魔王を"封印"した聖女の生まれ変わりはまた聖女でした!

此花チリエージョ

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銀髪と緋色の瞳の聖女と仲間達

イーディス~ガルフォン~ ※主人公視点

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「待って、ティティ⁉︎」
「お、おい、お頭ッ‼︎」

 私はガルフォンとティティを呼び止めるが、ティティはフゥに乗って、フィル君とイーディスが姿を消した森の奥へ、消えて行く。

「ヤ、ヤバい」
「やべぇな」

 私とガルフォンの呟きが重なる。
 何がヤバイと言うと、ティティのぶちギレモード&イーディスの組み合わせが“最悪”だ。そもそもティティが冷静でも、あのふたりは相性が悪い。

「あー…イーディスって、さっきの兄ちゃんだよな?」

 ガルフォンが私にそう聞く、私はコクコクと頷く。

「お頭の前世と、相性が合わねぇ、あの兄ちゃんだよな?」

 ガルフォンはティティから聞かされているのか、そう念押してくる。私はコクコクと頷く。

「えー…、人間ひとや他種族の魔力の質や違いに鋭い種族の、兄ちゃんだよな?」

 もうガルフォンが何を確認したいのか、分からないけど、私はコクコク頷く。

「……他人ひとのデリケートな部分に、無意識で触れる、兄ちゃんだよな?」

 ん?……う、うん。そうかな?そうだったね。私はコクコクと頷く。

「……やべぇな」
「え?……きゃっ!」

 ガルフォンは私をまた俵担ぎで持ち上げると、3人と1匹が消えて行った方に、全速力で走っていく。

「ちょっ、ちょっと、ガルフォンッ!」
「嬢ちゃん。舌噛むから、喋るなよ~!!」

 ガクガクと私の体は揺れて、私の目線の先、私達が居た場所が遠ざかって行く。

「フィル君達の場所、分かるのぉうわぁ!?」
「分からねぇけどっ」
「じゃ、どうするの?探索魔法やスキル持ってないよぉ」
「それだぁ!」

 ガルフォンはそう叫ぶと、ガルフォンの“感知・探索”スキルを発動する。

「見つけたぁ!!」

 そう叫ぶとガルフォンは、さらにスピードをあげて、走り出す。私の身体が上下にガクガク、左右にブルブル揺れる。

「ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁ!」

 私の悲鳴が木霊する。


「「うわぁぁぁ」」

 私とガルフォンから絶句した声が重なる。

「ふたりとも、もうやめて下さいっ!」

 フィル君の虚しい説得の声。

「イーディスが…成長しない…以上…無理」

 ティティはそう言うと霞を作り、イーディスの視界を奪う。

「それはお前だろう。かの霞をなぎ払え〈台風テューポーン〉」

 懐かしい口喧嘩+氷魔法&魔術魔法の応酬が続く大惨事。
 そして何故かフィル君は蔓で木に縛られ、結界で守られているから無事。多分、イーディスの魔術だよね。
 私とガルフォンはフィル君の元へ向かう。

「フィル君!」
「坊主っ‼︎」
「ハルッ!ガルフォン、此処は危険です。離れてっ‼︎」
「お頭と兄ちゃんに、何かあった⁉︎」
「……………………それが…………ティティの………“生い立ち”に触れました」
「???」
「や、あーー…なんで触れっかなぁ」

 かなり、ながーい間を置いて答えたフィル君の言葉に、私は意味不明だったが、ガルフォンは心当たりがあるのか、頭を抱える。

「坊主と嬢ちゃん、ふたりを止める方法、なんかあるか?」

 私はふるふると、フィル君はブンブンと頭を横に降って『止める方法はない』と、ガルフォンに伝える。

「あー…、了解」

 ガルフォンは、まだ氷魔法を使うティティと、魔術魔法を使うイーディスを見つめながら、右手を空高く上げて、拳を作る。

「ねぇなら、俺の空間テリトリーにすれば解決だな」

 すると、先程まで、氷魔法と魔術魔法の応酬を繰り広げていた、ティティとイーディスがピタッと止まる。
 フィル君を拘束していた蔓と、結界も解け、フィル君は自由を取り戻して、両手を握ったり、開いたりした。

「魔法と魔術を空間にしたんですか?」
「ああ。これが一番だろ」
「………上手くいくといいんだけど」

 魔法と魔術を使えねぇ以上、落ち着くんじゃねぇと、ガルフォンは言うが、千年前は口喧嘩でさえ止められなかった。そう、上手くいくかなと、私は不安がいっぱいで、イーディスとティティを見守る。

「………ガル。…追い付いた……のね。……イーディス……次は……容赦しない……から」

 ティティはイーディスを威嚇すると、スタスタとガルフォンの横に戻る。
 千年前以前なら、氷魔法を無効化されても、イーディスと口喧嘩していた、ティティがあっさりと引いたことに私が驚いていると、イーディスがスタスタとガルフォンの元へ、瞬間移動ぐらいのスピードでやって来て、ガシッとガルフォンの両手を掴み。

「今のどうやった」
「はぁ!?」
「空間支配か?ただの人間ひとで、これ程の支配を可能にする、そなたの魔力量は尋常じゃないな。聖女ムツキ並みの魔力量?いや、それ以上の魔力量と、その魔力を受け入れる膨大な器があり、そして何より、魔法を使うそなたのイメージが素晴らしい。魔法と魔術を無効化する、イメージしにくいものを、完璧にイメージ出来るとは…(賛美の言葉がかな~り続く)」
「「「こ、これは」」」

 私、フィル君、ティティの声が重なる。

 イーディスはこの『闇の森』の、中心部の森が侵食していない、ドーナツの空間部分にある、庵で“とある理由”で、エルフ達種族から離れて暮らし、物心がついた時から“ひとり”だった。
 彼は『闇の森』から、いや、庵から滅多に出ず“引きこもり”の魔法&魔術の研究に没頭して行った。

 千年前に山賊に拐われたムツキが、山賊共の不注意で【闇の霧】を浴び、人喰い花ブラッディ・アウラウネの元に誘導され、今回と似たような内容で、ブラッディ・アウラウネが騒がなければ、出会うこともなかっだろう。
 そしてムツキ達の旅に同行した、理由も“聖女”の魔力と“聖女のみが使える聖属性魔法”に“興味”があったためだ。

「属性魔法は、何を持ってる。持っていないのかッ!では、スキルで先程の空間支配をしたのか?何【魔石】の力だとっ!?生まれ持った能力ちからでもないのに、ここまで使いこなせるなんて、尊敬に値する」

 ガルフォンはドン引きながら、イーディスの質問に答えているが、イーディスのマシンガントークに耐えられなくなったガルフォンは、

「嬢ちゃん、助けてくれ」

 目が合った私に助けを求めた。イーディスはガルフォンの声に反応して、ガルフォンの目線を追うように、後ろへ振り向き、

『…春、お願い。、わたしに身体を貸して』

 の耳に、よく知る声が聞こえる。そして、見覚えがある銀色と緋色の光の粒が私を覆う。
 この光は魔王の封印が解かれる直前、ルティルナの都で、最初にガルフォンの異空間にフィル君と居た時に、私を覆った光と一緒だった。前と違うのはの意識は途絶えなかったことだけー…。



ーーーー
※補足・ラストの銀色と緋色の光の粒は『不思議なお茶会?と目的』の最後の方で出た光と同じです。
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