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私が返事を返すと陛下はゆっくりと話し始めた。

「とある王国に双子の王子が居たんだけど。兄は人柄は良いのだけど実力は至って平凡で、弟は文武両道で王の器があると周りから言われていたらしい」


陛下はとある話と言っているが…

近隣諸国で数百年の間に双子が誕生したのは、我が国の今は亡き先王と隠居先の我が領地でお祖母様と悠々自適に暮らす私のお祖父様だけである。


「でも弟の方は国王になる意欲は一切なく、兄の補佐をし臣籍に下ることを10歳になった年に表明したんだ」


王族は正式な王太子が決まっていない場合、10歳になる年に全ての男児が王太子(仮)となりますが、本人の意志で一時的に辞退される方はいるらしいですものね。

「そして兄弟は難なく学園を卒業し、兄は正式な王太子となり婚約者と婚姻。弟は長年想っていた方の元へ婿入りされたんだ」


先王様は確か南の隣国の姫と婚姻されて、お祖父様は9歳の時に忘れ物を届けに来ていたお祖母様に一目惚れし、密かに愛を育んでらっしゃったのよね。


先王様が卒業され正式に王太子となり婚姻されるまでは、お祖父様は婚約者を持つことができなかったから。


「そして兄弟にはそれぞれ男児が一人生まれ、何事もなく成長し学院を卒業していった。王の子も実力は平凡ながらも無事に王太子となり婚姻し、とても優秀だった弟の子はなんなく爵位を継承したんだけど…」

陛下はうつ向き一度黙り込むと再び顔を上げ言葉を紡ぎだす。


「王太子は良き伴侶に恵まれ、すぐに父親になった。姫が生まれたんだよ。とても幸せに満ちていた。でも中々その後は子に恵まれなくてね。王太子と王太子妃は後の王と王妃であるし。もちろん次期後継者である男児をもうける義務があるから。中々身篭らないと王太子妃であるのちの王妃を責める者や側室を設けてはどうかと提案する者まで出てきたんだ。」


基本我が国は一夫一妻制なのだが、やむを得ない事情がある時は側室を持つことが認められている。


─────
今更ですが、書いてる間にエイクズをクズに描きすぎていたので…

1話の良くて家族愛のようなものと、良きパートナーとしてお互いに支え合っていこうという信頼関係にあったと思う。を

幼き頃に王命によって決まったエイクズ殿下との婚姻だが、そこには恋愛感情は一切なかった。互いに冷めきった関係…いや一方的に嫌われている関係ではあるが、陛下や王妃様とは良き信頼関係が出来ており家族のように感じている。

臣下として貴族として、私はこの国のために仕事に生き、割り切って生きていくのだと思っていた。


ヒロイン?を名乗り、私の事を悪役令嬢とよぶ彼女が2ヶ月前に編入してきたことにより、想像していた未来が変わっていくなんて思わなかった。

彼女は私にとっては幸運の女神だったのかもしれないわね。


私はこの日、最悪だけども私の運命を変えてくれる光景を見ることになるが、馬車に揺られる私には知る由もない。

に変更いたしました。


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