馬鹿な婚約者と自称ヒロインがまぐわっておりましたので、婚約破棄後に真実の愛とやらの行く末を見守りますわ

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スーザン様の両手は私の耳を塞ぐ手前で止まってしまっていて、頬を薄っすらと染めピシリと音がしそうなほどに石像のようになっており、スピカ様は拳を握りしめその手は小刻みに震えている状況である。

寝室に男女の声…
公爵令嬢として、そして次期王太子妃として教育を受けたとある日のことをふと思い出す…

男女が寝室ですることといえば、愛を育み子を成すことだと王妃様やお母様は言っていた。


そして家庭教師は男女がまぐわい、殿方から子種を受け取るのだと教えては頂いたが…

まぐわいという言葉が理解出来ず…


詳しく聞こうとすると全ては殿方に任せて沢山愛されておけばよろしいのですよと言われ、はぐらかされてしまったのよね。


私はいまだ固まるスーザン様と目を合わせ、耳を閉じなくても良いのだと小さく左右に首をふる。


そして私の斜め前に立つスピカ様の、拳を握りしめすぎて震えている手をそっと握った。

驚かせてしまったのか、少し体を震わせたスピカ様は、ハッとした顔で私を見つめ、私は小さく首を左右に振った。

そしてうまく笑えているかは分からないが、少し微笑む。

私の顔を見たスピカ様はとても悲しそうだ。

婚約者のいる方が、婚約者以外の方と寝室を共にする。これは許されることではない。

浮気というのでしょう?


これは近隣国共通の事であり、婚姻を前提として付き合っていない平民だったとしても許されることではなく、時には傷害、殺人などの犯罪に発展したりするほどだ。

更に王侯貴族間であれば更に一大事となる。


平民とは違い、王侯貴族の婚約は家と家との結び付きを高めるためだったり様々な政略の絡むものであることが多いからだ。

家と家とで領民を巻き込んでの戦争になったことも少なくはない。

本人達の間に一欠片の恋愛感情が無かったとしても、互いに愛せるように歩み寄り、良きパートナーとして、家族愛や絆を築いていかなければならない。

浮気などの不貞行為はせず、婚姻を結び初夜を迎えるまでは互いに清くあらねばならないのだ。


何故私の寝室で?
これは夢ではないのよね?と色々と考え、現実逃避したくもなるが…

私は意を決して1歩、また1歩と寝室の扉の方へと歩みだす。



後ろにいるお二人が急ぎ動こうとしたが、手で二人に待つように合図し、扉の前へとやってきた。

かすかに聞こえていた声が先程よりもはっきりと聞こえ、なんだか…獣じみていてとても不快だわ。


まぐわうとはどんなものなの?
男女が愛を育み子を成すとはどのように?
とちょっとした好奇心と…

エイクズ王太子殿下…
幼馴染でもあり私の婚約者様に対して、少しの寂しさと悲しみを抱きながら、寝室の扉を開いていく。


けじめをつけましょう…

スピカ様やスーザン様に見せた不安と悲しさの滲んでいたユミリアの表情は、扉が開くとともに無表情へと変わっていく。

エイクズ殿下と愛を育む自称ヒロイン?と言い張る彼女の望んだ悪役令嬢のように…

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