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どうにかリンハルトには思いとどまって貰えたとは思うのだけど…

どうも納得していない様子だ。

このままじゃ埒が明かないと思ったのか、リンハルトの後にヘレンと共に入室し、壁のそばでヘレンと共に控えてきたニコロが口を挟む。

「坊っちゃん。お嬢はまだ体調が万全じゃないんっすよ。今日はこの辺で部屋に帰りやしょう。ヘレンお嬢のことを頼む」

「承知しました」

ニコロの言葉にはっとしたリンハルトは申し訳なさそうにし、

「姉上。すみません。ゆっくりと休んでください」

「いいのよ。気にしないで」


謝りながらニコロに引きずられ部屋の外へと出ていった。


「ユミリア様。お加減はいかがでしょうか?」

心配そうにするヘレン。

「ええ。特に辛いところは何もないわ」

自身のどこにも不調は感じられず、ただ何故か寝すぎてしまっただけなのだけれど。安心してほしくて微笑むユミリア。

その笑顔を見たヘレンは、あのような事があり、心身ともにとてもお辛い中、心配させないようにと笑みを浮かべてくださるユミリアの儚さを勝手に感じ、いつも以上に過保護になった。


「無理をなさらないでくださいまし。はい。こちらのクッションをお使いくださいませ。お水は飲まれますか?他に果実水やスープなど、食せそうなものがありましたらこの部屋にご用意させますのでお申し付けくださいませ。それとも身体をお拭きしましょうか?」

どこから持ってきたのか大きめのクッションに、身を預けるように促され、なにか食べられそうなものがあるか聞かれたり、蒸しタオルで体を拭こうかと言われたり、次から次へと良く思いつくものねと感心してしまいそうなほどに心配された私は、ヘレンの勢いが凄すぎてたじたじになりながらも、スープを頼んだ。

丸一日以上寝ていたからか。今になって急にお腹が空いてきた。だが今は20時を過ぎているし。沢山食してしまったら確実に太ってしまうものね。

ヘレンは少し悲しそうにしながらも少々お待ちくださいませと部屋を出て行くのだった。


──────

運ばれてきた玉ねぎのスープは野菜のほのかな甘みと飲んでいてほかほかと体が温まってくる優しいものだった。久しぶりの公爵邸での食事に適切な量のスープ。

女子寮だと時間の制限はあるし、量は多くて大変なのよね。時間に囚われずゆっくりと食事ができるこの幸せに感謝しないと。

「ユミリア様!いかがいたしましたか?」

壁際で控えていたヘレンが、慌てて駆け寄ってきた。


「どうしたのヘレン?」

何があったのだろうか。

「失礼いたします」

ヘレンはハンカチを取り出すと私の右の目元から頬にかけて優しく拭いてくれた。

どうやら私は泣いていたらしい。我が家での久しぶりの食事に感動しすぎたのかもしれないわね。

「ありがとう。ヘレン。久しぶりの我が家での食事に感動してしまったみたいだわ」

「そうでありますか。ご無理なさらぬようにお召し上がりくださいませ」

ヘレンは再び、壁際へと戻る。

私は再びゆっくりとした食事を楽しんだ。

──────

ヘレンにはたくさん誤解をしてもらいたいなと思いつつ書いておりました。
次回は、時を進め翌日の事を書くか、ボニータ視点を書くかエイクズ視点を書くか悩んでいるところです。
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