研磨職人！異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

第７章 新たな進化

６８話 冒険者ギルドの内情

　ヒロトシが、元冒険者達を引き連れ冒険者ギルドへと足を運んだ。

「あなた達は！」

「受付嬢さん、久しぶりだな」

「なんで、手足が治って・・・・・・」

「そんな事より、ギルドは大丈夫なのか？」

「大きなお世話です！それよりあなた達は冒険者ギルドを脱退したのです。冒険者ギルドの敷居は跨げないはずですよ！手足が治っても、脱退したら５年は復帰は無理です」

「俺等は、冒険者ギルドに厄介払いされたんだ。頼まれても２度と戻るつもりはねぇよ」

「だったら、何をしに来たのです！冷やかしに来たのなら・・・・・・」

「そんな暇じゃあねぇよ！冒険者ギルドに用事があるのはご主人様だ」

「そう言えばあなた達は、ヒロトシ様の奴隷になったと言ってましたね」

「こんにちは。冒険者ギルドには、何を言っても変わらないようですね」

「ヒロトシ様・・・・・・何をしに冒険者ギルドに来たのですか？」

「最終警告だよ。ギルドマスターがこの厄介払いした冒険者達に謝罪を要求する！」

「はぁあ？いくらヒロトシ様でも、そんな事がまかり通る訳がありません！その者達は、自らギルドを去ったんです」

「その原因はギルドにあるだろ？俺は、研磨装備を止めたはずだろ？しかし、冒険者ギルドは自分達の利益を優先したじゃないか？」

「それは、その者達の油断が原因です。ギルドに責任はありません！それに、冒険者ギルドはその者達に依頼を斡旋しています。それを蹴ったのはその者達ではありませんか？」

「その意見は、冒険者ギルドの総意と受け取っていいんだな？」

「総意もなにも事実です！」

「そっか！冒険者を利用するだけして、最後まで使い潰すのが冒険者ギルドなんだな？」

「使い潰すだなんて言い方は！」

「そうじゃないか？こいつらは、手足をギルドの利益のために失ったんだぞ？それを雀の涙程の金だけ渡し、生活の保障がＦランクの依頼だけなんて使い潰すようなものだろ！保障と言うのは、安心できる程の金を渡す事だよ」

　ヒロトシは、受付嬢に大きな声で怒鳴り付けた。しかし、受付嬢は少しひるんだものの、気を取り戻し毅然な態度で、ヒロトシの意見をスルーした。

「何を言っても、その者達がギルドを脱退した事は変わりません！つまり、ギルドとその者達はもう関係はありません！」

「なるほどな！わかったよ」

　ヒロトシは、ギルドマスターが厄介払いした冒険者達に謝罪をすれば、今までの事は目をつむるつもりだった。
　実際、ギルドの言う通りこの冒険者達の油断で負傷したのは変わらず、今は自分の奴隷である。保障金を渡されても、主人の自分に入るだけだからだ。

「わかって頂けたなら良かったです」

「何を安心しているんだ？このままではＳランク冒険者達が、ギルドの犠牲になるというのがわかったと言ったんだよ」

　ヒロトシの言葉に、ギルドのホールにいた冒険者達がギョッとした。

「何を訳のわからない事を言っているのですか？」

「そうか？ギルドは、冒険者達にダンジョンのもっと深い階層に行かせるつもりなんじゃないのか？」

「誰がそんな事を・・・・・・・」

「俺がそんな事はさせない！」

「何を馬鹿な事を！ヒロトシ様が、冒険者達をダンジョンに行かせないって、冒険者が言う事を聞くわけが！」

「言っておくからな！今、王都の冒険者がダンジョンに潜れている理由は俺の研磨技術があるからだ」

「ま、まさか？いくら何でも店を撤退したら」

　ヒロトシと受付嬢の話を聞いていた冒険者が、身を乗り出して慌て出した。

「ヒロトシ様！ちょっと待ってくれよ」
「そうだよ！ヒ美研を閉められたら俺達が困る！」
「それに、あたし達はギルドの指示で上位種の素材を取りに依頼を受けたんです」

「ほう！やはり、ギルドが冒険者に無理を？」

「あっ！余計なことを！」

「受付嬢さん、俺の技術有りきの依頼は、冒険者の危険が格段と上がると思うんだけどな？まだわからないのか？」

「しかし、依頼を承諾したのは冒険者自身です」

「あのな？冒険者の意思で依頼を選んだわけじゃないだろ？ギルドの指示で依頼をうけたんだろ？」

「ヒロトシ様、俺達はギルドの指示で依頼を受けたんだよ。それは間違いない。しかし、俺達は金も欲しくて無理やりじゃないんだ！」
「そうだよ！だから、ヒロトシ様のヒ美研を閉められると困るんだ！」

「見なさい！冒険者達もそう言っています。ヒロトシ様が冒険者の意思で冒険を止められるはずがありません！」

「何を勝ち誇っているんだ！」

「「「「「ヒロトシ様！」」」」」
「頼む！ヒ美研を閉められたら、俺達はダンジョンに潜れねぇ」
「そうだよ！情けねぇが、ヒロトシ様の研磨装備に頼って２０階層以上に挑戦したいんだ」

「そんな張りぼての実力は身を滅ぼすぞ？こいつらも研磨装備を自分実力と勘違いして、ギルドに見捨てられたんだ」

「ぐっ！」

「まぁ、安心したらいいよ。ヒ美研を閉めたら王都としても不都合だからね」

「あはは！やっぱりヒ美研も冒険者達の売り上げが惜しいんじゃないんですか」

「ああ、そうだな！冒険者がギルドの犠牲になって数が減るのは、俺としても納得できないからな」

「偉そうなことを言っても、ヒロトシ様も冒険者を利用しているじゃないですか？ギルドを責めるのはお門違いです！」

「何を勘違いしている。ギルドは冒険者を利用して使い物にならなくなったら切り捨てているだろ。俺は、冒険者を利用しているんじゃなく、協力関係にあるんだよ」

「物は言いようですよ！」

「いいか？よく覚えておけ！ギルドはそのうち機能を停止する！その時、冒険者達をギルドがどのように扱うのか、今から楽しみだよ」

「ギルドが機能を停止？それこそ意味がわかりませんね？」

「あー！そうそう。ギルドはミノタウロスの角は売れたのか？」

「何を急に！」

　ヒロトシの言葉に、受付嬢はギクリとした。

「冒険者達にも忠告しておくぞ。依頼を受ける前に金がほしいなら半分は前金をもらっておいた方がいいぞ？冒険者ギルドは今、とんでもない借金を抱えているはずだからな」

「何を言っているのですか！」

　受付嬢の焦り方は尋常ではなかった。その様子を見て冒険者達も焦りだしていた。

「おい！今の話は本当なのか？」

「あなた達にギルドの内情を言えるわけないでしょう！それに、冒険者ギルドは大陸最大の組織です」

「焦りだしたな。大陸最大の組織が聞いて呆れるよな。だったら、こいつらに生活保障を十分に与えれただろうに！」

「そ、それは！」

「それとも支払えたのに、支払わずこいつらの治療もせず使い潰すつもりだったのか？」

「それ以上の侮辱は許しませんよ」

「侮辱じゃない。事実だよ！依頼達成して、かえって来ても支払う金が残っていたらいいな？冒険者達に言っておくからな！困った事があったら、ヒ美研に相談しに来てくれ」

　ヒロトシは、そう言って冒険者ギルドをあとにした。ヒロトシがいなくなった後、冒険者達はギルドカウンターに押し寄せたのは言うまでもなかった。