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僕と吉野さんと美桜さん。

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 僕は日暮中学校の図書室に来ていた。

「すみません。
  卒業アルバム見たいんですけど、どこにありますか?」
「卒業アルバムなら、1ーD本棚の奥にあります」
「ありがとうございます」

 僕は司書のお姉さんにお礼を言うと、案内された本棚にむけて歩き出す。

 卒業式を来週に控えた僕は日暮中学校を卒業してしまう前に?を調べるとこにした。
 日暮中学校図書室ここなら十数年分の卒業アルバムを在校生なら見えたはずだと、昨日思い出したからだ。

「ここだ」

 本棚に卒業アルバムが綺麗に陳列されている。
 卒業アルバムを読む生徒は誰も居ないので、古いのは日光で色が薄くなっているが、破れたりはしてなかった。

 僕は卒業アルバムの背表紙を人差し指でなぞりながら、目的の年号を探す。
 3年前に吉野さんを見かけたから、この辺かな?と、あたりをつけて去年と一昨年、3年前の卒業アルバムを本棚から取り出す。

 僕は近くのテーブルに卒業アルバムを置いて、椅子を引いて座ると、先ずは3年前の卒業アルバムをパラッと開いた。

「あ!」

 まさか1冊目で当たりを引くとは思ってなくて僕は大声を出してしまい、目が合った司書のお姉さんに人差し指を口にあてて、

「静かに」

 と、声を出さずに口が動いていた。

「すみません」

 僕も声を出さずに口の動きだけで謝罪したあと、卒業アルバムの生徒一覧のページに視線を戻す。

 吉野さんとそっくりな少女、名前を神谷かみや美桜みおさん。

 かみや、あれ神谷?ってどこがで聞いたことがある。
 確か僕が日暮中学校に入学したばかりの頃の噂で、3年生の神谷先輩のお姉さんが行方不明って言われていた。

 僕は神谷先輩と面識がないので吉野さんと似ているかは分からないけど、もしかして姉弟かもしれないと思い一昨年の卒業アルバムの生徒一覧のページを急いで開いた。

「似てる」

 神谷かみやわたる、吉野さんと似た少年が写っていた。
 僕は一昨年と3年前の卒業アルバムを手に持ったまま、図書室のパソコンへ向かう。

 パソコンのスイッチをいれると、僕は辺りを見渡す。このパソコンはインターネットに接続されているが、生徒は利用を禁止されている。

 誰も居ないことを確認してから僕はインターネットの検索ページをひらき「神谷美桜」「行方不明」「3年前」と入力して、検索すると1件の記事がヒットした。

「日暮中学校女生徒行方不明」をクリックして記事のページをひらく。


 XX年3月9日、夕方22時過ぎに日暮警察に娘が帰らないとご両親から通報がありました。
 日暮警察の調べによると20時頃にXXX交差点で友人と別れて、XXコンビニの防犯カメラに写って以降の消息は不明。

 翌日に中学校の卒業式を控えていたことと、高校も志望校を合格しており、4月からの入学式を楽しみにしていたこともあり、自ら行方不明になる理由はないこと。
 なお日暮警察にストーカー被害の届出もされており、関連性を調査中。


 僕が吉野さんを見かけるようになった正確な日付はXX年3月10日からだ、時期も丁度合っている、吉野さんイコール美桜さんの可能性が高いと判断した僕は記事をプリントアウトする。

 トントンとプリントアウトした用紙をまとめ、卒業式アルバムの裏表紙をひらくと、半分にカットされた封筒が貼られており、中に貸し出しカードが入っている。

 僕は3年前と一昨年の卒業アルバムの貸し出しカードに自分の名前を書くと、入り口横にあるカウンター中に居る司書のお姉さんに、2枚の貸し出しカードを差し出す。

 お姉さんは思い切り「えっ!?」と、驚いた顔をしていたが、貸し出し手続きをしてくれた。

 僕は卒業アルバム2冊とプリントアウトした用紙を鞄の中に乱暴に入れると、中学校の外へ、吉野さんが待つ桜の木の元へ駆けていった。



ーーーー



 僕が桜の木の元へ行くと、吉野さんは空を見上げてたたずんでいた。

「吉野さん!」
「和人くん!」

 僕が名前を呼ぶと、吉野さんもパアッと笑顔で振り向く。

「今日は遅かったね。
 どうしたの?」
「今日は中学校の図書館に寄っていたんだ」
「なにか借りたの?」
「うん。これなんだけど」

 僕は鞄の中からが写っている卒業アルバムを取り出すと、生徒一覧のページをひらくと吉野さんに見せる。

「このひと吉野さんじゃない?」

 僕は神谷美桜さんの写真を指差しながら、吉野さんに尋ねる。
 吉野さんは僕が指差す写真をじっと見つめると、

「この神谷美桜ひとが私に似てるの?」
「うん、すっごく似てる。
 何か思い出さない?」
「ごめんなさい。
 思い出せない…」
「大丈夫だよ。
 こっちのひとは?」

 申し訳なさそうな表情の吉野さんを元気付けるように笑顔で一昨年の卒業アルバムの先輩の写真を見せる。

「なにか思い出せる?」
「このひとは?」
「吉野さん。…美桜さんの弟さんだと思う」
「……弟」

 吉野さんは小声でつぶやくと神谷渉の写真を静かに見つめたが、力なく頭を横に振る。
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