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“闇の聖女”ルピティナ監禁END

シェラルド第二王子殿下ルート+おまけ

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    前回のレイルド王太子殿下の『おとうと』である、シェラルド第二王子殿下ルートです。

   ※前半、相手役不在。
   ※騙し討ち。
   ※無理矢理

   おまけは好みも分かれると思うので、ストーリー始めに『注意書き』があります。

   ーーーー


「ルピティナ公爵令嬢、本日をもって、貴女との婚約を破棄させていただきますっ!」

 アルフォルト魔法王立学園の卒業を祝うパーティーで、レイルド王太子殿下は自身の婚約者であるルピティナ・アルフィーレート公爵令嬢にそう宣言をする。
 レイルド王太子殿下の隣にはリリア・フィーリィール子爵令嬢が寄り添っている。
 リリア子爵令嬢が居る場所は、本来、レイルド王太子殿下の婚約者であるルピティナ公爵令嬢が居るべきなのだが。

「……………」

 ルピティナ公爵令嬢は真っ直ぐレイルド王太子殿下とリリア子爵令嬢を見つめる。
 レイルド王太子殿下は淡い緑色の正装に、黄色のガーベラのタイピンをしている。
 リリア子爵令嬢も同じく淡い緑色のレースやフリルがあしらわれたドレスに、髪型はハーフアップにして、黄色のガーベラの髪止めをしている。
 よく見ると衣装の色だけではなく、二人の“黄色のガーベラの髪止めとタイピン”もお揃いだ。

 ルピティナ公爵令嬢の格好は、レイルド王太子殿下から贈られたとはいえ、肩が空いて“何もない”胸元が見る薄紅色のドレスで、腰元に咲き誇っている大輪の薔薇が、幾重にも重なりドレスの裾まで広がっている。
 腰まで長い髪は編み込んで、頭の下の方でお団子に結い上げられ、小粒のパールが散りばめられた、薄紅色の薔薇の髪飾りをしている。

 普通ならば“揃っているはず”の“婚約者同士”の正装とドレスが“揃ってない”時点で、お互いに“揃っている”正装とドレス姿の、レイルド王太子殿下とリリア子爵令嬢は、自分達二人は“恋人同士”と、公衆の面前でそう周知しているようなもの。

「…ルピティナ嬢、聞いていらっしゃいますか?」
「ええ、聞いております。わたくしとの婚約を“白紙”に戻し、フィーリィール子爵令嬢と“婚約”をなさりたいと、そういうお話で宜しいですわよね?」

 レイルド王太子殿下の問いかけに、ルピティナ公爵令嬢は、確認も含めて淡々と答える。
 ルピティナ公爵令嬢が婚約“破棄”ではなく“白紙”と言っているのも、自分になんら落ち度がないと、パーティーに参加して、急に始まった婚約破棄この騒動を迷惑そうに眺めている卒業生や在校生、その保護者へアピールするためだ。

「ええ、そうです。それとリリア嬢に謝罪をしていただきたく」
「謝罪とは?」

 むしろ謝罪をしなくてはならないのは、そちら側ではないだろうか。
 ルピティナ公爵令嬢婚約者が居るにも関わらず、学園内でリリア子爵令嬢浮気をしているのだから。

「ルピティナ嬢。貴女は…私とリリア嬢の仲に嫉妬して、一週間前から本日まで、リリア嬢に対して私物を隠したり、倉庫に閉じ込める等の“嫌がらせ”を繰り返したではありませんか!?」
「わたくしではありませんわ。よって謝罪の必要もございません」
「貴女意外は考えられません!」
「わたくしでしたら“嫌がらせ”など、回りくどい真似は致しません。お父様にお願いすれば済む話ですもの」
「…っ」

 なおも食い下がるレイルド王太子殿下をルピティナ公爵令嬢は一喝する。
 レイルド王太子殿下もルピティナ公爵令嬢の“正論”に言葉を失う。
 ルピティナ公爵令嬢はレイルド王太子殿下の“婚約者”だ。
 その“婚約者”が異性と“親密”にしていると、お父様に告げるだけで、リリア子爵令嬢をレイルド王太子殿下から“引き離す”ことなど、ルピティナ公爵令嬢には“容易い”ことなのだ。

「“嫌がらせ”の件はちきんと調査されたほうがよろしいかと。…それと」

 本来ならば婚約破棄をする場ではないのだが、してしまったものは仕方がない。

「わたくしとの婚約を“白紙”に戻して、フィーリィール子爵令嬢と“婚約”なさることですが、子爵令嬢の身分では難しいと思いますが、如何お考えでしょうか?」

 側妃ならば、いずれは王妃になる自分が許せば可能だったかも知れないが、ここまで大事にしてフィーリィール子爵令嬢を養女に迎え入れて、王家の血をひく我が家を敵に回しても良いと判断する、侯爵以上の家柄があるだろうか。

「…まだ公にされておりませんが、リリア嬢は女神様のご加護をいただく“光の聖女”に“覚醒”いたしました」

 …ーえ?
 “光の聖女”に“覚醒”した?

「お兄様!」

 ルピティナ公爵令嬢が動揺で言葉を失ってると、レイルド王太子殿下とよく似た、肩まで長い白銀の髪をポニーテールにして、つり目で猫のような薄紅色の瞳、胸元のポケットに、小粒なパールを散りばめられた、薄紅色の薔薇を飾っている、薄紫色の正装姿男性が、ルピティナ公爵令嬢を庇うように前に立つ。

「学友達に呼ばれ慌てて来てみたら、この騒ぎはなんでしょう。お父様…いえ、国王陛下が内々にアルフィーレート公爵家に“お話”をされるとおっしゃっていたではありませんか。このような公衆の面前で、ルピティナ公爵令嬢に失礼だと思わないのですか」
「…シェラルド」
「シェラルド殿下」

 ルピティナ公爵令嬢とレイルド王太子殿下が男性の名前を呼ぶ。
 今、ルピティナ公爵令嬢を庇っている男性は、レイルド王太子殿下の実弟である、シェラルド第二王子殿下だった。
 ルピティナ公爵令嬢は、自分を庇うシェラルド第二王子殿下を見て違和感を覚えたが、リリア子爵令嬢が“光の聖女”に“覚醒”した“事実”に動揺して、深くは考えられなかった。

「…シェラルド殿下。先程、レイルド王太子殿下がおっしゃっていたことは“事実”でしょうか?」
「…………」
「…フィーリィール子爵令嬢が“光の聖女”に“覚醒”したことは“事実”でしょうか?」
「…ええ。そう、です」

 無言で申し訳なさそうに目を伏せるシェラルド第二王子殿下は、再度のルピティナ公爵令嬢の問いかけを肯定する。
 その答えを確認したルピティナ公爵令嬢は、取り乱したいのを必死に抑え、パーティーに参加している人々へ向き合う。

「………パーティーにお越しくださいました皆様、本日はこのような騒ぎを起こしてしまい、誠に申し訳ございません。わたくしはここで下がらせていただきますが、パーティーはまだまだ続きますので、どうぞお楽しみ下さいませ」

 ルピティナ公爵令嬢はパーティーに参加してる人々に謝罪をして、ドレスの裾を両手で持ち上げ、深々と淑女の礼をしてから会場を退室した。


 人目がある場所では堂々と胸を張って歩いていたルピティナ公爵令嬢は、人目がない…噴水がある庭園まで来ると呆然と立ち尽くした。
 これは王家や、王家に連なる家系の者しか、知らない“事実”だが“光の聖女”に“覚醒”するためには“異性と深い関係”を持たなければいけない。
 つまりレイルド王太子殿下とフィーリィール子爵令嬢は既に“愛し合った仲”なのだ。

「ルピティナ公爵令嬢っ!」

 ルピティナ公爵令嬢が声をする方へ、振り返ると、息を切らしたシェラルド第二王子殿下が走って来ていた。

「殿下、そんなに慌てて如何なさいました?」
「こ、今回のことは…もっ、申し訳ございませんっ」

 シェラルド第二王子殿下は、息を切れ切れにルピティナ公爵令嬢に深く頭を下げる。

「……殿下が謝ることでは」
「いいえ。婚約破棄このような事態を招いたのは、お兄様の側を離れた自分の落ち度です。…それに僕はルピティナが心配で…」

 シェラルド第二王子殿下が幼い頃のように『ルピティナ』と、お互いの身分を気にしていなかった頃の呼び方をする。
 それを聞いてしまったルピティナは、婚約破棄の会場で、ずっと我慢して耐えていた思いが、糸のようにプツンと切れて、銀色に輝く雫が、ルピティナの瞳から溢れだす。

「…ルピティナ、お辛いですよね」
「…シェラルド」
「今、この場に居るのは僕だけですから、思う存分泣いても誰も咎めません」

 シェラルド第二王子殿下はルピティナの身体を力強く抱き締める。
 ルピティナの耳元でカリッとなにかを噛む音が聞こえる。

「ルピティナ」
「シェラルド…」

 幼い頃から、自分に好意を持ってるシェラルド第二王子殿下に甘えてはいけないと、ルピティナは頭の片隅では理解していたが、婚約破棄で傷付いたルピティナはシェラルド第二王子殿下にすがる。
 どうか今だけは己の立場を忘れて、ただのルピティナとして甘えさせて。

「愛しています」
「…ん」

 シェラルド第二王子殿下とルピティナの唇同士が触れる。
 舌が絡まる深いキスになると、シェラルド第二王子殿下の口から、ルピティナの口へ、とろっとする液体が口移しされる。

「安心して、落ち着く薬だよ」

 優しいシェラルド第二王子殿下の言葉に誘われるように、ルピティナはその液体をゆっくり飲み込み、彼女の意識は暗闇へ落ちていく。




 ーーーー




「ん、此処は?」

 ルピティナが目覚めると、見知らぬ部屋のベッドの上で、前ボタンが付いたシンプルな薄紅色のネグリジェを身に纏っていた。

「…誰か…着替えさせたの…かしら……それにこの部屋…見覚えが…ありますわ。…何処だったかしら」

 見知らぬ部屋なのに、見覚えがある、なんともいえない不思議な感覚に苛まれながら、ルピティナはベッドから起き上がる。

「…っ」

 下半身に鈍い痛みが襲い、ルピティナは顔を歪める。
 ルピティナは痛む身体に鞭を打って、部屋中を観察する。
 白磁の壁に、壁に飾られた花畑の絵画、草花のレリーフをあしらったテーブルと椅子、隣の部屋にはお風呂とトイレも完備されている。
 この豪勢な部屋に似合わない“漆黒の檻”に、ルピティナは触れる。

「此処に閉じ込められるのは、わたくしではなかったはず」

 思わず口から出た、意味不明な一人言と、自分が行くことが出来ない“漆黒の檻”の向こう側のドアを見つめる。

「…ゲームでは…ここのスチルがとても綺麗で好きだったわ」

 ゲーム?スキル?なんのことかしら?と、ルピティナは脳裏に浮かんだ聞き慣れない単語に困惑していると、向こう側のドアがゆっくり開き、一人の男性が入ってくる。
 “漆黒の檻”に触れる自身の手と、暗闇の中でも淡く輝く白銀の髪、薄紅色の瞳がルピティナを優しく愛おしく見つめ、その背後には彼が入ってきたドアが見える。
 その『幻惑的』な光景が、何処で見たかも分からない、多彩な一枚絵スチルとかぶる。

「ルピティナ、目覚めたのですね。お加減は如何ですか?身体に痛みなどはありませんか?」
「…シェラルド殿下、なぜ…っ!」

 なぜ此処へ?と、続くはずだった言葉は、急な頭痛で遮られ、ルピティナの脳裏に、不思議な衣服を身に纏っている少女が、長方形の不思議なカラクリを両手に持ってはしゃいでいる。


『あ~んもう、シェラルド様ぁ、恋心を悪役令嬢ルピティナに利用されただけなのにぃ、凹まないでぇ。悪いのは悪役令嬢だよー』
『まさか、シェラルド様がレイルド様からヒロインを略奪して“監禁END”迎えるのぉ!!』


「…この記憶は」

 私の前世の記憶だ。
 そしてこの世界は、前世の私がハマった18禁乙女ゲー『自由と鳥籠の聖女~光と闇の覚醒~』で、目の前に居るシェラルド第二王子殿下は、攻略対象キャラの一人だ。記憶が戻った事で、此処が何処かも理解する。

「ルピティナ?」
「……此処は、シェラルド殿下の…“実のお母様”が居られた“漆黒の檻へや”でしょう。何故此処にわたくしを?」
「………やはり、ルピティナは僕が王妃殿下の実子ではなく、お兄様と異母兄弟だと気付いていたんだね」
「…………」

 わたくしは前世の記憶を思い出したからこそ、シェラルド第二王子殿下が国王陛下と、白銀の髪と薄紅色の瞳を持つ、見目麗しい異国の歌姫との間に生まれたお子だと知っている。
 歌姫が“異国人である”理由だけで、臣下達に反対され、陛下の“側妃”に迎え入れることが出来ず、なにがなんでも歌姫を手に入れたかった陛下が“漆黒の檻ここ”へ歌姫を閉じ込めて、シェラルド第二王子殿下が生まれ、極秘に王妃殿下の“実子”として、レイルド王太子殿下を次期国王へ、立太子させる“条件”で、シェラルド第二王子殿下を受け入れた。

 昔のルピティナ前世を忘れていた頃は、シェラルド第二王子殿下の複雑な生い立ちを知らず、わたくしとレイルド王太子殿下が7才、シェラルド第二王子殿下が6才の時にはじめて出会った時、

『あら、にてない“きょうだい”ですわね』
『『…………』』

 青みが入った銀色のサラサラな髪と、つり目で猫のような金色の瞳を持つレイルド王太子殿下。
 白銀の髪と、つり目で猫のような薄紅色の瞳を持つシェラルド第二王子殿下。
 “つり目”以外は似ていない“二人”を見て“純粋に思った”事をルピティナは口走り、二人がどうして複雑そうな顔をするのが分からなかった。

はじめて出会ったあの時から、僕の事を“理解”して受け入れてくれるのは君しかいないと、君だけを想い続けた…」
「…っ」

 ルピティナは自分を見つめる、シェラルド第二王子殿下の“歪んだ瞳”を見て、身震いする。

 “ゲーム”のヒロインリリアルートのシェラルド第二王子殿下のハッピーエンドと、バットエンドでもそうだった。
 ヒロインリリアに「愛している」と囁くけど、心の中では悪役令嬢ルピティナへの想いで溢れていて、攻略したプレイヤーが『お前、ルピティナが一番だよな?』とモヤモヤさせて、シェラルド第二王子殿下ルートでは国外追放された悪役令嬢ルピティナの冤罪が晴れて、アルフォルト魔法王国に戻って来れるが、悪役令嬢ルピティナは王妃になれず、誰とも結婚も出来ず王家と関わりが深い修道院でひっそり暮らして、たまにシェラルド第二王子殿下が会いに訪れる。

「……何故此処にわたくしを?」

 ルピティナは同じ問いかけを繰り返す。
 シェラルド第二王子殿下は5枚の用紙の束をルピティナに差し出す。

(この用紙は)
「……隣国の王族に侯爵、辺境伯爵、大富豪の後妻…」
「国王陛下が厳選したルピティナの“新たな婚約候補”の綴り書だよ」
「最後は“ラファエル伯爵嫡男、次期騎士候補生”」

 “ラファエル伯爵嫡男、次期騎士候補生”の綴り書を見たルピティナの心臓はどっくんと高鳴る。

「陛下は、お兄様とフィーリール子爵令嬢の事をアルフィーレート宰相閣下に“お話”される際に、この“5人の婚約候補”の中から、ルピティナに“次の婚約者”を選ばせるとおっしゃっていた…」
「シェラルド殿下は“候補”に入っておられない」
「そう、僕は“候補”に入っていない。フィーリール子爵令嬢が“光の聖女”に“覚醒”したお陰で、お兄様の“不貞”はうやむやになってしまったからね。その弟である僕を“候補”に入れることは閣下の“怒り”を買うだろう」
「………お父様は“最愛の人”との息子である、異母弟おとうと以外は興味ないから、わたくしの事で怒らないわ」
「そうであっても、臣下や民達はそう思わない」

 シェラルド第二王子殿下は、ルピティナが持っている婚約者候補の綴り書の1枚を取り出してルピティナに見せる。

「君は必ず“初恋”の“ラファエル伯爵嫡男”を選ぶ」
「…っ!」

 悪役令嬢ルピティナの“初恋”で『自由と鳥籠の聖女~光と闇の覚醒~』の攻略対象の一人“ルビア・ラファエル”
 彼も悪役令嬢ルピティナが“初恋”で未だに“婚約者”も居ない。

「お父様がおっしゃったんだ」
「…なんと?」

 ルピティナは“ゲーム”の“知識”があるからこそ、嫌な予感がしたが冷静に問いかける。

「『公では“妻”に迎え入れられずとも、別の方法で手に入れれば良い』と、お兄様と“作戦”を考えて、ルピティナを“漆黒の檻ここ”へ拐ってきた」
「その“作戦”は…まさか、あの“婚約破棄”はレイルド殿下と組むでわざと起こしたのですかっ!?」
「あの卒業パーティーには国の要職に就く者、辺境伯爵、近衛騎士、商会の重鎮、民も参加していた。お兄様の“心変わり”は学園の生徒も周知の事実でもあった 。そんな中で行われた“婚約破棄”」
「…………」
「“婚約破棄”の場で、気丈に振る舞っていた君も“婚約者”に“裏切られた”だけではなく、公の場で“晒し者”にされて“傷つき”会場を去った後は“アルフィーレート公爵家”にも戻らず“姿を消す”」
「…わたくしに“無関心”なお父様でも、わたくしに“利用価値”が残っていれば、流石に探されますわ」
「その“利用価値”がなくなっていればどうかな」
「それはどういう意味でしょう?」
「お兄様と君は“お互いに浮気”をしていた」

 シェラルド第二王子殿下はそう言うと、懐からシェラルド第二王子殿下が卒業パーティーで身に付けていた“小粒なパールを散りばめられた薄紅色の薔薇”を取り出した。

「…これは…わたくしがパーティーでしていた“薔薇の髪飾り”と一緒」
「“婚約者”同士の“正装とドレス”が合わず、その弟である僕と“同じ薔薇”を身に付けていた。…パーティーに参加していた大勢の者が見ている。お互いに“浮気”をしていたという“噂”は一気に広まるだろう」
「…なるほど。お互いに“浮気”をしていれば、わたくしは“被害者”ではない。お互い様の“傷物”のわたくしと新たに“婚約”する“男性”も現れないでしょう。お家の為の“政略結婚”の価値もなくなれば、お父様にとって“利用価値”がない、というわけですね」
「それもあるけれど…ルピティナは…もう僕から逃げれない」

 シェラルド第二王子殿下はルピティナの薄紅色のネグリジェの前ボタンを開けていく。

「なっ、何をなさるの!!」
「ほら。ルピティナ、これを見て」

 ルピティナの胸に“婚約破棄”の時には“何もなかった”胸元に『黒薔薇』が咲き誇っていた。

「これは“闇の聖女”の“黒薔薇”!何故、わたくしに…」

 ルピティナは自分の下半身が痛む、理由に思い当たる。

「まさか、この身体の痛みは…わたくしはもう…シェラルド殿下と…」
「ごめんね。本当はルピティナが目覚めるまで待つつもりだったけど、二日も起きなくて、我慢が出来なかったんだ」
「…んん、あっ」

 シェラルド第二王子殿下はルピティナの唇に口付けてから、胸元の“黒薔薇”にも口付け、赤い痕を幾つも付けていく。

「ひ、酷いですわ」
「…ルピティナ愛しているよ」

 ルピティナの非難は、シェラルド第二王子殿下の耳に届いていないのか、彼はとても“幸福”な表情をして、ルピティナのネグリジェを脱がしていく。



 ーーーー



 本日の“漆黒の檻愛の檻”はいつもと様子が違った。
 柔らかい黒のチュールやレースで華やかに飾られ、ダイヤやパールが部屋中に揺れている。

「あっ、シェラルド殿下」
「…っ、くっ」

 シェラルド第二王子殿下は黒のタキシードを身に纏い、豪華な黒いソファーに腰掛ける。
 シェラルド第二王子殿下の上に、ルピティナが向かい合うように座り、シェラルド第二王子殿下の身体をルピティナの両足が挟んで、小刻みに揺れている。
 ルピティナは裾に黒薔薇の刺繍が施されている、白いベールを頭から被り、胸元が空いて、上半身に小粒なパールが散りばめられた薄紅色の薔薇が二つ飾られた、黒いウェディングドレスを身に纏っている。

「ルピティナ、やっとこの日を迎えられたね」
「あっ、んん…あっ!」

 お互いの衣装に乱れはなく、シェラルド第二王子殿下が、ルピティナの腰を掴んで上下に動くと、ルピティナの身体を刺激する。

「くっ、そろそろ」
「いや、やっ…ああ!」

 ルピティナはシェラルド第二王子殿下と繋がった下半身から、自分の身体の中に“愛情”を注がれたのを感じる。

「ん、あつい」

 とろんとした瞳のルピティナはシェラルド第二王子殿下に抱き付く。

「「はぁ、はぁ」」

 お互いの息が“漆黒の檻愛の檻”に充満するが、ルピティナは未だに自分の中で主張しているシェラルド第二王子殿下の存在に違和感を覚える。

「あの、終わりましたが」
「ん。今日は僕達の“結婚式”だし、もう少し付き合って」
「えっ、待って!昨日も散々致しっ!!」

 ルピティナの抗議を無視して、シェラルド第二王子殿下はソファーにルピティナを押し倒し動き出す。

「まっ、あっあっああ!」
「ルピティナ、君だけを永遠に愛してる」
「わっ、わたくしも、愛しておりますっ!」

 “漆黒の檻愛の檻”で、参列者が居ない二人だけの“結婚式”黒いウェディングドレスは『貴方以外の色に染まりません』を意味する。
 最初はシェラルド第二王子殿下を“拒絶”していたルピティナは、現在いまではシェラルド第二王子殿下の“色”に染まりきっていた。 

 ーENDー



 ーーーー


 ーおまけー

 ※レイルド王太子殿下×ヒロインリリア
 ※最後にシェラルド第二王子殿下×ルピティナ
 ※睡姦
 ※エロシーン覗き見


 “婚約破棄”が行われる卒業パーティーの前日。
 リリアはレイルド王太子殿下に呼ばれて、王宮に訪れていた。

「えっ、卒業パーティーで“婚約破棄”を!?」
「そう。明日、ルピティナを“断罪”する予定だ」
「お待ち下さい!私への“嫌がらせ”の“犯人”がルピティナ様だと決まった訳ではありません!考え直して頂けませんか。お願い致します」

 既にレイルド王太子殿下の“素”を見ている、リリアは普段の仕草と言葉使いが違っても驚きはしないが、明日の卒業パーティーで、ルピティナ公爵令嬢を公衆の面前で“婚約破棄”をすると聞いて驚愕し、レイルド王太子殿下をたしなめる。

「リリアは“婚約破棄”には反対?」
「………はい」

 リリアは自分への“嫌がらせの犯人が不明”なのと、ルピティナ公爵令嬢はレイルド王太子殿下の“婚約者”であり、レイルド王太子殿下と“関係”をもってしまった、自分に“非”があると理解していた。

(…どうして、あの時、レイルド殿下を“拒み”きれなかったんだろう)
「…………」

 “罪悪感”で微かに震えながら青ざめるリリアを、レイルド王太子殿下は意味深に見つめる。
 レイルド王太子殿下の掌が、優しくリリアの頬に触れてから顎くいをして、自分とリリアの目線を合わせる。

「リリア、俺の目を見て」
「レ、レイ…ルド…殿下…」

 普段は金色のレイルド王太子殿下の瞳が、赤色に変化する。半月前、二人が“深い仲”になった日、レイルド王太子に求められて、リリアが“拒んでいた”時に見た瞳と“同じ”だった。

「〈リリア、君は卒業パーティーの開始から終了まで、何があっても“何も言わない”こと。いいね〉」
「かしこ…まり…ました…」

 リリアはレイルド王太子殿下の言葉を受け入れると、身体の力をなくしたように眠りにつき、レイルド王太子殿下はリリアを優しく抱き止める。

「シェラルド、そこに居るんだろ。入れ」
「お兄様、何時から僕に気付いてましたか?」
「最初からだ」

 部屋の壁が開き、シェラルド第二王子殿下がレイルド王太子殿下の部屋へ入る。シェラルド第二王子殿下は“隠し通路”から、二人の様子を伺っていた。

「明日の“準備”は終えたようですね」

 シェラルド第二王子殿下がレイルド王太子殿下の腕の中で眠るリリアを見つめながら呟く。

「ああ」
「僕にも“洗脳”の力があれば……」

 “洗脳それ”があれば、こんな回りくどい真似をせず、ルピティナを手に入れられるのにと、シェラルド第二王子殿下はそう思わずにいられない。

「“洗脳”は一世代に一人しか、アルフォルト王家に現れない“魔法ちから”だしな」

 レイルド王太子殿下はリリアの桜色のワンピースを脱がしていく。

「シェラルド、お前は何時まで居るつもりだ」
「……“見る”だけなら、構わないでしょう」
「まぁ、構わないが…っ」

 レイルド王太子殿下は、眠っているリリアの胸に咲き誇る“白薔薇”に口付ける。
 シェラルド第二王子殿下は豪華な白い椅子に、足を組んで座り、レイルド王太子殿下とリリアが“愛し合う”のを眺める。

(お父様とお母様も、よくこうして“愛し合っていた”)

 シェラルド第二王子殿下は、自分がまだ“漆黒の檻愛の檻”にいた頃、国王陛下と“実母”が“愛し合っていた”のを、ぼんやり眺めていた。
 今夜もあの二人は別の“愛の檻”で“愛し合っている”だろう。
 レイルド王太子殿下はシェラルド第二王子殿下の幼少期の頃からの“歪み”を気付いているが、それを“指摘”しない。何故なら自分も“歪んでいる”から。



 ルピティナがシェラルド第二王子殿下によって“漆黒の檻愛の檻”に囚われて数日が過ぎた。

「やっ、あっ…ああっ…シェ…シェラルド…殿下ぁ!」
「はぁ、くっ、ルピティナぁ」

 “今夜”はお風呂で、湯船に浸かりながら“愛し合う”シェラルド第二王子殿下とルピティナの姿を、遠くのものを見ることが出来る“透視”の“魔法”が宿っている水晶で、上半身裸のレイルド王太子殿下は眺めている。
 隣には何も身に付けていない、リリアが力尽きて眠っている。

「……いつか、同じ部屋で…一緒に出来たらいいのにな」

 
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