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銀髪と緋色の瞳の聖女と仲間達
フィルの手紙と宰相① ※アイルダ国王陛下視点
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俺は窓から遠くを見つめる。執務室にきた自分付きの文官に、
「宰相を呼べ」
「承知いたしました」
そう命じれば、文官は深々の礼をして退室して行った。
「………………」
窓に映るガラス越しに文官を見送った俺はフィルから届いた手紙の内容を思い出す。
ー兄上へー
僕と聖女・ハルが旅立ってから4日が過ぎようとしています。きっと兄上は国王陛下としての執務に追われてる日々を過ごしていると思います。お手伝い出来ず申し訳ございません。
旅立ってから、今日までの近況をご報告致します。
1日から2日目は召喚当日に旅立ったこともあり、テントでハルの休養と今後の日程の計画を立てました。計画の詳細は別紙にまとめてあります。
3日目の正午頃にルティルナの都へ到着。そのまま【闇ギルド商会】に赴き、3年前に亡くなったとされたガルフォン・リディエールと再会しました。
ガルフォンが【闇ギルド商会】に身を置いてる経緯は別紙にまとめてあります。
俺はまだ3年前の23歳だったガルフォンと、15歳のガルダの笑顔を思い浮かべる。
……ガルフォンが生きていたか。
信頼も出来るしフィル達に協力してくれたら、俺も安心するんだが…生存が宰相にバレたら厄介だな。
ガルフォンは【闇ギルド商会】の頭領で、千年前のイグニーアの仲間だったティーニャの生まれ変わりでもある獣人・人狼族のティティと恋人同士で、ふたりともハルに協力的です。
ガルフォンは……恐らくですが、ハルにガルダを重ねています。ガルダが生きていたなら、ハルと同じ年ですから。
俺は腕を組んで、
ガルフォンの協力は……問題なさそうだが、それより【闇ギルド商会】の頭領が人狼族か。
密偵の調査によると【闇ギルド商会】の頭領の座は世襲で親から子へ、子から孫へと受け継がれてる。
先代は人間だったはずだが、略奪したのか?いや、悪党ばかりだが結束力が高い集団だ。略奪なら部下が従うはずがない。どうなっている?
僕とティティはまだ前世のわだかまりが少し残ってますが、ムツキの生贄のことを思えば、仕方ないことです。
4日目の早朝、3日目に魔王の【封印】が解けて、溢れでた"瘴気"をハルに"浄化"魔法でルティルナの都周辺は"浄化"致しました。
…ーコンコンと、ドアがノックされる音で俺の意識は現実に戻る。
相手は呼び出したガルジェダ宰相だろう。
「入れ」
「失礼致します。陛下お呼びでしょうか?」
「ああ。こちらへ」
俺は執務机の目の前にある応接セットのソファー座るように促す。俺もソファーに座るとベルをチャリーンと鳴らして侍女を呼ぶ。
侍女はティーセットを乗せたカートを押して入室すると、紅茶を注いだ2人分のティーカップをテーブルの上に置いて、一礼して退室する。
俺は紅茶に静かに口をつけて、飲み込む。
「……アッサルか」
「一口飲んだだけで、紅茶名を当てるなんて、流石は陛下です」
「世辞はよせ」
「お世辞だなんて……本心からに決まっているではありませんか」
「…………早朝"陽炎"から、ある報告が届いた」
「"かげ…ろう"
もしや、陛下直属の諜報部と噂される"陽炎"でしょうか?」
「そうだ」
「ただの噂ばかりと思っておりましたが、実際するなんて、その"陽炎"からの報告はなんと?」
「心当たりないのか?」
「……私に心当たりなどございません」
ガルジェダ宰相の質問を質問で返した俺に対して微笑みながら返答するが、瞳は少しも笑っていなかった。
普段の笑顔と変わらないその微笑みの違いに気付くのは、俺が…フィル…よほど敏感な人間ぐらいか。
「そうか。
"陽炎"から第二王子と聖女の指名手配書が国中に手配されたと報告があったんだが…」
「ああ。そのことでございましたか。
おふたりの指名手配書を手配したのは私でございます」
「そうか。宰相に問う。このディアーナ王国の頂点は誰だ?」
「それは…国王陛下、貴方様でございます」
「なら何故、俺の許可も得ずにふたりの指名手配書を発行した?」
「…それは。今代の聖女ハル•イチノセは鑑定の結果、既に【魔王】を“封印”出来るLvに達しているではありませんか。
初代聖女【聖なる乙女】から何千、何億と長い歴史を“封印”で解決してきた【魔王】をわざわざ倒せるかどうかも分からないのに【倒す】必要がないと、何度も申し上げました」
「そうだな。……それは何度も聞いている。
宰相はこれからも“聖女”が召喚出来ると思っているのか?」
俺の問いにガルジェダ宰相は瞳をパチパチと瞬きをする。
「それはそうでしょう。
“召喚魔法”はディアーナ王国初代王【獅子】の直系子孫である王家の男子しか扱えない秘術でしょう。
【獅子】の血筋が途絶えなければ、“聖女”は何度も召喚されます」
「……………」
「現在の重大な問題は“召喚魔法”を次代に継承出来る【獅子】の直系男子は、陛下と第二王子殿下しか居られないことです」
「それで白銀貨100枚の指名手配書を発行したのか?」
「ええ。殿下と聖女が旅の最中に亡くなることが最悪な状況ですので。陛下と殿下には【獅子】の血を残す必要があることもお忘れなく」
俺はギシッとソファーに身体を沈める。
「そうか。建前は分かった」
「建前だなんて「演技はやめろ」
俺の一言で部屋に静寂が包む。
「演技?なんのことでしょう?」
ガルジェダ宰相は意味が分からない感じでキョトンとしている。
まだ演技を続ける気か。
「前リディテール公爵が亡くなった3年前からガルジェダ宰相の中身は別人だろう」
ガルジェダ宰相は両手で顔を覆って俯く。
「くすくす」
男のガルジェダ宰相から女性の笑い声が響く。
「やはり気付いてらしたのね」
「宰相を呼べ」
「承知いたしました」
そう命じれば、文官は深々の礼をして退室して行った。
「………………」
窓に映るガラス越しに文官を見送った俺はフィルから届いた手紙の内容を思い出す。
ー兄上へー
僕と聖女・ハルが旅立ってから4日が過ぎようとしています。きっと兄上は国王陛下としての執務に追われてる日々を過ごしていると思います。お手伝い出来ず申し訳ございません。
旅立ってから、今日までの近況をご報告致します。
1日から2日目は召喚当日に旅立ったこともあり、テントでハルの休養と今後の日程の計画を立てました。計画の詳細は別紙にまとめてあります。
3日目の正午頃にルティルナの都へ到着。そのまま【闇ギルド商会】に赴き、3年前に亡くなったとされたガルフォン・リディエールと再会しました。
ガルフォンが【闇ギルド商会】に身を置いてる経緯は別紙にまとめてあります。
俺はまだ3年前の23歳だったガルフォンと、15歳のガルダの笑顔を思い浮かべる。
……ガルフォンが生きていたか。
信頼も出来るしフィル達に協力してくれたら、俺も安心するんだが…生存が宰相にバレたら厄介だな。
ガルフォンは【闇ギルド商会】の頭領で、千年前のイグニーアの仲間だったティーニャの生まれ変わりでもある獣人・人狼族のティティと恋人同士で、ふたりともハルに協力的です。
ガルフォンは……恐らくですが、ハルにガルダを重ねています。ガルダが生きていたなら、ハルと同じ年ですから。
俺は腕を組んで、
ガルフォンの協力は……問題なさそうだが、それより【闇ギルド商会】の頭領が人狼族か。
密偵の調査によると【闇ギルド商会】の頭領の座は世襲で親から子へ、子から孫へと受け継がれてる。
先代は人間だったはずだが、略奪したのか?いや、悪党ばかりだが結束力が高い集団だ。略奪なら部下が従うはずがない。どうなっている?
僕とティティはまだ前世のわだかまりが少し残ってますが、ムツキの生贄のことを思えば、仕方ないことです。
4日目の早朝、3日目に魔王の【封印】が解けて、溢れでた"瘴気"をハルに"浄化"魔法でルティルナの都周辺は"浄化"致しました。
…ーコンコンと、ドアがノックされる音で俺の意識は現実に戻る。
相手は呼び出したガルジェダ宰相だろう。
「入れ」
「失礼致します。陛下お呼びでしょうか?」
「ああ。こちらへ」
俺は執務机の目の前にある応接セットのソファー座るように促す。俺もソファーに座るとベルをチャリーンと鳴らして侍女を呼ぶ。
侍女はティーセットを乗せたカートを押して入室すると、紅茶を注いだ2人分のティーカップをテーブルの上に置いて、一礼して退室する。
俺は紅茶に静かに口をつけて、飲み込む。
「……アッサルか」
「一口飲んだだけで、紅茶名を当てるなんて、流石は陛下です」
「世辞はよせ」
「お世辞だなんて……本心からに決まっているではありませんか」
「…………早朝"陽炎"から、ある報告が届いた」
「"かげ…ろう"
もしや、陛下直属の諜報部と噂される"陽炎"でしょうか?」
「そうだ」
「ただの噂ばかりと思っておりましたが、実際するなんて、その"陽炎"からの報告はなんと?」
「心当たりないのか?」
「……私に心当たりなどございません」
ガルジェダ宰相の質問を質問で返した俺に対して微笑みながら返答するが、瞳は少しも笑っていなかった。
普段の笑顔と変わらないその微笑みの違いに気付くのは、俺が…フィル…よほど敏感な人間ぐらいか。
「そうか。
"陽炎"から第二王子と聖女の指名手配書が国中に手配されたと報告があったんだが…」
「ああ。そのことでございましたか。
おふたりの指名手配書を手配したのは私でございます」
「そうか。宰相に問う。このディアーナ王国の頂点は誰だ?」
「それは…国王陛下、貴方様でございます」
「なら何故、俺の許可も得ずにふたりの指名手配書を発行した?」
「…それは。今代の聖女ハル•イチノセは鑑定の結果、既に【魔王】を“封印”出来るLvに達しているではありませんか。
初代聖女【聖なる乙女】から何千、何億と長い歴史を“封印”で解決してきた【魔王】をわざわざ倒せるかどうかも分からないのに【倒す】必要がないと、何度も申し上げました」
「そうだな。……それは何度も聞いている。
宰相はこれからも“聖女”が召喚出来ると思っているのか?」
俺の問いにガルジェダ宰相は瞳をパチパチと瞬きをする。
「それはそうでしょう。
“召喚魔法”はディアーナ王国初代王【獅子】の直系子孫である王家の男子しか扱えない秘術でしょう。
【獅子】の血筋が途絶えなければ、“聖女”は何度も召喚されます」
「……………」
「現在の重大な問題は“召喚魔法”を次代に継承出来る【獅子】の直系男子は、陛下と第二王子殿下しか居られないことです」
「それで白銀貨100枚の指名手配書を発行したのか?」
「ええ。殿下と聖女が旅の最中に亡くなることが最悪な状況ですので。陛下と殿下には【獅子】の血を残す必要があることもお忘れなく」
俺はギシッとソファーに身体を沈める。
「そうか。建前は分かった」
「建前だなんて「演技はやめろ」
俺の一言で部屋に静寂が包む。
「演技?なんのことでしょう?」
ガルジェダ宰相は意味が分からない感じでキョトンとしている。
まだ演技を続ける気か。
「前リディテール公爵が亡くなった3年前からガルジェダ宰相の中身は別人だろう」
ガルジェダ宰相は両手で顔を覆って俯く。
「くすくす」
男のガルジェダ宰相から女性の笑い声が響く。
「やはり気付いてらしたのね」
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