行方不明王女ちゃんと魔法使いくん~一緒に育った義兄妹の恋物語~

此花チリエージョ

文字の大きさ
上 下
16 / 28
行方不明王女とレリルール学園

妖精の大宴会ボックス

しおりを挟む
 パタパタと羽音が聞こえる。

「ん」

 アウラは羽音に誘われるように重い瞳をあける。
 淡い紫苑色の瞳にイラストのような瑠璃色の蝙蝠こうもりが映る。

「ルシオラからっ」

 アウラがガバッとベットから起き上がり、瑠璃色の蝙蝠こうもりに触れると【蝙蝠こうもり手紙】の便箋がアウラの手元へ滑り落ちる。


 ーアウラへー

 おはよう。
 今日で個別授業最終日だね。
 大広間で待ってる。

 ールシオラよりー


 いつも通り短文の手紙を読んだアウラは急いで未記入の【蝙蝠こうもり手紙】の便箋を持つとペンを走らせる。


 ールシオラへー

 ルシオラおはよう。
 とてもいい天気だから、今日の昼食は購買でランチボックスを買って外の湖でランチしよう。またあとでね。

 ーアウラよりー


 アウラがそう記入し終わると【蝙蝠こうもり手紙】はイラストのような漆黒色の蝙蝠こうもりに変身してパタパタと男子寮のほうへ飛んで行く。
 その姿を確認したアウラは青色のストールを頭から被り、窓をガチャっと音をたてて開けると優しい朝日が部屋の中へ差し込む。

「ん~」

 アウラは背伸びをして、準備をするためにシャワールームへ急ぐ。


 ーーーー


 男子寮。
 ルシオラとフィリオの部屋に漆黒色の蝙蝠こうもりが真っ白なシャツと黒いスラックスに着替え終えて、共同スペースでフィリオと一緒に紅茶を飲んでいるルシオラの元へ飛んで来る。

「アウラからだ」

 ルシオラがそう呟くと漆黒色の蝙蝠こうもりに触れて、アウラからの手紙を読む。

(手紙送ったのさっきなのに返信早いな)
「アウラなんて?」

 フィリオはそう思いつつも手紙の内容は気になり紅茶を一口飲んでからルシオラに問いかける。

「今日の昼食、湖で一緒に食べようって」
「購買のランチボックス買うなら、妖精の大宴会ボックスがおすすめだよ。
 サンドイッチだけじゃなく、唐揚げやポテトサラダにおにぎりも入っているから」

 午後の授業中にお腹減らないよと、フィリオはそう付け足すが、妖精の大宴会ボックスは4人分の量があった。

(そんなに食べれない)
「け、結構食べるんだね」
「普通じゃない?」
(この身体のどこに吸収されてるんだ)

 ルシオラはフィリオの細い身体と食欲を比べると不思議で仕方なかった。


 ーーーー


 チチチッ

 アウラとルシオラは午前中のロイザ学園長の授業を終えると、学園の敷地内にある人気が少ない湖の芝生にシートを広げ、水筒と購買で買った妖精のおにぎりボックス(1人分)と妖精のサンドイッチボックス(1人分)を置いてる。

「はい。今日はホウジチャだよ」
「ありがとう」

 アウラがプラスチックのコップにホウジチャを注ぐとルシオラに渡す。自身のコップにも注ぐと一口飲んでから湖を眺める。光に照らされて湖面が輝く。

「よくここ見つけたよね」
「フィリアに教えてもらったの。デー…、素敵な場所だって!」
「そうなんだ」

 ルシオラはそう呟くとシャケおにぎりを頬張る。

 この湖は学園の敷地内にあるが、校舎から離れていて移動も大変なので、恋人と2人の時間を楽しみたいカップル以外は誰も寄り付かない。

「食堂のキッチンを借りて作ったの」

 昼食を食べ終わったあと、アウラはゴマとチョコチップの2種類のクッキーをシートの上に置く。

「美味しい!」

 ルシオラはカリッとゴマクッキーをアウラはチョコチップクッキーをかじる。

 午後の授業までのんびりと静かに過ごしていると、

「カァ!カァァ‼︎カァーーーー‼︎‼︎」

 上空から聞き覚えがある鳴き声が響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

ある国の王の後悔

黒木メイ
恋愛
ある国の王は後悔していた。 私は彼女を最後まで信じきれなかった。私は彼女を守れなかった。 小説家になろうに過去(2018)投稿した短編。 カクヨムにも掲載中。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

新婚早々、愛人紹介って何事ですか?

ネコ
恋愛
貴方の妻は私なのに、初夜の場で見知らぬ美女を伴い「彼女も大事な人だ」と堂々宣言する夫。 家名のため黙って耐えてきたけれど、嘲笑う彼らを見て気がついた。 「結婚を続ける価値、どこにもないわ」 一瞬にしてすべてがどうでもよくなる。 はいはい、どうぞご自由に。私は出て行きますから。 けれど捨てられたはずの私が、誰よりも高い地位の殿方たちから注目を集めることになるなんて。 笑顔で見返してあげますわ、卑劣な夫も愛人も、私を踏みつけたすべての者たちを。

処理中です...