馬鹿な婚約者と自称ヒロインがまぐわっておりましたので、婚約破棄後に真実の愛とやらの行く末を見守りますわ

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目を覚した私は、見覚えのある天蓋を見ながらぐっすりと眠ってしまっていたことに気付いた。

服装もドレスから夜着へと変わっており、カーテンの隙間からは、太陽の光が入ってくることはない。

今日は色々なことがあったから疲れてしまっていたのかもしれないわね。

ゆっくりと体を起こすと、時計を確認する。


時刻は20時を少し過ぎたところであった。夕食をとるには遅い時間である。

こんなにも寝てしまうなんて…屋敷には確か使用人達しか居なかったわよね。数日前からお父様とお母様が、隣国の慶事に参加しており不在だったはずだから…

あと3日ほどは帰っては来ないだろう。

なら安心ね。お二人がいたら大変なことになっていたに違いないから。

サイドテーブルの上を確認すると、水差しとベルが置いてあった。

私は、すぐさま水を飲み、喉を潤すと、ヘレンを呼ぶために、水差しの隣に置いてあったベルを鳴らした。

きれいな音色が鳴り響く。

─────

ベルを鳴らせてすぐに、ドアをノックする音がした。隣室の控えの間に居たのだろうけど。早すぎないかしら。

「どうぞ。お入り」

声をかけると、扉が開き、私は目を見開いた。

なぜリンハルトがここに?


「姉上っ」

しばらく見ない間に、背の伸びたリンハルトは、なんとも言えない悲しそうな表情をしながら私へと駆け寄り抱きしめる。

少年から青年へと成長した弟の腕や体は、程よく鍛えられているのか逞しく別人のようだ。

抱きしめる腕の力が少し強い…

少しの痛みよりも、男子寮に居るはずの弟が、このような時間に、屋敷にいることにも驚いた。

「どうしたの?」

不思議そうに聞くユミリア。

「良かった…姉上。目が覚めて…馬車で屋敷に帰ってきてから1日半も姉上は眠っていたのですよ」

震えた頼りない声を出すリンハルト。

「え?」

「昨日医者に来てもらったけど精神的なものだろうって言われて…」


「少し疲れていただけよ。最近寝不足だったから」

心配させないようにちょっとだけ嘘を吐かせてもらう。


「姉上嘘を吐かないでください。馬車の中で泣いていたのでしょう?それに護衛騎士様から話も聞きました。馬鹿どものことは絶対に始末してみせますから姉上はゆっくりと体を休めてください」

頼もしい表情で私を気遣うリンハルトは、どうやらすべてを知ってしまっているらしい。

馬車の中で泣いていた記憶はないが、エイクズ殿下とボニータ様を始末しようと考えているリンハルトを止めるべく一生懸命説得するのであった。

────
登場人物紹介、主要人物の髪色や瞳の色を追加しました。
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