研磨職人！異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

第７章 新たな進化

６７話 苦しくなる冒険者ギルド

　冒険者ギルド職員は、生産ギルドの買い取り窓口で苦情を訴えていた。

「なんで、魔物の素材を買い取りを拒否するのですか？」

「拒否ではありません。申し訳ないのですが、ミノタウロスの角は、在庫が溢れてその値段では買い取りすると、こちらが損をするのです」

「ミノタウロスの角が余っている？」

「そうじゃないんです。ブラックミノタウロスの角が大量入荷して、ノーマルのミノタウロスは売り物にはならないのです。今やミノタウロスの角は二束三文の値打ちしかありません」

「ブラックミノタウロスだと！じゃあ肉もか？」

「はい。申し訳ないのですが・・・・・・」

「むぐぐぐ・・・・・・それも王国の対策なのか」

「はい。今や、王国はインフレを抑えようとしています。生産ギルドもそれに協力して・・・・・・」

「ば、馬鹿な！ギルドが国のいいなりになったというのか？」

「いいなりではありません！あくまでも協力という形です！現に生産ギルドの売り上げは・・・・・・」

「そのような、生産ギルドの売り上げなどどうでもいい！とにかく、ミノタウロスの素材を買い取りしてもらわないと！」

「王都はもちろん、近隣の町までブラックミノタウロスの素材は行き届いてます。今やミノタウロスの角は１０００ゴールドでも売れないかと」

「くっ！」

「あの・・・・・・差し出がましいんですが」

「なんだ？」

「冒険者ギルドは、ヒロトシ様の奴隷に謝罪をした方がよろしいかと？」

「なんで、冒険者ギルドが奴隷に！」

「生産ギルドでも、ヒロトシ様の奴隷にしたことは噂になっています。このままでは、冒険者ギルド王国本部は機能しなくなるかと？」

「何を訳のわからない事を！」

「冒険者ギルドとは、今までお付き合いしていたよしみで言わさせていただきます」

「・・・・・・」

「あなた達冒険者ギルドは、このままでは潰れてしまいますよ。ヒロトシ様の性格は、相手がどんな相手も関係ありません」

「だからなんだと言うのだ！こちらは大陸最大の組織だぞ？」

「いいですか？今なら、冒険者ギルドは王国本部だけですむ話です。しかし、このまま行けば本当に冒険者ギルド総本部が取り返しのつかない事になってもおかしくありません」

「はっ？冒険者ギルド総本部だと！何を馬鹿な事を言っているんだ」

「もう一度考えてください！」

　生産ギルドの職員は真剣な顔つきになり、冒険者ギルド職員に言い聞かせるように説明した。
　その説明に、冒険者ギルド職員は顔を真っ青にしていたのだ。

「ば、馬鹿なことを！」

「そう思うのなら、このまま何もせずいたらいいですが、今の現状はどう考えてもヒロトシ様は、元冒険者達の仇を討つような行動です」

「くっ！」

「冒険者ギルド王国本部は、このまま潰れてしまいますよ。そうなれば、総本部はどうなりますか？王国本部は生産ギルドと同じように主要都市のはず。その王国本部が潰れてしまいますよ？本当によろしいのですか？」

　冒険者ギルド職員は、ヒロトシの事をギルドに報告した。

「何を馬鹿な事を言っているんだ！」

「しかし、このままでは生産ギルドの言うように、魔物の素材は一切売れなくなってしまいます」

「じゃあ、冒険者達にダンジョンに潜らせて上位種の素材を！」

「それでは、数が大量に取れるわけが！」

「なんでだ？ヒロトシはブラックミノタウロスを近隣の町に売らせるほどの量を取ったのだろう？」

「そ、それは・・・・・・・」

 　冒険者ギルドに所属している冒険者と比べる方が間違っていた。ヒロトシは、ミランダやアイリーン達超一流の戦士達に、魔の森のダンジョンを探索させていた。
　魔の森のダンジョンは一階層で、高ランクの魔物が出現する。つまり、ダンジョンに行けば上位種の魔物の素材が手に入るのである。
　一方冒険者達は、普通のダンジョンに潜りミノタウロスを討伐する為に、ダンジョンの２０階層まで潜らないとノーマルミノタウロスに遇えないのだ。
　それほどまでに、魔の森の魔物との差がある事になる。今回、冒険者ギルドはミノタウロスなら高値で買い取ってもらえると思っていたのに、ミノタウロスの角は最低１本３０万ゴールドが１０００ゴールドでも売れない程の大暴落をしたのだ。

「仮に、ミノタウロスの上位種を冒険者に取ってきて貰っても・・・・・・」

「ミノタウロスではない！同じ物を取ってきても意味はないではないか！」

「いえ、そうではなく階層の問題です！ミノタウロスでも２０階層まで潜らないといけないのです！他の上位種の魔物を討伐するとなると、３０階層となります」

「そうなれば、Ｓランク冒険者しか・・・・・・」

「そういう事です。時間もかかりますし、ここはやはり生産ギルドの言うようにヒロトシ様に謝罪をした方が・・・・・・」

「馬鹿な事を！なんで、冒険者ギルドが奴隷に！それにあやつらは、進んで冒険者ギルドを脱退したはずだ！冒険者ギルドに落ち度はない」

　ギルドマスターは、頑なにヒロトシへの謝罪を拒否したのである。
　そして、何も行動を起こさない冒険者ギルドに、ヒロトシが訪問したのだった。