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グランドベゼル編
8 ノアのチーム
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side ノア=オーガスト
「おお。これがトロイメライなのか」
オレの眼前には超巨大な壁が聳えていた。ある種の門とも言えるそれは、人の手では到底開けられそうにないほどに大きく、そして重厚感が漂っていた。
ここはEDEN本部の最下層で、アリアさんではなく多忙なミクリヤさんに案内してもらった。トロイメライへは、道中、ギルド職員の誰かが付き添わなくてはならないらしく、アリアさんは受付からあまり離れられないとのことで、たまたま所用で受付に来ていたミクリヤさんに白羽の矢がたった。
そしてオレたちを案内してくれたミクリヤさんは、帰り際、「はぁ。アリアはなぜいつも僕に頼るんだ?おかげで僕の仕事が滞ってばかりじゃないか……」と、ぼやいていた。
ああいう姿を見ると、なんだかちょっとばかし申し訳なくなってくるよなー……。
オレはトロイメライへの出入り口を見つつ、多忙なミクリヤさんを憐れんだ。
「門に何か彫られてんなぁ」
「見たことない生物だ」
秀や湊は門に描かれた謎の生物に目を向けていた。オレもつられて眺める。
言われてみれば確かに、見たことないな、あんなの。ギルドカードにも情報がなかったはず……
なんだよ。トロイメライ、めっちゃ面白そうじゃん。ますますモチベが上がったわ。
「……どうやら紫苑も知らないようだな」
おお。何千、何万年と生きてる紫苑も知らないのかー。
いいねいいね。未知との邂逅。これはオレの好奇心が収まらない!
「神とはいえど全知全能ではないのだ。当然主神以外は。私はただの守り神。知り得ないことの方が多い」
あの落ち着いた紫苑の声。久々に聞いた気がする。
「カエルみたいだな」
「おー!セツナ、大正解だよー」
カエル……?
オレはじっくりと門を観察してみる。
……確かに、カエルに似てるかも。
「名称はラーナ。トロイメライ第一層の相手なんだよねー」
へぇー。門にそんなものが描かれてたのか。
じゃああれか?最初の門はここ。次は進んだ先にあって、そこにも似たような門があって、さらに次には……ってな感じの作りなのかなー、トロイメライってやつは。
「エルは戦ったことあるんだっけー?」
「いえ、私はないです。ザナックさんのパーティに入った時にはすでにCランクでしたので。ただ、第三層のメドゥーザとはやったことがあります」
「あー、メドゥーザね。懐かしいー!あのうじゃうじゃした足がうざいんだよねー。しかも斬ってもすぐ再生するし」
「そうなんです!だから私の支援氣術も効果薄で……」
………。
「おーい。二人だけで話進めないでくれー。頼むよー、先輩方」
「あ、ごめんごめん。……えーっとね、このラーナってやつは言っちゃえば巨大なカエルだよー。攻撃は主に口から吐き出す酸かなー。普通に身体の外側に氣を巡らすだけじゃ、簡単に体が溶けるから要注意。対策としてはーーー」
「ストーップ!」
「うわー!ビックリしたー。どしたの、ノア」
「それ以上の情報はなし。こっからは二つのチームに別れて相談タイムだ」
相手の基本的な情報だけあれば大丈夫だ。それくらい少ない方がもっと面白いし。
「ってなわけで、チーム決めするぞー。えーと……ジャンケンして勝ったチームと負けたチームで組むってことで」
我ながら超単純な決め方にしちゃったな。咄嗟もいいとこだ。ま、気にすることはないだろ。
「よしいくぞ!」
オレの合図とともに各々が手を前に差し出す。
「最初はグー、ジャンケン…ポンッ!」
オレはグー。
シンはパー。
秀はパー。
湊はグー。
カズハはパー。
エルはグー。
セツナはパー。
リュウがグー。
ってことはもしかして、ちょうど分かれてる…?
「グー出した人はオレのとこ、パー出した人はシンのとこに集まってみて」
これではっきりするよな。
結果は、オレ、湊、エル、リュウチームvsシン、秀、カズハ、セツナチームになった。
「よーし。んじゃこっから両チームで作戦会議なー。時間は五分程度で」
「で、どうする気なんだ?ノア」
巨門の前で集まったオレたちノアチーム。
「うーん。まず、前衛はオレと湊だよなー。エルは後方支援で、リュウは全体を見つつ双方のサポート、ってことになるのかな?」
まあいつも通りっちゃいつも通りの布陣。
オレと湊で先制攻撃して、ヘイトを買いつつエルの支援氣術で仲間の能力アップを測る。そんで、リュウには、オレや湊の攻撃に第三の攻撃要員として加わってもらったり、エルが危険な時にカバーしてもらったりするって感じかなー。
この方が効率いいし早く倒せるんだよなー。慣れてるってのもあるし。
「そうですね。私もそれが安定だと思います」
「ぼくも……それでいい」
「えーと、あとは…カズハがちょっと言ってたけど、ラーナってやつは口から酸を吐くわけで、それに当たるのは正直よろしくない」
オレは顔を上げて門に描かれた彫刻に目を向ける。だってあんなでかい口から、大量の酸を吐くわけだろ?避けるのもしんどそうだし、当たったらマジでヤバそう。
「ですね。カズハの盾なら防げそうですけど…」
それはほんとそう。だからこの第一層は正直あっちが断然有利だ。しかもカズハは経験者だから、特殊氣術がなかったとしても、情報面で結局はリードされてるってわけだ。
「武器も……溶ける、かな?」
あー、溶けそー。だって工夫なしの氣で防げないってことは、氣で守ってない武器なんて溶けるどころかすぐに消滅するレベルなんじゃ…
「可能性は高いな。俺のこのネームド武器なら流石に耐えるだろうが、リュウやエルの武器はそうもいかないだろう」
一応というか、武器に氣を流すってのはそんなに高度な技術ってわけでもない。それなりに修行してれば、大体ができる。けど問題は、氣を流せれた方、つまりは武器がそれに耐えられるかどうかなんだよなー。まあ、流す側もある程度コントロールしなきゃだけど。
「そっか……せっかく、買ってもらったのに」
例を挙げるなら、前にAランクの魔物レックスを相手にした時、オレの特殊氣術を使おうとしたら、ものの数秒で粉々になったってのがあるなー。
「わぁぁ。綺麗な短剣ですね!」
あれはマジでびびった。もっともってくれるって信じてたのに…
「うん……シンお兄ちゃんに、買って、もらった」
ま、とにかく、武器を溶かされたくなきゃ、氣を武器に一点集中するか、かわすかの二択だよなー。
「ほう。シンのやつが……珍しいな」
あーでもあれか、氣を武器に流すことを優先してたら、自分のガード分に回せないあるいは間に合わないなんてとこになりそうだから、最悪武器は見捨てる方向で考えた方が無難かー。
「私もまさかシンさんがノアさん以外に物を買ってあげるなんて……びっくりです!」
いや、でも、オレ今二本しか剣もってない気がする。オレ乱雑に物使っちゃうタイプだし、すぐ溶かされそう。たしかカズハが、トロイメライで武器壊れたら現実世界でも壊れるって言ってたよな……
したら、氣術でやるっきゃないってとこだよな?
「シン兄ちゃん、優しい、よ…?」
「あ、はい。それはもちろん、私たちには優しくしてくれてると思いますよ。程度の差はあれど、シンさんなりに頑張ってくださってると私は思います」
あ、今気づいたけど、第一層終わったらすぐ第二層じゃん。ラーナに武器全部溶かされたら、次は武器なしで挑むってことだよな……
「この前、私がチンピラたちに絡まれたことがあったんですけど、たまたまノアさんを探してたシンさんが近くを通りがかって助けてくださったんです。『邪魔…』って言って一瞬で全員のしてました」
武器なしかー。……もし第二層のやつにオレの氣術効かなかったら、オレただの役立たずに成り下がるってこと?!
「はは。あいつらしいな。シンも少しは成長したようだ」
いやいや、待て待て。まだそうと決まったわけじゃないだろ、ノア。仮に氣術が効かなくても、全体を見て指示出すとか、盾になるとか、いろいろやりようがあんじゃん。
「やっぱり、シン兄ちゃんは、優しい…」
…ん?それ、リュウと役割被ったくさくね?
「あの、先ほどから思っていたんですけど、ノアさんがずっと無言です」
あー、マジかー。それじゃあ別のやつを探さなきゃだなー。
「というか、なにか考え事をしているんだろうな。しゃべってはいないが、動きはうるさい感じだ」
うーーん……なんだ?なにがあるんだ…?
「ふふふっ。そうですね」
はっ!囮役だ!
これならいける!!
「ノア兄ちゃん、大丈夫…?」
急に袖を引っ張られたような感覚がした。
「…お、リュウ。どうしたんだ?」
「どうしたはこちらのセリフだ、ノア。終始唸っていたが、何かあったか?」
「もちろん、オレ自身の立ち回りを考えてたんだよ。リーダーのオレがヘマするわけにはいかないだろ?ごめんな、全然会話に参加できなくてさー。で、今なんの話してたんだー?」
「シンさんが成長されていて微笑ましいなーという話です」
……うん?
「……どゆこと?」
どういう話からそうなるんだ?だってオレたち、ラーナの対策について話をしてたはずだよな?
「それよりノア。そろそろ五分経つようだ」
「え?!マジか」
オレ自分のことばっか考えてて結局、序盤にほぼいつも通りのこと話しただけじゃんか。なんのために設けたんだよ、この時間。誰だよ、作戦会議なー、とか言ったの。
……いやオレやん。
「んんっ。…んじゃあ、なんか全然話せてないけど、簡単にまとめるぞ。とりあえずいつも通り頑張ってくのと、酸はなるべく全部避けよう。無理なら自分が溶けないように氣でガードしてくれ。武器はどうとでもなるからまずは自分の身の安全から確保すること」
待ってろよ、ラーナ。すぐに倒してやるからなー!
「よし!ノアチーム、絶対勝つぞー!!」
「了解した」
「はい!」
「うん…!」
って感じでオレたちの会議とも言えない話し合いが終わった。そしてちょうど向こうも終えたらしく、全員が集まった。
そしてどちらが先攻か後攻かという話になり、シンがどちらでもいいと言ってすぐ後にオレが先にやると宣言。ノアチームから入ることになった。
「その門に触れれば誰でもトロイメライに入れるよー」
カズハに言われる通りにやってみる。すると、オレたちはキラキラと白い光に包まれていった。視界も白く輝く。オレは眩しくて目を閉じた。
そして次に目を開けると、そこは超巨大な洞窟内だった。
「おおお!すっげー!」
さっきとはまるで違う空間。オレはそのことに興奮する。
「全員無事にいるな」
「はい、大丈夫です」
「うん」
「さてさて、ラーナはどこにいるんだ?」
オレは辺りをざっと見回してみる。けれど、どこにもあの巨大ガエルの姿はない。
んー。トロイメライは遺跡みたいなものって言ってたけど、どっか探索した方がいいのかなー?
オレはもう一度よーく周りを観察する。すると、妙なことに気づいた。
「あれ?あそこってあんなんだったか?」
オレは天井の岩壁の中央部分にある二つの出っ張りに違和感をもった。さっき見た時は、あんな出っ張りなかったし、まるで口を大きく開いてるような……
ってまさか?!
「みんな、今すぐ端っこに走れ!」
オレの合図とともに、全員が走り出す。たまたまだろうけど、ちょうどこの洞窟の四隅に。
オレは左斜め前。
湊は右斜め後ろ。
エルは左斜め後ろ。
リュウは右斜め前。
オレたちが四隅に到着した瞬間、ベチャッ、ベチャッと大きく不快な音が数回響いた。見ればそこには、濁りきった緑色でどろどろの液体が広がっているのがわかる。
そして白い煙をあげたかと思うと、その液体は消え、代わりに地面にボコボコとした穴が複数空いていた。
あの液体を垂れ流してる正体を確かめるためにオレは顔を上げた。
そこには、吐き出した液体と似た色の皮膚を持つモンスターがいた。
『ゲゲゲゲェェ』
不気味な声を上げるラーナ。
さっきオレが見た時は周りとなんら同じ色をしていた。つまり、自分の体の色を変えることができる能力を持ってるってことになる。
天井にすっぽりと嵌まっている気味の悪いモンスターは、その両目をかっぴらき大口を開けている。この光景はまるで、獲物を前によだれを垂れ流す腹ペコな捕食者のようだ。
「まさかまさかの場所からのご登場かよ。…面白いじゃん」
オレたちのターゲット様のおなーりーってか?
緑褐色のモンスター……ラーナは天井からベヂャッと落下してきた。
あいつもしかして……体も酸でできてるのか?
「湊!エル!リュウ!やるぞ!!」
なんとなく推測しつつもオレはみんなに合図を飛ばす。
「了解した」
「はい!」
「うん…!」
「『サポートオン:青』…!」
「サンキュー、エル!」
エルの特殊氣術により、オレ、湊、リュウの身体が一瞬青く光る。これは仲間の防御力を向上させるものだ。わかりやすく言うなら、オレたちが体外に流して自身を守る氣の膜的なやつの硬度自体を向上させるって感じかな。
秀が言ってたけど、もっと氣の制御力が高まれば支援力も向上するはずだって言ってたな。
…って今はそんなこと言ってる場合じゃなかった。
オレは腰に下げていた剣を抜き、ある工夫をしてから、とりあえずラーナ目掛けてぶん投げてみた。オレの推測が正しいなら……
剣はラーナの体に刺さった。いやより正確には、飲み込まれた。そして、溶けてなくなってしまった。
「やっぱりか」
みんなもこれで確信したはず。あいつの体は吐き出す酸と同じ物質でできてるってことに。似てる魔物を挙げるなら、Dランクの魔物スライムかな。
でもスライムと違うのは、武器による物理攻撃が効かないとこだ。スライムも氣を流してないとポヨッンって弾かれる。けどあいつは、普通に氣を流した武器じゃ簡単に溶かさちゃうなー。
現にさっき氣を流した剣を投げたわけだけど、あっさり溶かされたし。
「湊は近接で攻撃。できれば敵の撹乱もしてくれ」
湊はネームド武器持ちだ。ネームド武器は不死身の武器って言われてるから、たぶん壊れない。だから問題ないはずだ。
「了解した」
「リュウは距離を取りつつ湊を援護。エルから離れすぎないようにな」
「うん……!」
「エルは今みたいに状況に応じてオレたちの支援。攻撃撃てるチャンスあったら積極的にやっていいからな」
「分かりました!」
んでオレは、適当に氣術を撃ちまくるぞ!
湊がラーナに斬り込んでいく。相変わらず綺麗な剣筋だ。
ラーナの体が幾重にも裂けていくのが見て取れる。とはいえ、やつの体が大きすぎて、一部分しか斬り刻めてはおらず、さらにその傷も瞬時に再生してしまった。
リュウはエルをカバーできる範囲から離れないように素早く動き回りつつ、風系統の下級氣術『ウィンドショット』を放っている。ラーナの目や口、足や腹といった至るところにウィンドショットが放たれるが、あまりいいダメージは入っていない。ただそれでもラーナの注意はうまく引いているようだ。
ラーナは湊とリュウの攻撃に翻弄され、うまく酸を当てられないご様子だ。
オレは本当は前衛のはずだったけど、予定変更だ。オレも湊の援護に回るぞ。
オレはある程度離れた位置から手のひらをラーナに向ける。そして、かなり大きめの氣弾を放った。
ラーナの土手っ腹に丸々とした穴が空く。氣弾はラーナの体を突き破り、その先の壁に大きな音を立てて着弾した。
だけど、どの攻撃もラーナを仕留められてはいない。というか、すぐにあいつは傷を再生してしまう。以前戦ったBランクの魔物、トロールと同じ性質を持っているらしい。
『ゲゲゲゲェェ』
まるでオレたちを嘲笑うかのように声を上げるラーナ。
ちょっと腹立つ。
「無駄にタフだなー、あいつ…」
たかが氣弾一発。けどこれは何発撃っても変わらなそう。湊やリュウは複数回攻撃してるわけだし……
この様子から察するに、氣核破壊があいつに勝つ唯一の方法とみた。
そもそ魔物には、人間の心臓のような生命維持に最も欠かせない器官が存在する。それを『氣核』って呼ぶんだけど、氣核は体内の氣の流れや血液の流れをコントロールするなど、魔物が生きるために重大な役割を果たしている。
そして、基本的にそれを破壊して魔物を倒すことは難しい。なぜなら、その破壊が最も攻略不可の代物だからだ。それも当然、氣核が壊れたら一瞬で死ぬのだから、防御を固めるのは自然なことだ。だから、魔物を倒す時は、致命傷を負わせて血液なんかと一緒に氣を外に放出させることで、氣核の生命維持機能を停止させる。氣核の原動力は氣だから、体内の氣がなくなれば氣核は動かなくなり、魔物は死に至るってわけだ。
まあ氣核の原動力は氣でも、ほかの器官の主な原動力は血液だから、血を流しすぎても、人間のように魔物も死ぬんだけどな。
だけど、このルールから外れた魔物も存在する。それが今オレたちの目の前にいる魔物だ。こういう身体を何度でも再生する系のやつはたいてい、氣核を破壊するかもしくは氣核を稼働させるための氣が尽きるまで再生させ続けるかのどちらかの方法が有効だ。
以前秀が仕留めたトロールもそのタイプだったわけだけど、秀は全身を燃やすことでトロールの再生を無理やり続けさせ、体内の氣を枯渇させた。そしてその結果、トロールは氣核を維持できずに灰と化したわけだ。
でも今回の場合、おそらくではあるけど、どんなにこいつを木っ端微塵にしても討伐することはできないとオレは踏んでいる。なぜなら、ここまで間髪入れず攻撃をあいつに喰らわせてるわけだけど、再生能力が衰える気配が全くないからだ。
ここから推察すると、あいつはたぶん、外部から氣を吸収して自分の氣に変換しているんだと思う。
氣はどこにでも流れてる。それこそ、地面とか森とか海とか大気とか、生物内だけでなく自然の中にも溢れている。その氣を自身に取り込めたら、半永久的に魔物は生き続けられるけど、事はそう単純な話でもない。なぜなら、氣にはそれぞれに固有の性質があり、自分と異なる性質を持つ氣は、自身の内部の氣と必ず反発し、下手をすれば死に至るからだ。
だからそれを自身の氣に変換できる、何か特殊な方法があれば、半永久的な存続は可能だ。まあそれがホイホイできるなら、魔物は全部、不死身のバケモノになるけどな。
だけど、オレたちの目の前にいるラーナってやつは、たぶんそれができる。そう仮定した場合、オレたちに残された手段を推察するに……
氣核をぶっ壊すしかない……!
さっき氣核の破壊は最も困難とは言ったけど、例外ももちろんある。それがこいつのような再生系の魔物だ。再生という強力な能力があるためか、こういうやつらの氣核は他の魔物よりも断然もろい。だから氣核を見つけさえすれば破壊は割と簡単だ……ってクロードが言ってた。
オレは一旦動きを止め、観察と思考に集中する。
とりあえず、核がどこかに必ずあるはずだ。あいつの体はスライムみたいに透けてるわけじゃないから肉眼じゃどこに核があるのかは不明。それに大きさも分からない。体が大きいからといって、氣核も大きいとは限らない。米粒サイズって可能性も……まあ一応なくはないか?
……いや待てよ。たしか、氣核の大きさには限界があるはずだ。あの体を維持して動かすエネルギー源たる氣をコントロールするのが氣核だ。それが小さすぎたらあんな巨体は動かせないよな。
まあ酸でできてるってのが、どのくらいの氣を使うかが分からないけど……米粒サイズは流石にないよな。
そうだなー。最低でもあの目玉ぐらいのサイズはあっても…………
はー、なるほどなー。そういうことか!
オレは今一瞬目に映った事象から、勝利の一手を思いついた。
オレはもう一度、今度は左手に氣弾を形成。右手には残り一本の剣を握っておく。そしてラーナの動きを観察する。オレはその時が来るのをじっと待ちつづける。
……ここだっ!
オレは高く跳躍した。ちょうどラーナの顔と同じ高さに。さらにすぐさま、構えていた左手からある場所目掛けて氣弾を放った。そして即座に、右手に握っていた剣も勢いよく投げ飛ばす。
ちょうど、氣弾の後ろに剣が続くように。
ラーナはみんなの攻撃を注視しつつ、横目にオレの攻撃に気づいたが防ごうとはしなかった。
そしてオレの放った氣弾がラーナの頭部全体に直撃した。ラーナの頭部は見事に全てなくなる。だが、ラーナはのけぞるわけでもなくただそこに平然と居座っていた。
ただ一つ、奇妙な光景がここにいる全員の目には映っていた。
なんとラーナの目玉二つが、空中に浮いていたのだ。
そしてそこにオレの投げた剣が間髪入れずに突き刺さる。両目とも串刺しにして。
目玉は見事に真っ二つに割れた。それと同時に、ラーナの酸の体が崖崩れのように周囲に流れ広がっていく。
近くにいた湊はすぐにその場を離れた。リュウもエルの近くでその様子を見守る。
白い煙をもくもくとたてながら、緑褐色の液体は消え、地面も今まで以上にぼこぼこに抉れていた。
残ったのは空中に浮いた四等分にされた目玉とそこに刺さった剣のみ。だが、ラーナの酸が全て消えたと同時に、落下した。
おー!これは倒せたんじゃないか?!
オレは剣を取りに行こうとこの空間の中央付近へと向かった。その先には、最初の大きな部屋にあった巨大な門の縮小版といった感じの小さな黒っぽい門がいきなり出現した。
これはたぶん、帰りの門だよなー。この門が出たってことは、オレたちがこの階層をクリアしたって事実が確定したはずだ。
オレは門を観察しつつも、とりあえずは落ちた剣を拾い上げる。そして顔を上げると、全員がオレのところに集まっていたのがわかった。
「勝ったな、ノア」
「おう。まあまあ厄介な相手だったけど、弱点さえ分かれば余裕余裕!」
オレは得意げにニッと笑ってみせた。
「えと、私には何があったのか全然分からなかったのですが……いつのまにかラーナが倒れてて……」
「ぼくも、わかんなかった……」
エルもリュウも何が何やらと状況把握ができてない様子。
ふふん。仕方ないな~。
オレは上機嫌に事の詳細を話した。
「オレはまず、オレやみんなの攻撃をものともしないラーナに違和感をもった。それと大概こういう系のやつは氣核が割ともろいだろうから、それがどこかなーって考えた」
エルもリュウも真剣にオレの話を聞いてくれている。
「そんで、この時点でラーナについてわかってることをオレなりにまとめてみた。第一に、ラーナのあの酸の体に武器を用いた物理攻撃は全く効かない。氣を込めても基本的に無駄っぽい」
オレは指を立てながら説明を続ける。
「第二に、ラーナは自身の体がいくら壊されようとも痛くも痒くもない。つまりは死なないと分かっているってことだ。あの分じゃ、痛覚もなさそうだった」
うんうん、と二人は相槌をうつ。
「第三に、ラーナは反撃はするけど、攻撃を防いだり避けたりする気配が全くと言っていいほどに見られなかった。口からの酸攻撃は終始やってる。だけど、ただそれだけ。狙いも定まってないし、とりあえず当たれーって感じだ。数うちゃ当たる戦法ってやつだなー」
「それらは俺だけでなく、エルやリュウも気づいていたはずだ。だが、ノアはラーナに関する別の新たな情報を掴んだというわけだな」
察しがいいな、湊は。
「その通り。これに気づけたからこそ、オレはラーナの氣核の位置とその壊し方を思いついたんだ」
これが最も重要な情報だ。正直、運がいいとしか……いや、みんなが頑張ってくれたおかげだな。
「リュウが『ウィンドショット』を撃ちまくってラーナの気をそらしてくれただろ?」
「うん」
「あの酸でできた身体は、氣術を喰らえば大なり小なり傷がつく。なのに一箇所だけ、ウィンドショットをくらっても傷を全く負ってないところがあった……。それが目玉だ。それに加えて、ウィンドショットが天井に当たって小さな瓦礫がラーナの目玉目掛けて落下した時、あいつは目玉を守るように氣の障壁を張ったんだ」
そう、あの目玉にリュウの氣術が直撃しそうになっても弾こうとはしていなかった。当たっても無事だということを……氣術が効かないことを知っていたからだろう。だけど、たかが岩粒が目玉に当たりかけた時だけは、障壁を作り出した。
ここから何が言えるか。それはつまり……
「つまり、ラーナの目玉に氣術は効かなくても氣そのものを攻撃手段としない、物理的な攻撃は届くってことだ。そして自分の体を一度も守ろうとしなかったラーナが、目玉だけはわざわざ障壁を張って守るってことは、そこがラーナにとって最も大切な部分……すなわち氣核だって分かったってわけさ」
酸の身体は、氣自体を主要な攻撃力としない物理的攻撃が効かないけど、目玉は氣術が効かないって、どんな身体してんだよ。こういう系の魔物の氣核はもろいはずなのに、氣術が無効とかわけわからん性質持ってるってのはどうなんだ……?
あのラーナってやつ、第一層の魔物にしちゃ、クセが強すぎんだろ。
「な、なるほど……そういうことだったんですね!ノアさん、すごいです!」
「ノア兄ちゃん、かっこいい……!」
キラキラと目を輝かせるエルとリュウ。
「いやー、それほどでもー。あはは」
嬉しいもんだなー、こんなに褒められるとさ。調子狂っちゃうよー。
「けど、オレはもう一個工夫したんだ。ただ剣を目玉に投げつけるだけじゃ、あの酸の体で溶かされるか障壁を張られるかで簡単に防がれちまう。だからオレはラーナを油断させるための手段をとった」
オレは気分が高揚したまま、誇らしげに話を進めていった。
「まず、氣弾を飛ばす。そしたらあいつはこれまで通りオレの攻撃を防ごうなんて考えず、無視するだろ?だから、その後ろに氣弾を追尾させるかのように剣を投げたんだ。こうすれば絶対に防がれないって見込んでな」
どうよ、オレの作戦。我ながら完璧じゃないか?
「っ!やっぱりノアさんはすごいですね。私もノアさんに追いつけるようにもっともっと頑張ります!」
「ぼくも、ノア兄ちゃんみたいに、なりたい……!」
「ははは。エルもリュウもお疲れ!」
オレは気分が高揚していた。
もう一度言おう。
オレは気分が高揚していた。
だから気づけなかったのだ。
湊にこう言われるまでは……。
「楽しそうなとこ悪いが……時間は大丈夫か?」
時間……?時間ってなんの…………はっ!
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
オレは突然、大声を上げた。
「おお。これがトロイメライなのか」
オレの眼前には超巨大な壁が聳えていた。ある種の門とも言えるそれは、人の手では到底開けられそうにないほどに大きく、そして重厚感が漂っていた。
ここはEDEN本部の最下層で、アリアさんではなく多忙なミクリヤさんに案内してもらった。トロイメライへは、道中、ギルド職員の誰かが付き添わなくてはならないらしく、アリアさんは受付からあまり離れられないとのことで、たまたま所用で受付に来ていたミクリヤさんに白羽の矢がたった。
そしてオレたちを案内してくれたミクリヤさんは、帰り際、「はぁ。アリアはなぜいつも僕に頼るんだ?おかげで僕の仕事が滞ってばかりじゃないか……」と、ぼやいていた。
ああいう姿を見ると、なんだかちょっとばかし申し訳なくなってくるよなー……。
オレはトロイメライへの出入り口を見つつ、多忙なミクリヤさんを憐れんだ。
「門に何か彫られてんなぁ」
「見たことない生物だ」
秀や湊は門に描かれた謎の生物に目を向けていた。オレもつられて眺める。
言われてみれば確かに、見たことないな、あんなの。ギルドカードにも情報がなかったはず……
なんだよ。トロイメライ、めっちゃ面白そうじゃん。ますますモチベが上がったわ。
「……どうやら紫苑も知らないようだな」
おお。何千、何万年と生きてる紫苑も知らないのかー。
いいねいいね。未知との邂逅。これはオレの好奇心が収まらない!
「神とはいえど全知全能ではないのだ。当然主神以外は。私はただの守り神。知り得ないことの方が多い」
あの落ち着いた紫苑の声。久々に聞いた気がする。
「カエルみたいだな」
「おー!セツナ、大正解だよー」
カエル……?
オレはじっくりと門を観察してみる。
……確かに、カエルに似てるかも。
「名称はラーナ。トロイメライ第一層の相手なんだよねー」
へぇー。門にそんなものが描かれてたのか。
じゃああれか?最初の門はここ。次は進んだ先にあって、そこにも似たような門があって、さらに次には……ってな感じの作りなのかなー、トロイメライってやつは。
「エルは戦ったことあるんだっけー?」
「いえ、私はないです。ザナックさんのパーティに入った時にはすでにCランクでしたので。ただ、第三層のメドゥーザとはやったことがあります」
「あー、メドゥーザね。懐かしいー!あのうじゃうじゃした足がうざいんだよねー。しかも斬ってもすぐ再生するし」
「そうなんです!だから私の支援氣術も効果薄で……」
………。
「おーい。二人だけで話進めないでくれー。頼むよー、先輩方」
「あ、ごめんごめん。……えーっとね、このラーナってやつは言っちゃえば巨大なカエルだよー。攻撃は主に口から吐き出す酸かなー。普通に身体の外側に氣を巡らすだけじゃ、簡単に体が溶けるから要注意。対策としてはーーー」
「ストーップ!」
「うわー!ビックリしたー。どしたの、ノア」
「それ以上の情報はなし。こっからは二つのチームに別れて相談タイムだ」
相手の基本的な情報だけあれば大丈夫だ。それくらい少ない方がもっと面白いし。
「ってなわけで、チーム決めするぞー。えーと……ジャンケンして勝ったチームと負けたチームで組むってことで」
我ながら超単純な決め方にしちゃったな。咄嗟もいいとこだ。ま、気にすることはないだろ。
「よしいくぞ!」
オレの合図とともに各々が手を前に差し出す。
「最初はグー、ジャンケン…ポンッ!」
オレはグー。
シンはパー。
秀はパー。
湊はグー。
カズハはパー。
エルはグー。
セツナはパー。
リュウがグー。
ってことはもしかして、ちょうど分かれてる…?
「グー出した人はオレのとこ、パー出した人はシンのとこに集まってみて」
これではっきりするよな。
結果は、オレ、湊、エル、リュウチームvsシン、秀、カズハ、セツナチームになった。
「よーし。んじゃこっから両チームで作戦会議なー。時間は五分程度で」
「で、どうする気なんだ?ノア」
巨門の前で集まったオレたちノアチーム。
「うーん。まず、前衛はオレと湊だよなー。エルは後方支援で、リュウは全体を見つつ双方のサポート、ってことになるのかな?」
まあいつも通りっちゃいつも通りの布陣。
オレと湊で先制攻撃して、ヘイトを買いつつエルの支援氣術で仲間の能力アップを測る。そんで、リュウには、オレや湊の攻撃に第三の攻撃要員として加わってもらったり、エルが危険な時にカバーしてもらったりするって感じかなー。
この方が効率いいし早く倒せるんだよなー。慣れてるってのもあるし。
「そうですね。私もそれが安定だと思います」
「ぼくも……それでいい」
「えーと、あとは…カズハがちょっと言ってたけど、ラーナってやつは口から酸を吐くわけで、それに当たるのは正直よろしくない」
オレは顔を上げて門に描かれた彫刻に目を向ける。だってあんなでかい口から、大量の酸を吐くわけだろ?避けるのもしんどそうだし、当たったらマジでヤバそう。
「ですね。カズハの盾なら防げそうですけど…」
それはほんとそう。だからこの第一層は正直あっちが断然有利だ。しかもカズハは経験者だから、特殊氣術がなかったとしても、情報面で結局はリードされてるってわけだ。
「武器も……溶ける、かな?」
あー、溶けそー。だって工夫なしの氣で防げないってことは、氣で守ってない武器なんて溶けるどころかすぐに消滅するレベルなんじゃ…
「可能性は高いな。俺のこのネームド武器なら流石に耐えるだろうが、リュウやエルの武器はそうもいかないだろう」
一応というか、武器に氣を流すってのはそんなに高度な技術ってわけでもない。それなりに修行してれば、大体ができる。けど問題は、氣を流せれた方、つまりは武器がそれに耐えられるかどうかなんだよなー。まあ、流す側もある程度コントロールしなきゃだけど。
「そっか……せっかく、買ってもらったのに」
例を挙げるなら、前にAランクの魔物レックスを相手にした時、オレの特殊氣術を使おうとしたら、ものの数秒で粉々になったってのがあるなー。
「わぁぁ。綺麗な短剣ですね!」
あれはマジでびびった。もっともってくれるって信じてたのに…
「うん……シンお兄ちゃんに、買って、もらった」
ま、とにかく、武器を溶かされたくなきゃ、氣を武器に一点集中するか、かわすかの二択だよなー。
「ほう。シンのやつが……珍しいな」
あーでもあれか、氣を武器に流すことを優先してたら、自分のガード分に回せないあるいは間に合わないなんてとこになりそうだから、最悪武器は見捨てる方向で考えた方が無難かー。
「私もまさかシンさんがノアさん以外に物を買ってあげるなんて……びっくりです!」
いや、でも、オレ今二本しか剣もってない気がする。オレ乱雑に物使っちゃうタイプだし、すぐ溶かされそう。たしかカズハが、トロイメライで武器壊れたら現実世界でも壊れるって言ってたよな……
したら、氣術でやるっきゃないってとこだよな?
「シン兄ちゃん、優しい、よ…?」
「あ、はい。それはもちろん、私たちには優しくしてくれてると思いますよ。程度の差はあれど、シンさんなりに頑張ってくださってると私は思います」
あ、今気づいたけど、第一層終わったらすぐ第二層じゃん。ラーナに武器全部溶かされたら、次は武器なしで挑むってことだよな……
「この前、私がチンピラたちに絡まれたことがあったんですけど、たまたまノアさんを探してたシンさんが近くを通りがかって助けてくださったんです。『邪魔…』って言って一瞬で全員のしてました」
武器なしかー。……もし第二層のやつにオレの氣術効かなかったら、オレただの役立たずに成り下がるってこと?!
「はは。あいつらしいな。シンも少しは成長したようだ」
いやいや、待て待て。まだそうと決まったわけじゃないだろ、ノア。仮に氣術が効かなくても、全体を見て指示出すとか、盾になるとか、いろいろやりようがあんじゃん。
「やっぱり、シン兄ちゃんは、優しい…」
…ん?それ、リュウと役割被ったくさくね?
「あの、先ほどから思っていたんですけど、ノアさんがずっと無言です」
あー、マジかー。それじゃあ別のやつを探さなきゃだなー。
「というか、なにか考え事をしているんだろうな。しゃべってはいないが、動きはうるさい感じだ」
うーーん……なんだ?なにがあるんだ…?
「ふふふっ。そうですね」
はっ!囮役だ!
これならいける!!
「ノア兄ちゃん、大丈夫…?」
急に袖を引っ張られたような感覚がした。
「…お、リュウ。どうしたんだ?」
「どうしたはこちらのセリフだ、ノア。終始唸っていたが、何かあったか?」
「もちろん、オレ自身の立ち回りを考えてたんだよ。リーダーのオレがヘマするわけにはいかないだろ?ごめんな、全然会話に参加できなくてさー。で、今なんの話してたんだー?」
「シンさんが成長されていて微笑ましいなーという話です」
……うん?
「……どゆこと?」
どういう話からそうなるんだ?だってオレたち、ラーナの対策について話をしてたはずだよな?
「それよりノア。そろそろ五分経つようだ」
「え?!マジか」
オレ自分のことばっか考えてて結局、序盤にほぼいつも通りのこと話しただけじゃんか。なんのために設けたんだよ、この時間。誰だよ、作戦会議なー、とか言ったの。
……いやオレやん。
「んんっ。…んじゃあ、なんか全然話せてないけど、簡単にまとめるぞ。とりあえずいつも通り頑張ってくのと、酸はなるべく全部避けよう。無理なら自分が溶けないように氣でガードしてくれ。武器はどうとでもなるからまずは自分の身の安全から確保すること」
待ってろよ、ラーナ。すぐに倒してやるからなー!
「よし!ノアチーム、絶対勝つぞー!!」
「了解した」
「はい!」
「うん…!」
って感じでオレたちの会議とも言えない話し合いが終わった。そしてちょうど向こうも終えたらしく、全員が集まった。
そしてどちらが先攻か後攻かという話になり、シンがどちらでもいいと言ってすぐ後にオレが先にやると宣言。ノアチームから入ることになった。
「その門に触れれば誰でもトロイメライに入れるよー」
カズハに言われる通りにやってみる。すると、オレたちはキラキラと白い光に包まれていった。視界も白く輝く。オレは眩しくて目を閉じた。
そして次に目を開けると、そこは超巨大な洞窟内だった。
「おおお!すっげー!」
さっきとはまるで違う空間。オレはそのことに興奮する。
「全員無事にいるな」
「はい、大丈夫です」
「うん」
「さてさて、ラーナはどこにいるんだ?」
オレは辺りをざっと見回してみる。けれど、どこにもあの巨大ガエルの姿はない。
んー。トロイメライは遺跡みたいなものって言ってたけど、どっか探索した方がいいのかなー?
オレはもう一度よーく周りを観察する。すると、妙なことに気づいた。
「あれ?あそこってあんなんだったか?」
オレは天井の岩壁の中央部分にある二つの出っ張りに違和感をもった。さっき見た時は、あんな出っ張りなかったし、まるで口を大きく開いてるような……
ってまさか?!
「みんな、今すぐ端っこに走れ!」
オレの合図とともに、全員が走り出す。たまたまだろうけど、ちょうどこの洞窟の四隅に。
オレは左斜め前。
湊は右斜め後ろ。
エルは左斜め後ろ。
リュウは右斜め前。
オレたちが四隅に到着した瞬間、ベチャッ、ベチャッと大きく不快な音が数回響いた。見ればそこには、濁りきった緑色でどろどろの液体が広がっているのがわかる。
そして白い煙をあげたかと思うと、その液体は消え、代わりに地面にボコボコとした穴が複数空いていた。
あの液体を垂れ流してる正体を確かめるためにオレは顔を上げた。
そこには、吐き出した液体と似た色の皮膚を持つモンスターがいた。
『ゲゲゲゲェェ』
不気味な声を上げるラーナ。
さっきオレが見た時は周りとなんら同じ色をしていた。つまり、自分の体の色を変えることができる能力を持ってるってことになる。
天井にすっぽりと嵌まっている気味の悪いモンスターは、その両目をかっぴらき大口を開けている。この光景はまるで、獲物を前によだれを垂れ流す腹ペコな捕食者のようだ。
「まさかまさかの場所からのご登場かよ。…面白いじゃん」
オレたちのターゲット様のおなーりーってか?
緑褐色のモンスター……ラーナは天井からベヂャッと落下してきた。
あいつもしかして……体も酸でできてるのか?
「湊!エル!リュウ!やるぞ!!」
なんとなく推測しつつもオレはみんなに合図を飛ばす。
「了解した」
「はい!」
「うん…!」
「『サポートオン:青』…!」
「サンキュー、エル!」
エルの特殊氣術により、オレ、湊、リュウの身体が一瞬青く光る。これは仲間の防御力を向上させるものだ。わかりやすく言うなら、オレたちが体外に流して自身を守る氣の膜的なやつの硬度自体を向上させるって感じかな。
秀が言ってたけど、もっと氣の制御力が高まれば支援力も向上するはずだって言ってたな。
…って今はそんなこと言ってる場合じゃなかった。
オレは腰に下げていた剣を抜き、ある工夫をしてから、とりあえずラーナ目掛けてぶん投げてみた。オレの推測が正しいなら……
剣はラーナの体に刺さった。いやより正確には、飲み込まれた。そして、溶けてなくなってしまった。
「やっぱりか」
みんなもこれで確信したはず。あいつの体は吐き出す酸と同じ物質でできてるってことに。似てる魔物を挙げるなら、Dランクの魔物スライムかな。
でもスライムと違うのは、武器による物理攻撃が効かないとこだ。スライムも氣を流してないとポヨッンって弾かれる。けどあいつは、普通に氣を流した武器じゃ簡単に溶かさちゃうなー。
現にさっき氣を流した剣を投げたわけだけど、あっさり溶かされたし。
「湊は近接で攻撃。できれば敵の撹乱もしてくれ」
湊はネームド武器持ちだ。ネームド武器は不死身の武器って言われてるから、たぶん壊れない。だから問題ないはずだ。
「了解した」
「リュウは距離を取りつつ湊を援護。エルから離れすぎないようにな」
「うん……!」
「エルは今みたいに状況に応じてオレたちの支援。攻撃撃てるチャンスあったら積極的にやっていいからな」
「分かりました!」
んでオレは、適当に氣術を撃ちまくるぞ!
湊がラーナに斬り込んでいく。相変わらず綺麗な剣筋だ。
ラーナの体が幾重にも裂けていくのが見て取れる。とはいえ、やつの体が大きすぎて、一部分しか斬り刻めてはおらず、さらにその傷も瞬時に再生してしまった。
リュウはエルをカバーできる範囲から離れないように素早く動き回りつつ、風系統の下級氣術『ウィンドショット』を放っている。ラーナの目や口、足や腹といった至るところにウィンドショットが放たれるが、あまりいいダメージは入っていない。ただそれでもラーナの注意はうまく引いているようだ。
ラーナは湊とリュウの攻撃に翻弄され、うまく酸を当てられないご様子だ。
オレは本当は前衛のはずだったけど、予定変更だ。オレも湊の援護に回るぞ。
オレはある程度離れた位置から手のひらをラーナに向ける。そして、かなり大きめの氣弾を放った。
ラーナの土手っ腹に丸々とした穴が空く。氣弾はラーナの体を突き破り、その先の壁に大きな音を立てて着弾した。
だけど、どの攻撃もラーナを仕留められてはいない。というか、すぐにあいつは傷を再生してしまう。以前戦ったBランクの魔物、トロールと同じ性質を持っているらしい。
『ゲゲゲゲェェ』
まるでオレたちを嘲笑うかのように声を上げるラーナ。
ちょっと腹立つ。
「無駄にタフだなー、あいつ…」
たかが氣弾一発。けどこれは何発撃っても変わらなそう。湊やリュウは複数回攻撃してるわけだし……
この様子から察するに、氣核破壊があいつに勝つ唯一の方法とみた。
そもそ魔物には、人間の心臓のような生命維持に最も欠かせない器官が存在する。それを『氣核』って呼ぶんだけど、氣核は体内の氣の流れや血液の流れをコントロールするなど、魔物が生きるために重大な役割を果たしている。
そして、基本的にそれを破壊して魔物を倒すことは難しい。なぜなら、その破壊が最も攻略不可の代物だからだ。それも当然、氣核が壊れたら一瞬で死ぬのだから、防御を固めるのは自然なことだ。だから、魔物を倒す時は、致命傷を負わせて血液なんかと一緒に氣を外に放出させることで、氣核の生命維持機能を停止させる。氣核の原動力は氣だから、体内の氣がなくなれば氣核は動かなくなり、魔物は死に至るってわけだ。
まあ氣核の原動力は氣でも、ほかの器官の主な原動力は血液だから、血を流しすぎても、人間のように魔物も死ぬんだけどな。
だけど、このルールから外れた魔物も存在する。それが今オレたちの目の前にいる魔物だ。こういう身体を何度でも再生する系のやつはたいてい、氣核を破壊するかもしくは氣核を稼働させるための氣が尽きるまで再生させ続けるかのどちらかの方法が有効だ。
以前秀が仕留めたトロールもそのタイプだったわけだけど、秀は全身を燃やすことでトロールの再生を無理やり続けさせ、体内の氣を枯渇させた。そしてその結果、トロールは氣核を維持できずに灰と化したわけだ。
でも今回の場合、おそらくではあるけど、どんなにこいつを木っ端微塵にしても討伐することはできないとオレは踏んでいる。なぜなら、ここまで間髪入れず攻撃をあいつに喰らわせてるわけだけど、再生能力が衰える気配が全くないからだ。
ここから推察すると、あいつはたぶん、外部から氣を吸収して自分の氣に変換しているんだと思う。
氣はどこにでも流れてる。それこそ、地面とか森とか海とか大気とか、生物内だけでなく自然の中にも溢れている。その氣を自身に取り込めたら、半永久的に魔物は生き続けられるけど、事はそう単純な話でもない。なぜなら、氣にはそれぞれに固有の性質があり、自分と異なる性質を持つ氣は、自身の内部の氣と必ず反発し、下手をすれば死に至るからだ。
だからそれを自身の氣に変換できる、何か特殊な方法があれば、半永久的な存続は可能だ。まあそれがホイホイできるなら、魔物は全部、不死身のバケモノになるけどな。
だけど、オレたちの目の前にいるラーナってやつは、たぶんそれができる。そう仮定した場合、オレたちに残された手段を推察するに……
氣核をぶっ壊すしかない……!
さっき氣核の破壊は最も困難とは言ったけど、例外ももちろんある。それがこいつのような再生系の魔物だ。再生という強力な能力があるためか、こういうやつらの氣核は他の魔物よりも断然もろい。だから氣核を見つけさえすれば破壊は割と簡単だ……ってクロードが言ってた。
オレは一旦動きを止め、観察と思考に集中する。
とりあえず、核がどこかに必ずあるはずだ。あいつの体はスライムみたいに透けてるわけじゃないから肉眼じゃどこに核があるのかは不明。それに大きさも分からない。体が大きいからといって、氣核も大きいとは限らない。米粒サイズって可能性も……まあ一応なくはないか?
……いや待てよ。たしか、氣核の大きさには限界があるはずだ。あの体を維持して動かすエネルギー源たる氣をコントロールするのが氣核だ。それが小さすぎたらあんな巨体は動かせないよな。
まあ酸でできてるってのが、どのくらいの氣を使うかが分からないけど……米粒サイズは流石にないよな。
そうだなー。最低でもあの目玉ぐらいのサイズはあっても…………
はー、なるほどなー。そういうことか!
オレは今一瞬目に映った事象から、勝利の一手を思いついた。
オレはもう一度、今度は左手に氣弾を形成。右手には残り一本の剣を握っておく。そしてラーナの動きを観察する。オレはその時が来るのをじっと待ちつづける。
……ここだっ!
オレは高く跳躍した。ちょうどラーナの顔と同じ高さに。さらにすぐさま、構えていた左手からある場所目掛けて氣弾を放った。そして即座に、右手に握っていた剣も勢いよく投げ飛ばす。
ちょうど、氣弾の後ろに剣が続くように。
ラーナはみんなの攻撃を注視しつつ、横目にオレの攻撃に気づいたが防ごうとはしなかった。
そしてオレの放った氣弾がラーナの頭部全体に直撃した。ラーナの頭部は見事に全てなくなる。だが、ラーナはのけぞるわけでもなくただそこに平然と居座っていた。
ただ一つ、奇妙な光景がここにいる全員の目には映っていた。
なんとラーナの目玉二つが、空中に浮いていたのだ。
そしてそこにオレの投げた剣が間髪入れずに突き刺さる。両目とも串刺しにして。
目玉は見事に真っ二つに割れた。それと同時に、ラーナの酸の体が崖崩れのように周囲に流れ広がっていく。
近くにいた湊はすぐにその場を離れた。リュウもエルの近くでその様子を見守る。
白い煙をもくもくとたてながら、緑褐色の液体は消え、地面も今まで以上にぼこぼこに抉れていた。
残ったのは空中に浮いた四等分にされた目玉とそこに刺さった剣のみ。だが、ラーナの酸が全て消えたと同時に、落下した。
おー!これは倒せたんじゃないか?!
オレは剣を取りに行こうとこの空間の中央付近へと向かった。その先には、最初の大きな部屋にあった巨大な門の縮小版といった感じの小さな黒っぽい門がいきなり出現した。
これはたぶん、帰りの門だよなー。この門が出たってことは、オレたちがこの階層をクリアしたって事実が確定したはずだ。
オレは門を観察しつつも、とりあえずは落ちた剣を拾い上げる。そして顔を上げると、全員がオレのところに集まっていたのがわかった。
「勝ったな、ノア」
「おう。まあまあ厄介な相手だったけど、弱点さえ分かれば余裕余裕!」
オレは得意げにニッと笑ってみせた。
「えと、私には何があったのか全然分からなかったのですが……いつのまにかラーナが倒れてて……」
「ぼくも、わかんなかった……」
エルもリュウも何が何やらと状況把握ができてない様子。
ふふん。仕方ないな~。
オレは上機嫌に事の詳細を話した。
「オレはまず、オレやみんなの攻撃をものともしないラーナに違和感をもった。それと大概こういう系のやつは氣核が割ともろいだろうから、それがどこかなーって考えた」
エルもリュウも真剣にオレの話を聞いてくれている。
「そんで、この時点でラーナについてわかってることをオレなりにまとめてみた。第一に、ラーナのあの酸の体に武器を用いた物理攻撃は全く効かない。氣を込めても基本的に無駄っぽい」
オレは指を立てながら説明を続ける。
「第二に、ラーナは自身の体がいくら壊されようとも痛くも痒くもない。つまりは死なないと分かっているってことだ。あの分じゃ、痛覚もなさそうだった」
うんうん、と二人は相槌をうつ。
「第三に、ラーナは反撃はするけど、攻撃を防いだり避けたりする気配が全くと言っていいほどに見られなかった。口からの酸攻撃は終始やってる。だけど、ただそれだけ。狙いも定まってないし、とりあえず当たれーって感じだ。数うちゃ当たる戦法ってやつだなー」
「それらは俺だけでなく、エルやリュウも気づいていたはずだ。だが、ノアはラーナに関する別の新たな情報を掴んだというわけだな」
察しがいいな、湊は。
「その通り。これに気づけたからこそ、オレはラーナの氣核の位置とその壊し方を思いついたんだ」
これが最も重要な情報だ。正直、運がいいとしか……いや、みんなが頑張ってくれたおかげだな。
「リュウが『ウィンドショット』を撃ちまくってラーナの気をそらしてくれただろ?」
「うん」
「あの酸でできた身体は、氣術を喰らえば大なり小なり傷がつく。なのに一箇所だけ、ウィンドショットをくらっても傷を全く負ってないところがあった……。それが目玉だ。それに加えて、ウィンドショットが天井に当たって小さな瓦礫がラーナの目玉目掛けて落下した時、あいつは目玉を守るように氣の障壁を張ったんだ」
そう、あの目玉にリュウの氣術が直撃しそうになっても弾こうとはしていなかった。当たっても無事だということを……氣術が効かないことを知っていたからだろう。だけど、たかが岩粒が目玉に当たりかけた時だけは、障壁を作り出した。
ここから何が言えるか。それはつまり……
「つまり、ラーナの目玉に氣術は効かなくても氣そのものを攻撃手段としない、物理的な攻撃は届くってことだ。そして自分の体を一度も守ろうとしなかったラーナが、目玉だけはわざわざ障壁を張って守るってことは、そこがラーナにとって最も大切な部分……すなわち氣核だって分かったってわけさ」
酸の身体は、氣自体を主要な攻撃力としない物理的攻撃が効かないけど、目玉は氣術が効かないって、どんな身体してんだよ。こういう系の魔物の氣核はもろいはずなのに、氣術が無効とかわけわからん性質持ってるってのはどうなんだ……?
あのラーナってやつ、第一層の魔物にしちゃ、クセが強すぎんだろ。
「な、なるほど……そういうことだったんですね!ノアさん、すごいです!」
「ノア兄ちゃん、かっこいい……!」
キラキラと目を輝かせるエルとリュウ。
「いやー、それほどでもー。あはは」
嬉しいもんだなー、こんなに褒められるとさ。調子狂っちゃうよー。
「けど、オレはもう一個工夫したんだ。ただ剣を目玉に投げつけるだけじゃ、あの酸の体で溶かされるか障壁を張られるかで簡単に防がれちまう。だからオレはラーナを油断させるための手段をとった」
オレは気分が高揚したまま、誇らしげに話を進めていった。
「まず、氣弾を飛ばす。そしたらあいつはこれまで通りオレの攻撃を防ごうなんて考えず、無視するだろ?だから、その後ろに氣弾を追尾させるかのように剣を投げたんだ。こうすれば絶対に防がれないって見込んでな」
どうよ、オレの作戦。我ながら完璧じゃないか?
「っ!やっぱりノアさんはすごいですね。私もノアさんに追いつけるようにもっともっと頑張ります!」
「ぼくも、ノア兄ちゃんみたいに、なりたい……!」
「ははは。エルもリュウもお疲れ!」
オレは気分が高揚していた。
もう一度言おう。
オレは気分が高揚していた。
だから気づけなかったのだ。
湊にこう言われるまでは……。
「楽しそうなとこ悪いが……時間は大丈夫か?」
時間……?時間ってなんの…………はっ!
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
オレは突然、大声を上げた。
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