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17(スピカ視点)

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スーザンによると部屋の中は荒らされており、気配も消せぬ弱き者が2人程いるらしい。

その程度の者なら暗殺ではなく、物取りなのかとも思ったが、次期王太子妃であり、将来の王妃となるユミリア嬢の部屋に忍び込むなど、命は惜しくないのだろうか。

寮の周りには警備兵が居るというのに、侵入者に気付いてすらいない。

外部のものではなく内部の…侍女か、寮内に住む令嬢の可能性が高いと見るが、万が一のことを考え、ユミリア嬢を部屋の外に一人残しておくのも、スーザンを1人行かせるのも得策ではないと判断した。

3人で部屋の中へ入るようにと指示を出し入室する。

部屋の中は、衣装部屋から沢山のドレスを引っ張り出したのか。床やらソファなど様々なところにばら撒かれていた。

職人達が協力し丁寧に一つ一つ作り上げていった大切な作品達の事を思うと、自然と眉間にシワが寄る。

どこから持ってきたのかは分からぬが、応接用の机の上にはワインと、2つの呑みかけのワイングラス。侵入者は馬鹿なのだろうか…

あのワインは数量限定で先日発売されたワインではないか。これだけでも侵入者を特定できてしまうというのに。

寮内は酒類を持ち込むことは規制されている。もしや外部の犯行なのかもしれない。捕縛して侵入経路を聞き出さねばな。



私とスーザンはほぼ同時に寝室と思われる部屋の方を見た。防音性が高く設計されているためか、何を言っているかは良く聞きとれないが…

確かに中から声がする。扉から近かった私は一緒に近付こうとしたスーザンを手で止め、数歩ほど扉に近付き耳を澄ませると…

中で何が行われているのか瞬時に気付いた。

これをユミリア嬢に聞かせるわけにはいかない。


私は急ぎスーザンにユミリア嬢の耳を塞ぐように指示を出したが…それは間に合わず…


「…ぁ……エイ……クズゥ………」

微かに聞こえた女の声に反応したユミリア嬢。彼女にも聞こえてしまったようだ。

女の声はユミリア嬢の婚約者であり、私の異母弟の名を呼ぶ…


「ボニータ…」

それにつられるように、防音設計を無視した男のはっきりとした声は、ユミリア嬢の耳に裏切りの声を届けた。


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