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行方不明王女とレリルール学園

『魔力(マナ)の土地』と脱線しまくるアモル先生

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 レリルール学園、アウラとルシオラが授業を受けている教室。
 アモル先生は名簿と生徒を照らし合わせながら、

「えーと……では、欠伸あくびをしてるカビラエルさん。 『魔力マナの大地』は、どういう特徴がある土地でしょうか?」
「えっ、俺?」
「ええ、授業中ですから寝てはダメですよ」
「先生も遅刻したじゃんかー」
「ぐっ、それを言われると……僕も次からは気を付けますから、説明をお願いします」
「しゃーねぇなぁ。 『魔力マナの大地』は魔法属性を宿した特別な土地で、このレリルール学園がある王都も、現在発見されている『魔力マナの大地』のひとつです」
「そうですね。 『魔力マナの大地』は魔法属性である炎、水、風、大地つち、闇、光、雷、氷のいずれかの属性を宿しています」

 アモル先生はカツカツと黒板に説明図を書きながら、

「このレリルール王都の『魔力マナの大地』の属性はなんでしょうか? 分かる方はいますか?」
「はいはーい! の『魔力マナの大地』です」
「はい、正解です。 レリルール王都の土地は『魔力マナの大地』の中で 最も稀有な全属性の魔法属性が満ちる土地です。 ですから全属性の『魔力の蝶々マナ・パリピオー』が見えますね」

 活発そうな女生徒がアモル先生の質問に答える。

「……授業から脱線してしまいますが、レリルール王国を建国した初代国王陛下は、今から5000年前にあったで住みかを追われた魔法使い達のリーダーだったと言われてます」
「異能狩りって『』のことですか?」
「レリルール王国や魔法使い、魔女達には『魔女狩り』と知られてますね。 実際に異能狩りがあった、ここから北北東方角にあったルイン亡国の人々には『異能狩り』と知られてます」
「どうしてですかー?」
「実際に異能狩りを執行した人々、ルイン亡国……いえ、当時はルノマイン大帝国でしょうか。 彼らの目的は魔法だけではなく、亜人種に分類されるエルフの自然を操る能力ちからや、獣人の高い身体能力も『狩り』の対象でした……」
「えっ。 エルフや獣人って実在した種族だったんですか、空想物語ファンタジーの中だけではなく……」
「……ええ、異種族を研究している研究者達には実際した種族だと言われています。 ただ、長寿のエルフは異能狩り当時の記憶が根強く、人間ひとが入れない異空間結界の中で暮らして人間の前には姿を現さなくなり、獣人は……」
「獣人は?」
「絶滅したと。 ドラゴニュートやドワーフが獣人の末裔じゃないかと言う研究者もおられますが、真実は分かりません……」
「「「「…………」」」」
「この異能狩りも大賢者プルフィティアがルノマイン大帝国を滅ぼし、新たにルイン亡国を建国したことによって終息しました……」

 アモル先生の話と、質問をしていた好奇心旺盛な生徒達の話が終わる。
 生徒達が数多くある種族のひとつと、一国が滅びなければ終わらなかった『魔女狩り』に言葉をなくす。

「あー、すみません。 重い空気になってしまいましたね。 授業の話に戻りますが、レリルール王国国内には王都以外にも『魔力マナの大地』の土地があります。 ……アウラさん『ヘルバの森』の泉以外で答えていただけますか?」

 アウラは具合が悪そうなルシオラをチラッと気遣うように見て、ヘルバの泉がダメならば……と口を開く。

「はい。ええと……風属性の『魔力マナの大地』で風の精霊王シルフが守護する、竜王バハムートが眠る『天空のアスーレ城』……です……」
「ええ、 『天空のアスーレ城』は……ああ、授業終了のチャイムですね。 あんまり進まなくてすみません。 この続きは次回で挽回しますね」

 初日から遅刻して、脱線しまくったアモル先生は申し訳なさそうに頭をたれる。

「アモル先生またねー」
「じゃあなぁ」

 生徒達は教科書やノートをまとめて、挨拶をして教室を後にする。
 アモル先生は生徒達を見送ったあとに、アウラとルシオラの側へ歩いてくる。

「アウラさん。 ルシオラさんの具合はどうですか? ずっと悪そうにしてましたが……」
「……大丈夫……です。 ご心配おかけしました」
「ルシオラ……」

 アウラが本当に大丈夫? と目線で訴える。

「うん、大丈夫だよ。 アウラ。 だいぶ落ち着いたよ……」
「……ルシオラさん、まだ顔色が悪いですよ」
「……ルシ、魔法研究の授業まで時間があるから中庭で休もう。 アモル先生また」
「……ええ、また次の授業で。 ルシオラさん。 アウラさん……」

 アウラはルシオラにぴったりと寄り添い手を握り、アモル先生に挨拶して歩いて行く。
 アモル先生は手を振り、穏やかに微笑みながら二人を見送る。



 ーーーー



 地理担当、マリナ・アルゼニアの研究室。
 アウラとルシオラと別れたアモル先生は、カーテンを締め切って薄暗いマリナ先生の研究室の窓際に腰掛け、微かに開いたカーテンの隙間から中庭の様子を伺う。
 中庭では木漏れ日が降り注ぐ大木の下で、アウラが膝枕してルシオラを休ませている。

ルシオラあいつ。 魔法耐性があるのか……。 無効中は体調不良なると聞くが、本当のようだな……)

 アウラから愛情を向けられるルシオラは忌々しく見つめ一冊の分厚い本をローブの奥、懐から取り出す。
 その分厚い本の表紙は太陽と杖、裏表紙は星と月がペアになるようにデザインされた赤紫色の新品同様の本だ。
 アモル先生は最初のページを開き、綴られた文字に目を通す。


 ー……へー

 君の真名の文字はこれで合っているだろうか、異国の文字は難しく、間違っていたらすまない。

(漢字が微妙にちげぇし……)

 この【預言書】を見ることが出来、文字すらも読める君は、私同様かそれ以上の魔力の持ち主なのだろう。
 そしてを持っている。 そのせいで生まれながら苦労も絶えなかっただろう。
 君が生きる時代に私と彼女は生きてはいない。 私達の子孫も君が【預言書】を見つけた後に絶えるだろう。
 血筋が絶たれることより君と会えないことだけが残念だ。

 会ったことすらない君に頼むのは筋違いだが、ふたつだけ頼みがある、この【預言書】に綴られた未来は決して変わらない。 それは私自信がよく知っている。
 君には、この結末と、私の親友と弟の子孫の行く末を見守って欲しいのと、哀れな小鳥を救って欲しい。

 その結末の先で、君は、君自信が望んでいたものを手に入れられるだろう。

 ープルフィティアよりー


(俺が見つけることも預言していたんだな……)

 アモル先生は本を閉じて表紙の太陽と杖を手でなぞり見つめる。
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