行方不明王女ちゃんと魔法使いくん~一緒に育った義兄妹の恋物語~

此花チリエージョ

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王女の行方

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 ー15年間ー

 時刻は人々が寝静まった深夜1時過ぎ、レリルール王国…王宮の東側、建っている漆黒色の離宮『ニゲル宮』から紅蓮の炎が燃え広がっていた。

「第五王妃様とアウローラ王女様は無事なのか⁉︎」
「そ…それが…」

 たった今現場に駆けつけて来た兵士が先に着いていた兵士を凄い勢いで掴んで確認する。掴まれた兵士の表情かおは絶望でおおわれており、否定の意味で顔を横に震えながら振った。

「そんな!まだ中にいるのか‼︎」

「なんとしてでも第五王妃様と王女様をお助けしろ‼︎」

 指揮官の声が周りに響く。

『炎から身を守りたまえ〈フランマの加護•トゥーテーラ〉!』

 魔法使いが魔法詠唱すると、兵士の身体全体がポゥと淡い薄紅色の光が包み、身体が炎で傷つかないよう、炎からの影響を減らす為に〈耐熱魔法〉をかけた。

『炎から身を守る盾となれ〈アクアの盾・スクートゥム〉‼︎』

 魔女が先程と違う魔法を詠唱すると、今度は兵士の周りに丸い水の様な膜が〈スクートゥム〉出来上がった。

 兵士達にその身を守りサポートする魔法をかけてる魔法使いと別に〈水魔法〉に長けた魔法使い達が集まり。

『燃え盛る炎を鎮めよ〈アクア〉!』

 燃え上がる『ニゲル宮』の真上にたっぷんと巨大な円状の水が出現して、ざっぱんと炎の上に降り注ぐ。

『恵の水よ炎に降りそそいで〈インベル〉‼︎』

 今度はもくもくと雲が幾つも出現してザーッと、大雨が降り始め、次々と〈水魔法〉を詠唱して炎の勢いをおさめようと必死だ。

(おかしい…)

 指揮官は違和感を感じていた。

(ただの炎がここまでの威力なわけがない!魔法の炎だ‼︎)

 魔法の炎ならば、現在いまここに居る、たった7人の魔法使いや魔女達では無理がある人員を要請しなければ、指揮官は近くの兵士に指示をとばし、王宮へ急がした。


 ーーー


「応援はまだか⁉︎」

 指揮官は応援要請に行かせた兵士が戻ると切羽詰まったように叫んだ。

「お…応援は…来れません」
「何故だ⁉︎」
「第四王妃様の出産に立ちあってます!」
「なんだとっ‼︎」

 レリルール王家の人間は『たったひとつの魔法しか使えない』代わりに膨大な魔力を持っている。

 出産時は赤子から王宮や街を吹き飛ばす程の魔力が暴走する為、その魔力を抑える必要があり第四王妃様の離宮、金糸雀カナリア色の『フラーウム宮』の周りと出産の場は最低でも10人は必要だが、今はたった7人の魔法使いと魔女達の魔力ちからで暴走を抑えていた。

 ただでさえ王宮お抱えの魔法使いと魔女達は14人しかいない『ニゲル宮』と『フラーウム宮』どちらにとっても最悪なタイミングで魔法使い人手不足だった。

「消化を急げ‼︎」

 第五王妃様は魔女だった。

 国王陛下が見初めたのと、彼女の魔力の多さから王妃に迎えられた女性。
 その魔力で第五王妃様我が身と王女を炎から守っていると信じて兵士や魔法使いは消化を急いだ。



 周りが明るくなり始めた頃、やっと『ニゲル宮』から炎が消えた。
 焼け跡から助けに入った兵士、離宮のメイドや執事、第五王妃様の遺体が発見されたが、まだ1歳の『アウローラ王女』だけ発見されず、行方不明のままだった。




 ーーーー




 同日、王宮から東の果てに位置する、木々や貴重な薬草が生息してる『ヘルバの森』の奥地の小さな庵、そこに大籠を背負った魔法で作られた漆黒の巨大なカラスが舞い降りた。

「おやおや、なんだい」

 庵の縁側に座っていた、白髪が混じってる瑠璃色のボサボサな髪と瞳の老婆がのそのそと立ち上がり巨大なカラスの背負っている大籠を抱きかがえて中を覗くと、パリンと大籠に守るようにはられていた、水の膜が〈アクアの盾•スクートゥム〉が解けたと同時に泣き声が響く。

 中に漆黒色の髪と淡い紫苑色の瞳を持つ、丸い小顔の左側に痛々しい火傷がある、まだ1才の赤ん坊と見覚えがある封蝋が押された手紙が入っていた。

「これは………なるほどのぉ」
「お母様?どうされましたか?」

 手紙を読んで全てを悟った老婆に、庵の奥から老婆と同じ瑠璃色の髪と瞳を持つ女性が1才の我が子を抱えながら、母に声をかける。

「この子はもしかして」

 女性は母が腕に抱える赤ん坊の瞳、レリルール王家の血が流れている証、淡い紫苑色の瞳を見てこの子が誰の子か悟り、火傷の上に手をかざす。

『この子の火傷キズを癒して〈回復ヒール〉』

 キラキラと輝くエメラルドグリーンの光が火傷を中心に広がる。

 女性は切り傷や火傷など、あらゆる怪我を一瞬で治す〈回復魔法〉を唱えたが、火傷が癒える事はなかった。

「どうして⁇」
「無駄だよ。魔法による火傷で時間がち過ぎてる」
「そんなっ!」

 普通の傷や火傷ならば治ったが、魔法によって受けた傷や火傷は直ぐに〈回復魔法〉をかけなかれば治らないうえに傷痕が一生残ってしまう。

 この子の母もどんなに火傷を癒したかっただろう、治療より逃す事を優先させなくてはならない程、切羽詰まった状況だったのは想像出来る。

「お母様、どうにかなりませんか⁉︎」

 女性は薬草や塗り薬、包帯などが入った木製の箱を持って来て、赤ん坊を手当てする母に問いかけた。

「わしでも無理じゃよ。お前もよく分かっておろう」
「………」

 女性の無言は肯定だった。

「ごめんね」

 女性は申し訳なさそうに赤ん坊に謝る。
 老婆はそんな娘と赤ん坊を悲しそうに見つめ、自分が読んでいた手紙を差し出した。

「カエルラ、お前宛の手紙だよ」
から!」

 カエルラと呼ばれた女性はすぐ手紙のを理解して、母から手紙を受け取り読み始めた。


 ーー

 親愛なる友、カエルラ•アニムスへ。

 最後の手紙が、こんな手紙でごめんなさい。
 時間がないので用件のみ伝えます。

 王宮の誰かが私達、母娘を亡き者にしようと『ニゲル宮』に火を放ちました。
 必死に消化活動が行われておりますが、魔法の炎で助かる見込みはありません、私が出来る事は我が子を逃がすことだけ…。

 王宮の人間は信用出来ません、どうか私と陛下の大事な娘、アウローラ王女を貴女の娘として、で育てて欲しいの。

 最後に貴女と大薬師様、ルシオラ君に会いたかった。

 貴女の友、サラ•ツクモ•レリルールより。

 ーー


 急いで書いた為か文字は凄く乱れていた。

「そん…な。…サラぁ」

 カエルラは我が子をぎゅうと抱き締めて、親友の急過ぎる死に泣き崩れた。
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