26 / 127
25
しおりを挟む
どうにかリンハルトには思いとどまって貰えたとは思うのだけど…
どうも納得していない様子だ。
このままじゃ埒が明かないと思ったのか、リンハルトの後にヘレンと共に入室し、壁のそばでヘレンと共に控えてきたニコロが口を挟む。
「坊っちゃん。お嬢はまだ体調が万全じゃないんっすよ。今日はこの辺で部屋に帰りやしょう。ヘレンお嬢のことを頼む」
「承知しました」
ニコロの言葉にはっとしたリンハルトは申し訳なさそうにし、
「姉上。すみません。ゆっくりと休んでください」
「いいのよ。気にしないで」
謝りながらニコロに引きずられ部屋の外へと出ていった。
「ユミリア様。お加減はいかがでしょうか?」
心配そうにするヘレン。
「ええ。特に辛いところは何もないわ」
自身のどこにも不調は感じられず、ただ何故か寝すぎてしまっただけなのだけれど。安心してほしくて微笑むユミリア。
その笑顔を見たヘレンは、あのような事があり、心身ともにとてもお辛い中、心配させないようにと笑みを浮かべてくださるユミリアの儚さを勝手に感じ、いつも以上に過保護になった。
「無理をなさらないでくださいまし。はい。こちらのクッションをお使いくださいませ。お水は飲まれますか?他に果実水やスープなど、食せそうなものがありましたらこの部屋にご用意させますのでお申し付けくださいませ。それとも身体をお拭きしましょうか?」
どこから持ってきたのか大きめのクッションに、身を預けるように促され、なにか食べられそうなものがあるか聞かれたり、蒸しタオルで体を拭こうかと言われたり、次から次へと良く思いつくものねと感心してしまいそうなほどに心配された私は、ヘレンの勢いが凄すぎてたじたじになりながらも、スープを頼んだ。
丸一日以上寝ていたからか。今になって急にお腹が空いてきた。だが今は20時を過ぎているし。沢山食してしまったら確実に太ってしまうものね。
ヘレンは少し悲しそうにしながらも少々お待ちくださいませと部屋を出て行くのだった。
──────
運ばれてきた玉ねぎのスープは野菜のほのかな甘みと飲んでいてほかほかと体が温まってくる優しいものだった。久しぶりの公爵邸での食事に適切な量のスープ。
女子寮だと時間の制限はあるし、量は多くて大変なのよね。時間に囚われずゆっくりと食事ができるこの幸せに感謝しないと。
「ユミリア様!いかがいたしましたか?」
壁際で控えていたヘレンが、慌てて駆け寄ってきた。
「どうしたのヘレン?」
何があったのだろうか。
「失礼いたします」
ヘレンはハンカチを取り出すと私の右の目元から頬にかけて優しく拭いてくれた。
どうやら私は泣いていたらしい。我が家での久しぶりの食事に感動しすぎたのかもしれないわね。
「ありがとう。ヘレン。久しぶりの我が家での食事に感動してしまったみたいだわ」
「そうでありますか。ご無理なさらぬようにお召し上がりくださいませ」
ヘレンは再び、壁際へと戻る。
私は再びゆっくりとした食事を楽しんだ。
──────
ヘレンにはたくさん誤解をしてもらいたいなと思いつつ書いておりました。
次回は、時を進め翌日の事を書くか、ボニータ視点を書くかエイクズ視点を書くか悩んでいるところです。
どうも納得していない様子だ。
このままじゃ埒が明かないと思ったのか、リンハルトの後にヘレンと共に入室し、壁のそばでヘレンと共に控えてきたニコロが口を挟む。
「坊っちゃん。お嬢はまだ体調が万全じゃないんっすよ。今日はこの辺で部屋に帰りやしょう。ヘレンお嬢のことを頼む」
「承知しました」
ニコロの言葉にはっとしたリンハルトは申し訳なさそうにし、
「姉上。すみません。ゆっくりと休んでください」
「いいのよ。気にしないで」
謝りながらニコロに引きずられ部屋の外へと出ていった。
「ユミリア様。お加減はいかがでしょうか?」
心配そうにするヘレン。
「ええ。特に辛いところは何もないわ」
自身のどこにも不調は感じられず、ただ何故か寝すぎてしまっただけなのだけれど。安心してほしくて微笑むユミリア。
その笑顔を見たヘレンは、あのような事があり、心身ともにとてもお辛い中、心配させないようにと笑みを浮かべてくださるユミリアの儚さを勝手に感じ、いつも以上に過保護になった。
「無理をなさらないでくださいまし。はい。こちらのクッションをお使いくださいませ。お水は飲まれますか?他に果実水やスープなど、食せそうなものがありましたらこの部屋にご用意させますのでお申し付けくださいませ。それとも身体をお拭きしましょうか?」
どこから持ってきたのか大きめのクッションに、身を預けるように促され、なにか食べられそうなものがあるか聞かれたり、蒸しタオルで体を拭こうかと言われたり、次から次へと良く思いつくものねと感心してしまいそうなほどに心配された私は、ヘレンの勢いが凄すぎてたじたじになりながらも、スープを頼んだ。
丸一日以上寝ていたからか。今になって急にお腹が空いてきた。だが今は20時を過ぎているし。沢山食してしまったら確実に太ってしまうものね。
ヘレンは少し悲しそうにしながらも少々お待ちくださいませと部屋を出て行くのだった。
──────
運ばれてきた玉ねぎのスープは野菜のほのかな甘みと飲んでいてほかほかと体が温まってくる優しいものだった。久しぶりの公爵邸での食事に適切な量のスープ。
女子寮だと時間の制限はあるし、量は多くて大変なのよね。時間に囚われずゆっくりと食事ができるこの幸せに感謝しないと。
「ユミリア様!いかがいたしましたか?」
壁際で控えていたヘレンが、慌てて駆け寄ってきた。
「どうしたのヘレン?」
何があったのだろうか。
「失礼いたします」
ヘレンはハンカチを取り出すと私の右の目元から頬にかけて優しく拭いてくれた。
どうやら私は泣いていたらしい。我が家での久しぶりの食事に感動しすぎたのかもしれないわね。
「ありがとう。ヘレン。久しぶりの我が家での食事に感動してしまったみたいだわ」
「そうでありますか。ご無理なさらぬようにお召し上がりくださいませ」
ヘレンは再び、壁際へと戻る。
私は再びゆっくりとした食事を楽しんだ。
──────
ヘレンにはたくさん誤解をしてもらいたいなと思いつつ書いておりました。
次回は、時を進め翌日の事を書くか、ボニータ視点を書くかエイクズ視点を書くか悩んでいるところです。
1
お気に入りに追加
484
あなたにおすすめの小説


冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる