逢魔刻の旅人

ありす

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6人目-ゆりかご

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最近
近所で噂になっている
夕方お散歩していると
人形をベビーカーに乗せて散歩している
女の人が公園に現れるという。

学校でもちらほら話題になっていた

その噂されている公園は帰宅時に毎日通っていたが
そんな女の人に遭遇したことはない
1度もなかった為
私は信じていなかった。

部活が終わる頃
校舎を出るともう辺りはどっぷりと夜に漬かっていた

「だいぶ遅くなっちゃったな」
音楽を聴く為イヤフォンを耳にさす

お気に入りの音楽を聴くとテンション上がるし
疲れも癒される

公園に差し掛かりいつものように散歩コースの道を歩く
犬の散歩をしているおじさんとすれ違った

お「気味悪いな....」
微かに聞こえた気がした

んっ?今のおじさんなんか言った?

辺りを見渡すがおじさんは犬を連れて公園を去っていく後ろ姿以外
何も変わった光景はない
いつもと同じ道だ

イヤフォンの音楽を止める

遠くに聞こえていた蝉の声が
鮮明に戻ってきた

すっかり季節は夏である

ギギィ...ギギィ...

錆びたような金属音が遠くから
聞こえる

「なんだろ?」

向こう側からゆっくり
人影が近づいてくる

ギギィ..ギギィ

ベビーカーだ

女の人がぽおっと街灯に照らされながら
ベビーカーを押している

「散歩..?買い物とかかな」

そのくらいにしか思わなかった。
ここは公園だし
ベビーカーを押して散歩している人がいても
さして不思議な光景では無い

女「暑いわね..眠たくなっちゃたかしら」

ベビーカーを止め
中に眠る赤ん坊に声をかけているのだろう

女「汗拭いてあげるわね」

普通の何気ない日常にしか見えなかった

女の横を通り過ぎる

しばらく歩を進めると
後ろから声をかけられた

女「あのすみません」

振り返る先程すれ違った
ベビーカーの女性が真後ろに立っていた
少し不気だなぁとは思ったが
気にせず

「はい何か?」
道でも聞きたいとかそんな事だろうと思っていた

薄暗い中ぽぉっとあかりが灯っている御手洗を指さし
女「すみません 御手洗いに行きたいので
申し訳ないのですが娘を見ていて頂けないでしょうか?」

ぁぁ御手洗いに行きたいのか

「いいですよ」
どうせ、そんな時間もかからないだろうし
急いでいるわけでもなかったので
少しの間ならと思い快く引き受ける事にした。

女「ありがとうございます 寝たばかりなの起こさないでくださいね」

「はぁ..わかりました」

そういうと女性はベビーカーを私に託し御手洗いの方へと向かっていった。

ベビーカーには日除けの部分が掛けらており
赤ん坊の顔は確認できなかった

寝ているとはいえ寝息も聞こえず動く様子も見られない
日除けとブランケットであまり見えないが少し除く赤ん坊の手に違和感を覚えた

肌とはまた違う妙な質感

急にベビーカーの女の噂を思い出した

御手洗いの方に目をやると
まだあの女の人は出てくる様子はない

少し興味が湧いた

もしかしてこれが噂の..だったりして...

ブランケットにゆっくり手をかける

明かりに少し照らされる

...!やっぱり...この赤ん坊人形だ
ボッサボサの髪の毛プラスチックの無機質な人形がベビーカーの中に寝かされていた

突然真後ろ耳元で
女「あの」
あの女性が私の真後ろにくっ付くように立っていた
悲鳴を抑え
声にならない声を絞り出す

「は、はい!すみません もう大丈夫でしょうか..私帰らなくてはいけないので..」
そう行ってその場を去ろうとすると
女が急に声を荒らげた
女「赤ちゃん... 私の赤ちゃん
起こさないでくださいって言ったのに!」


「お、起こしてなんかないです すみません」
怖くて女性の方を振り向くことが出来なかった。

女「見たでしょ?見たでしょ?見たでしょ?見たでしょ?」
ベビーカーを押しながらすごい勢いで女がこちらに迫ってくる

「見てません!」背中越しにそう答え必死に走った

ドンッ!

足元に何かがぶつかり地面に叩きつけられる

「いっ、、たぁ、、」

小さな何かが薄暗い闇の中
私の足を登ってくる

「おぎゃぁぁぁぁぁ」

赤ん坊の人形が私の足にしがみついて来た

逃げようとするが足を捻ってしまったのか
立ち上がることが出来ない
後ずさりするように逃げる私の背中に何かが当たった

「あっ、、、、、、」


《良かったわね新しいお友達よ》





ねぇ知ってる?

公園のベビーカーの女!
ぁぁ最近有名だよね

人形を散歩させてて
娘と遊んでくれる人探してるんだって!
怖っ!ホントにいるの?

いるらしいよ 行方不明になった人もいるみたいだし

あそこの公園でしょ? 気を付けなきゃね


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