5 / 127
5
しおりを挟む
スーザン様の両手は私の耳を塞ぐ手前で止まってしまっていて、頬を薄っすらと染めピシリと音がしそうなほどに石像のようになっており、スピカ様は拳を握りしめその手は小刻みに震えている状況である。
寝室に男女の声…
公爵令嬢として、そして次期王太子妃として教育を受けたとある日のことをふと思い出す…
男女が寝室ですることといえば、愛を育み子を成すことだと王妃様やお母様は言っていた。
そして家庭教師は男女がまぐわい、殿方から子種を受け取るのだと教えては頂いたが…
まぐわいという言葉が理解出来ず…
詳しく聞こうとすると全ては殿方に任せて沢山愛されておけばよろしいのですよと言われ、はぐらかされてしまったのよね。
私はいまだ固まるスーザン様と目を合わせ、耳を閉じなくても良いのだと小さく左右に首をふる。
そして私の斜め前に立つスピカ様の、拳を握りしめすぎて震えている手をそっと握った。
驚かせてしまったのか、少し体を震わせたスピカ様は、ハッとした顔で私を見つめ、私は小さく首を左右に振った。
そしてうまく笑えているかは分からないが、少し微笑む。
私の顔を見たスピカ様はとても悲しそうだ。
婚約者のいる方が、婚約者以外の方と寝室を共にする。これは許されることではない。
浮気というのでしょう?
これは近隣国共通の事であり、婚姻を前提として付き合っていない平民だったとしても許されることではなく、時には傷害、殺人などの犯罪に発展したりするほどだ。
更に王侯貴族間であれば更に一大事となる。
平民とは違い、王侯貴族の婚約は家と家との結び付きを高めるためだったり様々な政略の絡むものであることが多いからだ。
家と家とで領民を巻き込んでの戦争になったことも少なくはない。
本人達の間に一欠片の恋愛感情が無かったとしても、互いに愛せるように歩み寄り、良きパートナーとして、家族愛や絆を築いていかなければならない。
浮気などの不貞行為はせず、婚姻を結び初夜を迎えるまでは互いに清くあらねばならないのだ。
何故私の寝室で?
これは夢ではないのよね?と色々と考え、現実逃避したくもなるが…
私は意を決して1歩、また1歩と寝室の扉の方へと歩みだす。
後ろにいるお二人が急ぎ動こうとしたが、手で二人に待つように合図し、扉の前へとやってきた。
かすかに聞こえていた声が先程よりもはっきりと聞こえ、なんだか…獣じみていてとても不快だわ。
まぐわうとはどんなものなの?
男女が愛を育み子を成すとはどのように?
とちょっとした好奇心と…
エイクズ王太子殿下…
幼馴染でもあり私の婚約者様に対して、少しの寂しさと悲しみを抱きながら、寝室の扉を開いていく。
けじめをつけましょう…
スピカ様やスーザン様に見せた不安と悲しさの滲んでいたユミリアの表情は、扉が開くとともに無表情へと変わっていく。
エイクズ殿下と愛を育む自称ヒロイン?と言い張る彼女の望んだ悪役令嬢のように…
寝室に男女の声…
公爵令嬢として、そして次期王太子妃として教育を受けたとある日のことをふと思い出す…
男女が寝室ですることといえば、愛を育み子を成すことだと王妃様やお母様は言っていた。
そして家庭教師は男女がまぐわい、殿方から子種を受け取るのだと教えては頂いたが…
まぐわいという言葉が理解出来ず…
詳しく聞こうとすると全ては殿方に任せて沢山愛されておけばよろしいのですよと言われ、はぐらかされてしまったのよね。
私はいまだ固まるスーザン様と目を合わせ、耳を閉じなくても良いのだと小さく左右に首をふる。
そして私の斜め前に立つスピカ様の、拳を握りしめすぎて震えている手をそっと握った。
驚かせてしまったのか、少し体を震わせたスピカ様は、ハッとした顔で私を見つめ、私は小さく首を左右に振った。
そしてうまく笑えているかは分からないが、少し微笑む。
私の顔を見たスピカ様はとても悲しそうだ。
婚約者のいる方が、婚約者以外の方と寝室を共にする。これは許されることではない。
浮気というのでしょう?
これは近隣国共通の事であり、婚姻を前提として付き合っていない平民だったとしても許されることではなく、時には傷害、殺人などの犯罪に発展したりするほどだ。
更に王侯貴族間であれば更に一大事となる。
平民とは違い、王侯貴族の婚約は家と家との結び付きを高めるためだったり様々な政略の絡むものであることが多いからだ。
家と家とで領民を巻き込んでの戦争になったことも少なくはない。
本人達の間に一欠片の恋愛感情が無かったとしても、互いに愛せるように歩み寄り、良きパートナーとして、家族愛や絆を築いていかなければならない。
浮気などの不貞行為はせず、婚姻を結び初夜を迎えるまでは互いに清くあらねばならないのだ。
何故私の寝室で?
これは夢ではないのよね?と色々と考え、現実逃避したくもなるが…
私は意を決して1歩、また1歩と寝室の扉の方へと歩みだす。
後ろにいるお二人が急ぎ動こうとしたが、手で二人に待つように合図し、扉の前へとやってきた。
かすかに聞こえていた声が先程よりもはっきりと聞こえ、なんだか…獣じみていてとても不快だわ。
まぐわうとはどんなものなの?
男女が愛を育み子を成すとはどのように?
とちょっとした好奇心と…
エイクズ王太子殿下…
幼馴染でもあり私の婚約者様に対して、少しの寂しさと悲しみを抱きながら、寝室の扉を開いていく。
けじめをつけましょう…
スピカ様やスーザン様に見せた不安と悲しさの滲んでいたユミリアの表情は、扉が開くとともに無表情へと変わっていく。
エイクズ殿下と愛を育む自称ヒロイン?と言い張る彼女の望んだ悪役令嬢のように…
2
お気に入りに追加
484
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。


悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~
かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。
だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。
だめだ。
このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。
これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる