25 / 127
24
しおりを挟む
目を覚した私は、見覚えのある天蓋を見ながらぐっすりと眠ってしまっていたことに気付いた。
服装もドレスから夜着へと変わっており、カーテンの隙間からは、太陽の光が入ってくることはない。
今日は色々なことがあったから疲れてしまっていたのかもしれないわね。
ゆっくりと体を起こすと、時計を確認する。
時刻は20時を少し過ぎたところであった。夕食をとるには遅い時間である。
こんなにも寝てしまうなんて…屋敷には確か使用人達しか居なかったわよね。数日前からお父様とお母様が、隣国の慶事に参加しており不在だったはずだから…
あと3日ほどは帰っては来ないだろう。
なら安心ね。お二人がいたら大変なことになっていたに違いないから。
サイドテーブルの上を確認すると、水差しとベルが置いてあった。
私は、すぐさま水を飲み、喉を潤すと、ヘレンを呼ぶために、水差しの隣に置いてあったベルを鳴らした。
きれいな音色が鳴り響く。
─────
ベルを鳴らせてすぐに、ドアをノックする音がした。隣室の控えの間に居たのだろうけど。早すぎないかしら。
「どうぞ。お入り」
声をかけると、扉が開き、私は目を見開いた。
なぜリンハルトがここに?
「姉上っ」
しばらく見ない間に、背の伸びたリンハルトは、なんとも言えない悲しそうな表情をしながら私へと駆け寄り抱きしめる。
少年から青年へと成長した弟の腕や体は、程よく鍛えられているのか逞しく別人のようだ。
抱きしめる腕の力が少し強い…
少しの痛みよりも、男子寮に居るはずの弟が、このような時間に、屋敷にいることにも驚いた。
「どうしたの?」
不思議そうに聞くユミリア。
「良かった…姉上。目が覚めて…馬車で屋敷に帰ってきてから1日半も姉上は眠っていたのですよ」
震えた頼りない声を出すリンハルト。
「え?」
「昨日医者に来てもらったけど精神的なものだろうって言われて…」
「少し疲れていただけよ。最近寝不足だったから」
心配させないようにちょっとだけ嘘を吐かせてもらう。
「姉上嘘を吐かないでください。馬車の中で泣いていたのでしょう?それに護衛騎士様から話も聞きました。馬鹿どものことは絶対に始末してみせますから姉上はゆっくりと体を休めてください」
頼もしい表情で私を気遣うリンハルトは、どうやらすべてを知ってしまっているらしい。
馬車の中で泣いていた記憶はないが、エイクズ殿下とボニータ様を始末しようと考えているリンハルトを止めるべく一生懸命説得するのであった。
────
登場人物紹介、主要人物の髪色や瞳の色を追加しました。
服装もドレスから夜着へと変わっており、カーテンの隙間からは、太陽の光が入ってくることはない。
今日は色々なことがあったから疲れてしまっていたのかもしれないわね。
ゆっくりと体を起こすと、時計を確認する。
時刻は20時を少し過ぎたところであった。夕食をとるには遅い時間である。
こんなにも寝てしまうなんて…屋敷には確か使用人達しか居なかったわよね。数日前からお父様とお母様が、隣国の慶事に参加しており不在だったはずだから…
あと3日ほどは帰っては来ないだろう。
なら安心ね。お二人がいたら大変なことになっていたに違いないから。
サイドテーブルの上を確認すると、水差しとベルが置いてあった。
私は、すぐさま水を飲み、喉を潤すと、ヘレンを呼ぶために、水差しの隣に置いてあったベルを鳴らした。
きれいな音色が鳴り響く。
─────
ベルを鳴らせてすぐに、ドアをノックする音がした。隣室の控えの間に居たのだろうけど。早すぎないかしら。
「どうぞ。お入り」
声をかけると、扉が開き、私は目を見開いた。
なぜリンハルトがここに?
「姉上っ」
しばらく見ない間に、背の伸びたリンハルトは、なんとも言えない悲しそうな表情をしながら私へと駆け寄り抱きしめる。
少年から青年へと成長した弟の腕や体は、程よく鍛えられているのか逞しく別人のようだ。
抱きしめる腕の力が少し強い…
少しの痛みよりも、男子寮に居るはずの弟が、このような時間に、屋敷にいることにも驚いた。
「どうしたの?」
不思議そうに聞くユミリア。
「良かった…姉上。目が覚めて…馬車で屋敷に帰ってきてから1日半も姉上は眠っていたのですよ」
震えた頼りない声を出すリンハルト。
「え?」
「昨日医者に来てもらったけど精神的なものだろうって言われて…」
「少し疲れていただけよ。最近寝不足だったから」
心配させないようにちょっとだけ嘘を吐かせてもらう。
「姉上嘘を吐かないでください。馬車の中で泣いていたのでしょう?それに護衛騎士様から話も聞きました。馬鹿どものことは絶対に始末してみせますから姉上はゆっくりと体を休めてください」
頼もしい表情で私を気遣うリンハルトは、どうやらすべてを知ってしまっているらしい。
馬車の中で泣いていた記憶はないが、エイクズ殿下とボニータ様を始末しようと考えているリンハルトを止めるべく一生懸命説得するのであった。
────
登場人物紹介、主要人物の髪色や瞳の色を追加しました。
1
お気に入りに追加
484
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。


悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。
Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。
政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。
しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。
「承知致しました」
夫は二つ返事で承諾した。
私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…!
貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。
私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――…
※この作品は、他サイトにも投稿しています。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる