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第一章 木嶋真奈の日記より抜粋①
第十七話 小学校の思い出って、思い出せそうで何も思い出せないよね
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裏門付近は確かに貧相で、近寄り難い雰囲気はあるが、その代わりに裏門の両脇に綺麗な桜が二本堂々と咲き誇っているのが魅力である。なぜ私はここに人が集まらないのか理解できない。第四講義棟とサークル棟は、真ん前の桜が楽しめる学内屈指のスポットなのに……。
去年ここで先輩に魅せられて以来、私は部室も、ここも、そして手芸サークルも、大好きになった。しかし、それはまた、別のお話。
「うっわぁ! めっちゃ綺麗っすね! 夕日に桜吹雪って……! 最高っすよー!」
アホだな……。けど、美的センスは悪くない。紅い空に、薄桃色の吹雪が舞うこの光景は、ここの三大裏校舎でこそ映える……。……!
キンッ!
人通りのない空間に金属音が響く。
「ど、ど、どした?!」
「喋るな!」
「むぐぅっ……!」
悠斗の口を抑えるために指が口の中に入ってしまった。が、そんなの関係ない。非常事態である。あとでキレイキレイでキレイキレイして、アルコール消毒をしたあとに、アルコールタオルで拭いて、清潔なハンカチで手を拭いておけば大丈夫だ。バカはうつらない。
それよりも……。
「誰だ……!」
自然と呼吸が荒くなる。
獲物の形状から見ておそらく吹き矢。飛んで来た方向と角度から考えると、第四講義棟二階からだ。風の強くなるタイミングと被せて、なおかつこの遠距離で確実に標的に狙えるってことは相当のやり手だ。しかも今のはおそらく……。
本気で悠斗を殺す気だった……!
敵の居るであろう方向からは目を背けず、ゆっくり口にハンカチを挟む。これだけ術に長けた人間だ。何を仕掛けてくるか分からない。ここら一帯に人が来る気配もないし、我々二人を手っ取り早く捉えるために毒薬を撒くことだって可能性はゼロではない。
「ぐぬぅ……!」
「なっ……!」
後ろだと?!
そんなことあり得ない。少なくともこの大学でも私の後ろを取れるのは……ってそんなことを考えている場合ではない。
すぐさま仕掛けを解き、右脚を振り上げる。
あと一歩のところで悠斗ごとスルリとかわされ、私は体のバランスを崩し倒れそうになる。が、すかさず仕掛けのナイフが伸び、相手の左手首に一筋の傷痕を残す。
後方から再び飛んでくる矢を避けつつ、バランスを整えようとする。
しかしその刹那……。私は頭に強い衝撃を受け、気を失った……。
気がつくと日はすでに暮れ、月が出ていた。周りを見渡すが、舞い散る桜以外見つからない。
あまりにも唐突なことで、言葉を失ってしまった。回らない頭で必死に考えるが、たった一つの出来事に頭がいっぱいである。
……悠斗を、誘拐された……。
去年ここで先輩に魅せられて以来、私は部室も、ここも、そして手芸サークルも、大好きになった。しかし、それはまた、別のお話。
「うっわぁ! めっちゃ綺麗っすね! 夕日に桜吹雪って……! 最高っすよー!」
アホだな……。けど、美的センスは悪くない。紅い空に、薄桃色の吹雪が舞うこの光景は、ここの三大裏校舎でこそ映える……。……!
キンッ!
人通りのない空間に金属音が響く。
「ど、ど、どした?!」
「喋るな!」
「むぐぅっ……!」
悠斗の口を抑えるために指が口の中に入ってしまった。が、そんなの関係ない。非常事態である。あとでキレイキレイでキレイキレイして、アルコール消毒をしたあとに、アルコールタオルで拭いて、清潔なハンカチで手を拭いておけば大丈夫だ。バカはうつらない。
それよりも……。
「誰だ……!」
自然と呼吸が荒くなる。
獲物の形状から見ておそらく吹き矢。飛んで来た方向と角度から考えると、第四講義棟二階からだ。風の強くなるタイミングと被せて、なおかつこの遠距離で確実に標的に狙えるってことは相当のやり手だ。しかも今のはおそらく……。
本気で悠斗を殺す気だった……!
敵の居るであろう方向からは目を背けず、ゆっくり口にハンカチを挟む。これだけ術に長けた人間だ。何を仕掛けてくるか分からない。ここら一帯に人が来る気配もないし、我々二人を手っ取り早く捉えるために毒薬を撒くことだって可能性はゼロではない。
「ぐぬぅ……!」
「なっ……!」
後ろだと?!
そんなことあり得ない。少なくともこの大学でも私の後ろを取れるのは……ってそんなことを考えている場合ではない。
すぐさま仕掛けを解き、右脚を振り上げる。
あと一歩のところで悠斗ごとスルリとかわされ、私は体のバランスを崩し倒れそうになる。が、すかさず仕掛けのナイフが伸び、相手の左手首に一筋の傷痕を残す。
後方から再び飛んでくる矢を避けつつ、バランスを整えようとする。
しかしその刹那……。私は頭に強い衝撃を受け、気を失った……。
気がつくと日はすでに暮れ、月が出ていた。周りを見渡すが、舞い散る桜以外見つからない。
あまりにも唐突なことで、言葉を失ってしまった。回らない頭で必死に考えるが、たった一つの出来事に頭がいっぱいである。
……悠斗を、誘拐された……。
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