2 / 5
僕と吉野さんと美桜さん。
しおりを挟む
僕は日暮中学校の図書室に来ていた。
「すみません。
卒業アルバム見たいんですけど、どこにありますか?」
「卒業アルバムなら、1ーD本棚の奥にあります」
「ありがとうございます」
僕は司書のお姉さんにお礼を言うと、案内された本棚にむけて歩き出す。
卒業式を来週に控えた僕は日暮中学校を卒業してしまう前に吉野さんが誰か?を調べるとこにした。
日暮中学校図書室なら十数年分の卒業アルバムを在校生なら見えたはずだと、昨日思い出したからだ。
「ここだ」
本棚に卒業アルバムが綺麗に陳列されている。
卒業アルバムを読む生徒は誰も居ないので、古いのは日光で色が薄くなっているが、破れたりはしてなかった。
僕は卒業アルバムの背表紙を人差し指でなぞりながら、目的の年号を探す。
3年前に吉野さんを見かけたから、この辺かな?と、あたりをつけて去年と一昨年、3年前の卒業アルバムを本棚から取り出す。
僕は近くのテーブルに卒業アルバムを置いて、椅子を引いて座ると、先ずは3年前の卒業アルバムをパラッと開いた。
「あ!」
まさか1冊目で当たりを引くとは思ってなくて僕は大声を出してしまい、目が合った司書のお姉さんに人差し指を口にあてて、
「静かに」
と、声を出さずに口が動いていた。
「すみません」
僕も声を出さずに口の動きだけで謝罪したあと、卒業アルバムの生徒一覧のページに視線を戻す。
吉野さんとそっくりな少女、名前を神谷美桜さん。
かみや、あれ神谷?ってどこがで聞いたことがある。
確か僕が日暮中学校に入学したばかりの頃の噂で、3年生の神谷先輩のお姉さんが行方不明って言われていた。
僕は神谷先輩と面識がないので吉野さんと似ているかは分からないけど、もしかして姉弟かもしれないと思い一昨年の卒業アルバムの生徒一覧のページを急いで開いた。
「似てる」
神谷渉、吉野さんと似た少年が写っていた。
僕は一昨年と3年前の卒業アルバムを手に持ったまま、図書室のパソコンへ向かう。
パソコンのスイッチをいれると、僕は辺りを見渡す。このパソコンはインターネットに接続されているが、生徒は利用を禁止されている。
誰も居ないことを確認してから僕はインターネットの検索ページをひらき「神谷美桜」「行方不明」「3年前」と入力して、検索すると1件の記事がヒットした。
「日暮中学校女生徒行方不明」をクリックして記事のページをひらく。
XX年3月9日、夕方22時過ぎに日暮警察に娘が帰らないとご両親から通報がありました。
日暮警察の調べによると20時頃にXXX交差点で友人と別れて、XXコンビニの防犯カメラに写って以降の消息は不明。
翌日に中学校の卒業式を控えていたことと、高校も志望校を合格しており、4月からの入学式を楽しみにしていたこともあり、自ら行方不明になる理由はないこと。
なお日暮警察にストーカー被害の届出もされており、関連性を調査中。
僕が吉野さんを見かけるようになった正確な日付はXX年3月10日からだ、時期も丁度合っている、吉野さん=美桜さんの可能性が高いと判断した僕は記事をプリントアウトする。
トントンとプリントアウトした用紙を纏め、卒業式アルバムの裏表紙をひらくと、半分にカットされた封筒が貼られており、中に貸し出しカードが入っている。
僕は3年前と一昨年の卒業アルバムの貸し出しカードに自分の名前を書くと、入り口横にあるカウンター中に居る司書のお姉さんに、2枚の貸し出しカードを差し出す。
お姉さんは思い切り「えっ!?」と、驚いた顔をしていたが、貸し出し手続きをしてくれた。
僕は卒業アルバム2冊とプリントアウトした用紙を鞄の中に乱暴に入れると、中学校の外へ、吉野さんが待つ桜の木の元へ駆けていった。
ーーーー
僕が桜の木の元へ行くと、吉野さんは空を見上げて佇んでいた。
「吉野さん!」
「和人くん!」
僕が名前を呼ぶと、吉野さんもパアッと笑顔で振り向く。
「今日は遅かったね。
どうしたの?」
「今日は中学校の図書館に寄っていたんだ」
「なにか借りたの?」
「うん。これなんだけど」
僕は鞄の中から美桜さんが写っている卒業アルバムを取り出すと、生徒一覧のページをひらくと吉野さんに見せる。
「この女吉野さんじゃない?」
僕は神谷美桜さんの写真を指差しながら、吉野さんに尋ねる。
吉野さんは僕が指差す写真をじっと見つめると、
「この神谷美桜が私に似てるの?」
「うん、すっごく似てる。
何か思い出さない?」
「ごめんなさい。
思い出せない…」
「大丈夫だよ。
こっちの男は?」
申し訳なさそうな表情の吉野さんを元気付けるように笑顔で一昨年の卒業アルバムの神谷渉先輩の写真を見せる。
「なにか思い出せる?」
「この男は?」
「吉野さん。…美桜さんの弟さんだと思う」
「……弟」
吉野さんは小声で呟くと神谷渉の写真を静かに見つめたが、力なく頭を横に振る。
「すみません。
卒業アルバム見たいんですけど、どこにありますか?」
「卒業アルバムなら、1ーD本棚の奥にあります」
「ありがとうございます」
僕は司書のお姉さんにお礼を言うと、案内された本棚にむけて歩き出す。
卒業式を来週に控えた僕は日暮中学校を卒業してしまう前に吉野さんが誰か?を調べるとこにした。
日暮中学校図書室なら十数年分の卒業アルバムを在校生なら見えたはずだと、昨日思い出したからだ。
「ここだ」
本棚に卒業アルバムが綺麗に陳列されている。
卒業アルバムを読む生徒は誰も居ないので、古いのは日光で色が薄くなっているが、破れたりはしてなかった。
僕は卒業アルバムの背表紙を人差し指でなぞりながら、目的の年号を探す。
3年前に吉野さんを見かけたから、この辺かな?と、あたりをつけて去年と一昨年、3年前の卒業アルバムを本棚から取り出す。
僕は近くのテーブルに卒業アルバムを置いて、椅子を引いて座ると、先ずは3年前の卒業アルバムをパラッと開いた。
「あ!」
まさか1冊目で当たりを引くとは思ってなくて僕は大声を出してしまい、目が合った司書のお姉さんに人差し指を口にあてて、
「静かに」
と、声を出さずに口が動いていた。
「すみません」
僕も声を出さずに口の動きだけで謝罪したあと、卒業アルバムの生徒一覧のページに視線を戻す。
吉野さんとそっくりな少女、名前を神谷美桜さん。
かみや、あれ神谷?ってどこがで聞いたことがある。
確か僕が日暮中学校に入学したばかりの頃の噂で、3年生の神谷先輩のお姉さんが行方不明って言われていた。
僕は神谷先輩と面識がないので吉野さんと似ているかは分からないけど、もしかして姉弟かもしれないと思い一昨年の卒業アルバムの生徒一覧のページを急いで開いた。
「似てる」
神谷渉、吉野さんと似た少年が写っていた。
僕は一昨年と3年前の卒業アルバムを手に持ったまま、図書室のパソコンへ向かう。
パソコンのスイッチをいれると、僕は辺りを見渡す。このパソコンはインターネットに接続されているが、生徒は利用を禁止されている。
誰も居ないことを確認してから僕はインターネットの検索ページをひらき「神谷美桜」「行方不明」「3年前」と入力して、検索すると1件の記事がヒットした。
「日暮中学校女生徒行方不明」をクリックして記事のページをひらく。
XX年3月9日、夕方22時過ぎに日暮警察に娘が帰らないとご両親から通報がありました。
日暮警察の調べによると20時頃にXXX交差点で友人と別れて、XXコンビニの防犯カメラに写って以降の消息は不明。
翌日に中学校の卒業式を控えていたことと、高校も志望校を合格しており、4月からの入学式を楽しみにしていたこともあり、自ら行方不明になる理由はないこと。
なお日暮警察にストーカー被害の届出もされており、関連性を調査中。
僕が吉野さんを見かけるようになった正確な日付はXX年3月10日からだ、時期も丁度合っている、吉野さん=美桜さんの可能性が高いと判断した僕は記事をプリントアウトする。
トントンとプリントアウトした用紙を纏め、卒業式アルバムの裏表紙をひらくと、半分にカットされた封筒が貼られており、中に貸し出しカードが入っている。
僕は3年前と一昨年の卒業アルバムの貸し出しカードに自分の名前を書くと、入り口横にあるカウンター中に居る司書のお姉さんに、2枚の貸し出しカードを差し出す。
お姉さんは思い切り「えっ!?」と、驚いた顔をしていたが、貸し出し手続きをしてくれた。
僕は卒業アルバム2冊とプリントアウトした用紙を鞄の中に乱暴に入れると、中学校の外へ、吉野さんが待つ桜の木の元へ駆けていった。
ーーーー
僕が桜の木の元へ行くと、吉野さんは空を見上げて佇んでいた。
「吉野さん!」
「和人くん!」
僕が名前を呼ぶと、吉野さんもパアッと笑顔で振り向く。
「今日は遅かったね。
どうしたの?」
「今日は中学校の図書館に寄っていたんだ」
「なにか借りたの?」
「うん。これなんだけど」
僕は鞄の中から美桜さんが写っている卒業アルバムを取り出すと、生徒一覧のページをひらくと吉野さんに見せる。
「この女吉野さんじゃない?」
僕は神谷美桜さんの写真を指差しながら、吉野さんに尋ねる。
吉野さんは僕が指差す写真をじっと見つめると、
「この神谷美桜が私に似てるの?」
「うん、すっごく似てる。
何か思い出さない?」
「ごめんなさい。
思い出せない…」
「大丈夫だよ。
こっちの男は?」
申し訳なさそうな表情の吉野さんを元気付けるように笑顔で一昨年の卒業アルバムの神谷渉先輩の写真を見せる。
「なにか思い出せる?」
「この男は?」
「吉野さん。…美桜さんの弟さんだと思う」
「……弟」
吉野さんは小声で呟くと神谷渉の写真を静かに見つめたが、力なく頭を横に振る。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
夫より、いい男
月世
ライト文芸
ある日、大好きな夫の浮気が発覚し、絶望する妻。
「私も若い男の子とセックスする。見てなさい。あんたよりいい男、見つけるから」
ざまあ展開はないです。浮気旦那を制裁するお話ではありません。その要素をもとめている方は回れ右でどうぞ。
夫婦が争って仲たがいする話というより、失った信頼を取り戻せるのか、どう修復するか、「夫婦間恋愛」の話になります。性描写ありですが、さらりとしてます。
ふみちゃんは戦争にいった
桜井 うどん
ライト文芸
僕とふみちゃんは、おんぼろの狭いアパートで暮らす、カップルだ。
ある日、ふみちゃんは戦争に呼ばれて、何が何だかわからないうちに、あっという間に戦争に行ってしまった。
ふみちゃんがいなくても、心配させないように、僕はちゃんと生活しないといけない。
これは、戦争では役にも立ちそうにもない、そして貧しい僕からみた、生活と戦争の物語。
※この作品を通じて政治的な主張をしたいとかは特にないことをお断りしておきます。
日本風な舞台なだけで、一種のファンタジーのようなものと捉えてくだされば。
※アルファポリスライト文芸賞で奨励賞をいただきました。
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる