研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第7章 新たな進化

70話 個人ギルドの活躍

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 冒険者達が、ようやくダンジョンや派遣先から帰ってきた。
 ギルドは、冒険者達から素材を買い取りをしていたのだが、その表情は暗く沈んでいた。

「一体どうすればヒロトシに一杯食わせることができるのだ!」

「そのようなことを言われても、もうヒロトシ様に謝罪を入れた方が・・・・・・」

「何でギルドが、ブラッドベアの素材を取りに行かせれば、ヒロトシはブラッドベアの上位種のサーベルツィンベアの素材を大量に仕入れるんだ!」

「ギルドマスター・・・・・・もう1つ大変な事が起こっています」

「Fランク依頼がなくなっただげであろう?そんなのは放っておけばいい!」

「そうではないのです!最近は、ヒロトシ様の個人ギルドが王都内で広まって来ていて、冒険者ギルドの依頼が少なくなって来ているのです」

「どういう事だ?」

「つまり・・・・・・錬金術師の個人依頼の薬草採取や鍛冶師の魔物の素材の依頼が、ヒロトシ様の個人ギルドに依頼が流れているそうなんです」

「はぁあ?冒険者ギルドより個人に依頼していると言うのか?」

「はい・・・・・・」

「そんな馬鹿な!」

 ギルドマスターは、会議室のテーブルをおもいっきり叩きつけたのだった。



 冒険者達が、ギルドに帰ってくる数日前に時は遡る。

「あの・・・・・・ランゼだったかいの。ちょっといいか?」

「あなたは、たしか鍛冶師のダーツさんでしたね?
どうかなされましたか?」

「ワシの事を知ってくれとるのか?」

「そりゃ知ってますよ。ダーツさんは鍛冶師としていい腕の職人さんで有名人ですからね」

「ほう!そうかいそうかい。そいつは嬉しいの!」

「そんな腕のいい職人さんが、ウチにくるなんてひょっとしたら依頼ですか?」

「いいのか?」

「ウチは、ヒ美研[個人ギルド]ですよ。依頼は受け付けます。何の素材が必要ですか?」

「本当に大丈夫なのか?」

「まぁ、こういう事を言うのもなんなんですが、冒険者ギルドと比べたらウチの個人ギルドの方が優秀ですよ。なんたって、ヒロトシ様が経営者なんですからね!」

 個人ギルドヒ美研の受付嬢のランゼは、胸を張り自分の事のように自慢した。

「魔の森の魔物の素材もいいのか?」

「大丈夫ですよ。一応魔物の種類をお聞きしますが何の魔物でしょうか?」

「ブレスリザードンじゃ。あいつの爪10個と鱗20枚欲しいんだ」

「「「「「ブレスリザードン!」」」」」

 ブレスリザードンと聞いて、依頼に来ていた町のお年寄り達が驚いて大きな声を出していた。

「それなら大丈夫ですよ。爪一本200万ゴールド鱗一枚150万ゴールドでいかがでしょうか?」

「た、高い!そんなにするものなのか?」

「申し訳ありませんが、魔の森に生息する魔物ですよ。発見するまでにどれ程の魔物に遭遇するかわかりません」

「な、なるほど・・・・・・」

「生息する地域はある程度把握していますが、そこにいくまでには数多くの魔物がいますので、ご理解していただけるとありがたく思います」

「もし、依頼した場合どれ程の期間で入手できそうだ?」

「2ヵ月はほしいですね」

「2ヶ月で手に入るのか?」

「まず、大丈夫ですね」

「しかし、5000万か・・・・・・」

「ダーツさん、いい事を教えましょうか?」

「なんだ?」

「ブレスリザードンの素材は、オークションで取引されるような素材ですよ?それこそ5000万で手に入る素材じゃありません」

「わかっておるわい!」

「じゃ何を迷う必要があるのですか?」

「しかし、これは個人的な商談になるだろ?冒険者ギルドなら保障されるが、個人での取引は怖いのが正直な感想なんだ!」

「そう思うのならやめた方がいいですよ。しかし、ダーツさんがウチに依頼を持ってくるとなると、過去に冒険者ギルドに断られたんじゃ?」

「ああ、そうだよ!5年ほど前に依頼したが、そんな魔物は討伐できないと断られたよ」

「でしょうね。ブレスリザードンが何かの理由で町を襲った場合に、国の騎士団が防衛するような魔物ですからね。冒険者が討伐にいくような魔物ではありません」

「だよな・・・・・・自分でもむちゃくちゃな事を言っているのはわかっているんだ。しかし、あの高ランクの素材を使って、鍛冶師を引退してみたいんだよな」

 高ランクの魔物の素材を加工するには、鍛冶師としての力量が試されるのだ。結局ダーツは依頼をしなかったが、この話はすぐに生産職に広まったのは言うまでもなく、ヒロトシの個人ギルドは冒険者ギルドと同じように依頼を受けてくれるとわかった。

 町の雑用だけと思っていたが、錬金術師は薬草採取だけじゃなく、レアな薬草を依頼したりし始めたのだ。

 また、石材屋も個人ギルドに依頼しに来たのだ。

「すまねぇが、運搬作業を明日から一週間頼みたいんだかいけないか?」

「はい!大丈夫ですよ。何を運ぶのですか?」

「城壁に使うブロックだ。1日3tのブロックを運んでほしい。1日2万ゴールド出すからよ」

「わかりました」

「急で悪ぃな!冒険者達がいなくてよ。困っていたんだが、鍛冶師のダーツに聞いたら、ここを紹介してくれてよ」

「大丈夫ですよ。明日、誰かを派遣させていただきます」

「頼んだぜ!」

 現場監督は金を14万ゴールドを支払って、急いで帰って行ってしまった。受付嬢は、城壁修理は忙しいんだと思った。

 そして、次の日石材屋で昨日依頼をしに来た監督が大きなため息をついていた。

「はぁあ・・・・・・騙された!何であんたみたいな女が2人だけ来てんだよ!」

 監督が怒鳴るのも無理はなかった。派遣されたのは、メイド服を着た可愛らしい女性とそれを護衛する女戦士二人だけだったからだ。

「監督どうするんですか?」
「俺達も運搬にまわるんですかい?」

「監督さん。私たちだけで大丈夫ですから任せて下さい!」

「何を運ぶと思っているんだ?このリアカーをお前さんが運べる訳がねぇじゃねぇか!一週間で21tも運べるのか?」

「大丈夫です。ご主人様からいいものをお借りしてきましたので!」

 そう言って、メイド服を着た可愛らしい女性は、リアカーにつまれた石材をマジックバックに収納してしまった。

「「「「「はっ?」」」」」

 石材屋の職人達は目を見開き、変な声を漏らしていた。

「監督さん、これで大丈夫ですね?どこの現場に運ぶのですか?」

「あっ、ああ・・・・・・北の現場の城壁に運んでほしい」

「わかりました!それでは、いってきます」

 メイド服を着た可愛らしい女性と、護衛の女戦士は楽しそうに喋りながら石材屋を後にした。
 その様子をみて、呆然とする職人達だった。これらの活躍が町中に噂として流れていたのだ。

 今や、冒険者ギルドよりヒロトシの個人ギルドの方が町の役に立っていて、冒険者ギルドに依頼する人間が減ってきていたのだった。
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