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 第4話

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 『昨日発売した週刊誌にウチの学校の生徒が載ってたんだよ』
 『へぇ? 誰が載ってるの?』
 放課後、女子生徒のグループが教室に残って世間話に花を咲かせていた。
 外は相変わらず雨が降っていて、天気予報では過去に類を見ないと、連日続けて雨の日の更新を嘆いている。
 これでは外に洗濯物を干せないと主婦はぼやき、日が射さないから農作物が育たないと農家は、これから起きるだろう損害額に頭を抱えている。
 女子生徒達は雨だろうが、晴れだろうが関係ない。
 外で遊べないのは残念だが、外が駄目なら室内でお喋りすれば良いじゃない、と毎日毎日教室に残ってお喋りをしていた。
 『ウチのクラスにさ『恭仁京』がいるじゃん』
 『ああ、学校に一回も来てない奴ね。陰陽師なんだっけ?』
 『そうそう、そいつが載ってて、なんかインタビューされてんの』
 全国的に恭仁京家は有名な一族で、誰しもが一度は必ず名前を聞いたことがある程だ。この地域では年配者は恭仁京一族を繁栄の証と崇め、女子生徒達のような若者は興味を全く示さない。
 学校に来ようがいなかろうが彼女等の生活には何の支障も無いから、問題も無い。
 たまたま、こうして話には上るが一言二言名前が出るだけで、さっさと別の話題に移行してしまうのだ。
 彼女達の頭の中はいてもいなくてもどうでもいい『恭仁京』なんかより、仲間同士で楽しく笑い合って好きな人のことを話し合うことの方が大事なのである。
 『でさ、アタシ雑誌ちらっと見たんだけど、恭仁京の顔、そこそこ良かったんだ』
 『イケメンってこと?』
 『イケメンは如月先生だけだよ。そこらのイケメンは先生の前ではイケメンじゃ無い。如月先生は顔もスタイルも頭も良いのよ! あんな完璧な存在、他にいる?』
 『はいはい、あんたの如月先生好きは相当だよねぇ』
 『ライバル多いじゃん。バレンタイン凄かったし。始めてみたよ、腕一杯にチョコ貰っている光景』
 『そのチョコを大量に持ってる姿も嫌味ないし、男子もあげてたしね。そこに存在するだけで癒しになるし』
 『確かに! 隣にいるだけで、ほわんってする!』
 『あたしさ、給食を食べてる所が好きなんだ! 美味しそうに食べるよね!』
 『あ、それ分かる!』
 頬を赤く染めて女子生徒達は健司の話を続けていたが、ふと、体育会系女子が真顔になった。
 『――でさ、アイツ、どうにかならないかな?』
 『ああ、アイツね。マジで目障り。いつも先生の隣にいてさ、もう視界に入るなって!』
 話は同じクラスの一人の女子生徒に移った。
 頬を染めていたポニーテールの少女は、目を鋭くさせて噂の女子生徒の机を睨む。
 窓際の前から四番目の席。
 全く目立つことの無い席ではあるが、彼女の性格は極めて明るく、クラスメイト教師関係無く接してくるため、過去に何度か数名の教師に注意されている。
 そんな女子生徒は健司に対してもスキンシップがやたらと多く、他の生徒達の批判もかなりの量が上がっていた。
 『如月先生にくっつき過ぎなんだよ。本当迷惑』
 『アイツが存在するだけでウザいんだよね』
 『あ――ねぇねぇ、良いこと思い付いたんだけどさ』
 眼鏡の女子生徒が携帯電話を操作して、仲間に見せた。
 『最近流行ってるヤツなんだけどね』
 動画サイトを開いている。
 動画はひたすら手元だけを撮しているが、最後だけ映像は止まり、その代わりに文章が下から上へ流れて終わる。
 『紙にあいうえおを書いて、お願いするの。そうしたら神様が応えてくれるってやつで、これ、マジらしいよ』
 『あ、それ知ってる! 昔流行ってた、こっくりさんって奴の応用バージョンだっけ?』
 『へぇ、怖くないの?』
 『全然! すぐに終わるし。動画では呪いたい相手を神様に頼んで呪って貰ってるんだよ』
 『うはは! 呪いだって! 面白そう! 本当になったら凄くない!?』
 『病気になったり事故にあったりしてるらしいけど、そんな怖いこと頼まなくても、学校に来れなくなれば良いんじゃない? 登校拒否、みたいなさ』
 『マジじゃん。それ良いね! ただの登校拒否なら、うちら関係ないし。勝手に拒否ってろって!』
 三人はノートを一枚破いて、平仮名を書き始めた。
 『――で、十円玉に指乗せるんだよね?』
 三人は十円玉に人差し指をそれぞれ乗せて、目を瞑る。
 『神様神様、如月健司にくっつく、佐藤友菜を登校拒否にしてください。お願いします』
 完成された文字の表に三人は声を揃えて呪いの言葉を吐いた。
 十円玉は静かにゆっくりと動き始め、ある文字に向かう。
 少女達は笑った。
 『呪われろ!』
 笑いながら。
 ただのお遊びでしかない。
 本当になるわけない、と。
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