながらも嬉しそうに。


「そう…良かったわ。もう一つ聞くわね。あなたはお姫様に本当は誰を望んでる?」



「もちろん。リアだよ」


やばい。泣きそうになりながらも僕は答えた。


そして母上はとっておきの事を教えてくれたんだ。北の隣国の…リアの母上の国にある学園で飛び級制度が導入されたことを。


入学は我が国と同じで15歳からと決まっているが、テストで優秀であれば、15歳でも16歳のクラスへ途中から進級することもできるらしい。


クラスはS、A、B、Cクラスまであるらしく。入学試験時の成績でクラスが振り分けられる。


進級する場合の例は、Cクラスにいた場合は、Cクラスで1位になると特別なテストを受けられBクラスに。


Bクラスで1位になると再び特別なテストを受けられAクラスにという感じで上がっていき、Sクラスの1位になると進級するためのテストを受けられる。


そして見事合格すると1学年上である16歳たちの学ぶCクラスへと進級することができるようだ。


飛び級制度を利用したものは成績が悪ければ降級する場合もある実力主義の世界。


僕は王妃である母上と北の末の姫であったリアの母上のおかげで一縷の希望を得ることができたんだ。


僕はすぐに父上に会うための許可をとり、他国に留学したいと思っていることを伝えた。


父上は興味がなさそうにまぁ良いんじゃないかと許可してくれた。



少しずつ留学へ向けて準備を整えていき、僕は城へと別れを告げて、北の隣国へと旅立っていった。


─────

とりあえずはジークフリード視点で過去を振り返るのはここまでにして、次回から話を進めていきたいと思います。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

処理中です...