7 / 56
第4話
しおりを挟む『昨日発売した週刊誌にウチの学校の生徒が載ってたんだよ』
『へぇ? 誰が載ってるの?』
放課後、女子生徒のグループが教室に残って世間話に花を咲かせていた。
外は相変わらず雨が降っていて、天気予報では過去に類を見ないと、連日続けて雨の日の更新を嘆いている。
これでは外に洗濯物を干せないと主婦はぼやき、日が射さないから農作物が育たないと農家は、これから起きるだろう損害額に頭を抱えている。
女子生徒達は雨だろうが、晴れだろうが関係ない。
外で遊べないのは残念だが、外が駄目なら室内でお喋りすれば良いじゃない、と毎日毎日教室に残ってお喋りをしていた。
『ウチのクラスにさ『恭仁京』がいるじゃん』
『ああ、学校に一回も来てない奴ね。陰陽師なんだっけ?』
『そうそう、そいつが載ってて、なんかインタビューされてんの』
全国的に恭仁京家は有名な一族で、誰しもが一度は必ず名前を聞いたことがある程だ。この地域では年配者は恭仁京一族を繁栄の証と崇め、女子生徒達のような若者は興味を全く示さない。
学校に来ようがいなかろうが彼女等の生活には何の支障も無いから、問題も無い。
たまたま、こうして話には上るが一言二言名前が出るだけで、さっさと別の話題に移行してしまうのだ。
彼女達の頭の中はいてもいなくてもどうでもいい『恭仁京』なんかより、仲間同士で楽しく笑い合って好きな人のことを話し合うことの方が大事なのである。
『でさ、アタシ雑誌ちらっと見たんだけど、恭仁京の顔、そこそこ良かったんだ』
『イケメンってこと?』
『イケメンは如月先生だけだよ。そこらのイケメンは先生の前ではイケメンじゃ無い。如月先生は顔もスタイルも頭も良いのよ! あんな完璧な存在、他にいる?』
『はいはい、あんたの如月先生好きは相当だよねぇ』
『ライバル多いじゃん。バレンタイン凄かったし。始めてみたよ、腕一杯にチョコ貰っている光景』
『そのチョコを大量に持ってる姿も嫌味ないし、男子もあげてたしね。そこに存在するだけで癒しになるし』
『確かに! 隣にいるだけで、ほわんってする!』
『あたしさ、給食を食べてる所が好きなんだ! 美味しそうに食べるよね!』
『あ、それ分かる!』
頬を赤く染めて女子生徒達は健司の話を続けていたが、ふと、体育会系女子が真顔になった。
『――でさ、アイツ、どうにかならないかな?』
『ああ、アイツね。マジで目障り。いつも先生の隣にいてさ、もう視界に入るなって!』
話は同じクラスの一人の女子生徒に移った。
頬を染めていたポニーテールの少女は、目を鋭くさせて噂の女子生徒の机を睨む。
窓際の前から四番目の席。
全く目立つことの無い席ではあるが、彼女の性格は極めて明るく、クラスメイト教師関係無く接してくるため、過去に何度か数名の教師に注意されている。
そんな女子生徒は健司に対してもスキンシップがやたらと多く、他の生徒達の批判もかなりの量が上がっていた。
『如月先生にくっつき過ぎなんだよ。本当迷惑』
『アイツが存在するだけでウザいんだよね』
『あ――ねぇねぇ、良いこと思い付いたんだけどさ』
眼鏡の女子生徒が携帯電話を操作して、仲間に見せた。
『最近流行ってるヤツなんだけどね』
動画サイトを開いている。
動画はひたすら手元だけを撮しているが、最後だけ映像は止まり、その代わりに文章が下から上へ流れて終わる。
『紙にあいうえおを書いて、お願いするの。そうしたら神様が応えてくれるってやつで、これ、マジらしいよ』
『あ、それ知ってる! 昔流行ってた、こっくりさんって奴の応用バージョンだっけ?』
『へぇ、怖くないの?』
『全然! すぐに終わるし。動画では呪いたい相手を神様に頼んで呪って貰ってるんだよ』
『うはは! 呪いだって! 面白そう! 本当になったら凄くない!?』
『病気になったり事故にあったりしてるらしいけど、そんな怖いこと頼まなくても、学校に来れなくなれば良いんじゃない? 登校拒否、みたいなさ』
『マジじゃん。それ良いね! ただの登校拒否なら、うちら関係ないし。勝手に拒否ってろって!』
三人はノートを一枚破いて、平仮名を書き始めた。
『――で、十円玉に指乗せるんだよね?』
三人は十円玉に人差し指をそれぞれ乗せて、目を瞑る。
『神様神様、如月健司にくっつく、佐藤友菜を登校拒否にしてください。お願いします』
完成された文字の表に三人は声を揃えて呪いの言葉を吐いた。
十円玉は静かにゆっくりと動き始め、ある文字に向かう。
少女達は笑った。
『呪われろ!』
笑いながら。
ただのお遊びでしかない。
本当になるわけない、と。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる