魔王を"封印"した聖女の生まれ変わりはまた聖女でした!

此花チリエージョ

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銀髪と緋色の瞳の聖女と仲間達

千年前(ゆめ)と現世(げんじつ) ※前半前世・イグニーア視点、後半現世・フィルシアール視点

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「…ーーえっ。
 イグニーア殿下、今なんと申されましたか?」

 ぼくはくるくるふわふわな腰まで長い深緑色の髪の毛の淡い水色や青いフリルをあしらった人魚のようなドレスの小柄な少女を真っ直ぐ見つめる。
 少女の長い睫毛まつげの垂れ目の瞳が信じられないように見開いて、ぼくを見つめる。

「ルルリナ・リディエール。
 

 ぼくは先程告げた言葉と同じ言葉を繰り返す。

わたくしに何か落ち度がございましたか?」

 少女の小さな両手が自身の口元を覆った時、首元の小粒のダイヤが散りばめられた翡翠のネックレスがチャラと金属同士があたる音が部屋に響く。

 ぼくは静かに瞳を閉じてから頭を横に振る。

「貴女には何も落ち度などありません」
「でしたらどうして?」
「全てはぼくの不甲斐なさが招いた結果です」
「不甲斐…なさ?
 "聖女"様と共に"魔王"をされた貴方が、どうして不甲斐ないのでしょうか?」

 ぼくはに""魔王"封印の真実いけにえ"を告げることが出来ずに口を閉ざす。

 どちらも微動だにしないまま時間だけが過ぎていく。

"聖女"ムツキ様と何かございましたか?」

 微かに震える声でそう問いかけるルルリナの言葉にぼくは雷でうたれたような衝撃を受けた。

「どなたから、そう聞かされましたか?」
から、そう伺いましたが…」

 質問に質問で返したぼくに困惑しながらもルルリナはそう答える。

「…そう、ですか」

 ぼくは"生贄しんじつ"を嘘で覆い隠す国王陛下自身の父に嫌悪感を抱き、ルルリナから視線を反らすように俯く。

「イグニーア殿下はムツキ様を想っていらっしゃるのですね」
「……ええ、大切な…」

 仲間ゆうじんでしたー…、その言葉は声に出さず心の中でムツキの冥福を祈るように呟く。

わたくしのことは…どう、想っていましたか?」
「…ーー愛して…いました」

 …ーー。ぼくは自身のルルリナへの本当の想いを過去形にして蓋をしめた。

 その言葉を聞いたルルリナの薄紫の瞳から大粒の涙が溢れだして、両手で顔を覆い隠す。

「…ーイグニーア殿下からの、婚約解消の申し入れを…受け入れ…ま…す」

 ルルリナは掠れる声でそう告げると瞳に涙を溜めたままぼくを見つめて、

「最後に…お願いが…ございます。
 イグニーア殿下がわたくしに婚約を申し出て下さった、初代聖女様が造られた【聖なる少女の花園】の白薔薇を分けて下さいませんか?」

 ぼくはルルリナの願いを受け入れて4本の白薔薇を贈る。
 触れたルルリナの手は氷のように冷たくて微かに震えていた。



「…ーーッ!」

 僕の意識が千年前ゆめから現世げんじつに覚醒して、ベットから上半身を起こす。
 くしゃと髪を掻きむしると、大量の汗で湿気を帯びており気持ち悪い。
 ベットから窓へ移動してカーテンを開ける。朝日が差し込み僕は瞳を眩しさで眼を細める。

「…ールルリナ」

 フィルイグニーアぼくが愛した女性ひとの名前を囁く。



 ――――――



「フィル君、おはよう!
 あれ、入浴してきた?」
「……おはよう。
 うん。スッキリしたくて浴びてきた」

 ジューッ、ジューッとフライパンの上にフレンチトーストが焼かれている。

「朝入るお風呂って気持ちいいよね。
 そうだ。はソーセージとサラダでいい?」

 僕とイグニは甘いものが苦手だ。
 ハルはそれを理解しわかっているので、フレンチトーストの添え物トッピングに甘いものを選ばないし、フレンチトーストも砂糖を入れずに作ってくれる。

「うん、それでお願い。
 それから無理してディアーナの単語に合わせなくても、ハルの世界の単語使っても大丈夫だよ」
「え?」

 ハルが瞳を真ん丸にして困惑する声をあげる。

「シャワーやトッピング他にもに教えてくれたことは覚えているから」

 ハルが僕を見つめたまま固まる。
 フライパンからはジューッ、ジューッとフレンチトーストが焼かれ続けてる音が聞こえて、

「焦げてる!」
「わわっ」

 僕は咄嗟に叫んで、ハルは慌ててフレンチトーストを真っ白な大皿にのせる。
 今日の朝食はほんの少し焦げたフレンチトーストと大皿の左上にレタスとミニトマト、胡椒こしょうで味付けされた焼かれたソーセージが2本トッピングされていた。
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