魔王を"封印"した聖女の生まれ変わりはまた聖女でした!

此花チリエージョ

文字の大きさ
上 下
32 / 52
銀髪と緋色の瞳の聖女と仲間達

"浄化"と出会い② ※前半前世・ムツキ視点、後半現世・主人公視点

しおりを挟む
「ムツキ、先程の続きですが」
「「…………」」

 やっぱり、気付いてない。
 さっきからルルリナさんから凄い圧を感じる。

「体内の魔力循環は出来ているので、身体の外へ放出する練習をしようと思います」
「練習?どうするの?」
「イグニーア殿下とムツキ様がなさっていたことと同じことをわたくしとなさいますわ」

 ムツキの問いにルルリナが穏やかに微笑みながら答える。

「ルルリナさんと?」

 ムツキの顔に「このままイグニじゃ、ダメなの?」と、疑問が思い切り出ていたので、

「ええ。…その、あまり気分を悪くなさらないで聞いてほしいんですけど…」

 ルルリナは言いにくそうに、

「このディアーナ王国…いえ、この世界と、言ったほうがよろしいかしら、あんまりと〈ふたりきり〉になることを良く思わない方々が多いですの。婚約者がおられる異性ならば、なおのこと」
「ルルリナの話によると、ぼくがムツキとふたりきりで魔法の指導していることに問題視する声が上がっているようなんです」

 なんとなくイグニと一緒に王宮を歩いてる時に、周りから感じる視線でそんな気はしていたけど。

こちらの都合ディアーナ王国で、ムツキを召喚して、故郷を、親族や友人達と引き離しておいて、おかしな話です」

 イグニはムツキの〈想い〉を代弁する。

「それは……そうですが、人々の〈想い〉も否定しないで下さいませ」

 ルルリナもイグニの言葉に一理はあると、頭では分かっているんだろう、言い淀んで、自分も含め、周りの〈想い〉も理解して欲しいと、イグニを窘める。

「今の王宮の状況を解決するためにも、わたくしもムツキ様の指導に参加されるのですわ。
 わたくしが居れば、イグニーア殿下との〈ふたりきり〉ではなくなりますもの」

 そう言って花のように笑う少女は、ムツキから見ても恋する乙女だった。




 そんなやり取りから3日後の午後、魔法練習場でムツキはルルリナと向かい合いながら、手を繋いで、魔力を身体の外へ流す練習していた。
 イグニも近くでふたりを見守っている。

「""とか、あればいいのに」
「「""ですか?」
     とは?」

 ムツキの何気ない呟きにイグニは「ですか?」と、ルルリナは「とは?」と、疑問符をうかべる。

「えっと、わたしの世界の創作の物語で、魔法を使うときに「」の"呪文"があるの。
 火だと「ファイア」水だと「ウォーター」傷を癒す魔法だと「ケアル」や「ヒール」とか」
「この世界に"呪文"は…」
「……ございませんね」
「やっぱり、そうか」

 "呪文あったら"教えてるよね。
 相手に魔力を流すことも上手くいかないし、どうしたらいいんだろう。

「ふたりは、どうやって魔法を使っているの?コツとかあるの?」

 ムツキは悩んだ末にイグニとルルリナに問いかける。

「そうですわね。
 わたくしの血筋は魔法より"感知・探索"のスキルが長けているので、これぐらいしか出来ないんですけれども…」

 ルルリナの中心に薄紫色の光が包み、光が消えると、ルルリナの両手におさまるぐらいの、

「わぁ、
「これは"創作魔法"と言って術者がイメージしたモノを生み出す魔法ですわ。
 わたくしの魔法属性は闇だけですので"創作"したモノは全部すべて、紫色になってしまいますけど」 
「ムツキ、見てて下さい」

 イグニは左手に「鎌鼬かまいたちの刃のような風」と右手に「水の矢」を魔法で出現させた。

「ぼくが使った"戦闘魔法"と"創作魔法"それから洋燈ランプに明かりを灯したりする“生活魔法”の発動条件は全て一緒で…〈想像イメージ〉すること」
「イメージ?
 イグニは「」と「」で、ルルリナさんは「」ってこと?」
「ええ、そうです。
 ムツキ、試しに"呪文"を唱えながら魔法を発動してみて」
「"呪文"ないんだよね?」
「“呪文”の話を聞いてから、確認したいことがあるんです」
「……分かった?」
「?」

 ムツキとルルリナはイグニが何を確認したいのが分からずにクエスチョンマークを浮かべる。

「火と土、聖属性魔法、どれでもいいの?」
「聖属性魔法は「聖女」しか使えない属性で、ぼくには確認しにくいので火か土でお願いします」
「…分かった?」
(何を確認したいんだろう?)

 ムツキは魔法失敗の爆発にふたりを巻き込まないように距離をとると、

(えーと、土魔法の“呪文”ってなんだっけ?
 たしか…)
「「」」

 ムツキの周りの地面つちから「ストーン」が集まって、ぷかぷかと浮いていた。

「ええっ⁉︎」
「まぁ!」
「……やはり」

 ムツキとルルリナは驚愕、イグニはどこか納得した様子だった。

「えーと「」?」

 ムツキは戸惑いながら唱えると、ムツキの周りにボッボッと「火球体ファイア・ボール」が現れた。

「イグニ、これって?」
「イグニーア殿下、これは?」
「恐らくムツキの中で“呪文”と“想像イメージ”は同義なんです」

 イグニが地面にディアーナ王国の文字で「呪文=想像」と書く。

「“想像イメージ”だけで足りない部分を“呪文”という“言葉”で補って魔法発動せいこうさせたように見えます」

 地面の文字に「呪文=想像×」「呪文」の下に縦で=を書き「言葉○」を書き足した。
 ×は失敗で○は成功。

「このままでも問題ないの?」
「それは……魔物相手になるますと…」

 ルルリナは言い淀んで、

「魔物も知能があると言われています。
 “呪文”の後に魔法発動していることに気付いたら、ムツキが“呪文となえる”前に倒しに来るでしょう。
 接近戦になったらムツキに不利なので“呪文”がなくても魔法発動出来るよう頑張ろう」

 イグニは爽やかな笑顔でムツキに爆弾を落として、ムツキが“想像イメージ”だけで魔法を成功させるのに1ヶ月ほど時間がかかった。

 その後、ムツキが〈ひとり〉で出立予定だった魔王【封印】の旅にイグニが護衛として同行を願い出て、急遽〈ふたり旅〉になる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...