上 下
329 / 347
第7章 新たな進化

65話 冒険者より奴隷?

しおりを挟む
 生産ギルドに納品していた、冒険者ギルド職員が息を切らしてギルドマスターの部屋に駆け込んできた。

「ギルドマスター、緊急事態です!」

「どうした?騒がしいぞ!」

「た、大変です!生産ギルドが薬草と肉の買い取りを拒否してきました」

「な、なんだと!」

「肉の買い取りは、今の情勢ではオークの肉は更に安くしてくれと!」

「それで薬草は?」

「薬草は、冒険者の採取方法に不満を言われ、もっと丁寧に採取したものを納品しろと・・・・・・今の薬草は低品質としての評価で買い取られるそうです」

「冒険者に丁寧に採取させろと言ったのか?」

「はい・・・・・・」

「うちにそんな余裕などないのに!」

 今の冒険者達は、少しでも多くの素材を集める為に、質より量という感じで薬草の採取に時間をかけて、土の中に薬草の根を残しつつギリギリの所を駆ってくる事をしていなかった。
 無造作に薬草を引き千切り、地中に薬草の根を多く残し、短時間で薬草が育つようにしていた。

「それにもうひとつあり得ないことが!」

「あり得ないこと?」

「はい、ギルドカードを剥奪した元冒険者がヒロトシ様の奴隷になっていました!」

「はっ!あり得ないことがそんなことか?結局生活ができず奴隷に落ちただけじゃないか」

「違うのです。欠損は治り以前よりたくましくなって、薬草や肉を生産ギルドに卸していました」

「はぁあ!欠損が治っていただと?」

「しかも、冒険者ギルドをクビになって奴隷になった事で、今の生活の方が幸せだと!」

 そこに、別の職員があわててギルドマスターの部屋に駆け込んできた。

「ギルドマスター!大変です!」

「今度はなんだ!」

「欠損した冒険者が、ギルドカードを返納しています!それにともないBランク冒険者が、薬草採取の依頼をボイコット!他の依頼を張り出せと要求しています」

「なんだと!」

「もし、要求を飲めないのであればBランク冒険者は王都からいなくなると言ってきています」

「ば、馬鹿な・・・・・・冒険者達には、薬草の採取方法を丁寧にしろと言うつもりだったのに!」

 今さら、冒険者に薬草採取の依頼は受けて貰えなかった。そればかりか、通常のBランク冒険者が受けるような依頼を張り出せと言ってきているのだ。

「ギルドマスター、ギルドカードの返納はいかがしましょう?」

「欠損した冒険者は役に立たん!ギルドの恩情を無駄にしおって・・・・・・構わん!役に立たん冒険者がいなくなってお荷物が片付き清々するわ!」

「わ、わかりました。返納を受け付けます。それでBランク冒険者の方はいかがしましょう?」

「構わん!どうせ、薬草や肉が売れんのであれば、冒険者達には魔物の素材を集めさせればよい」

 この判断は悪くはなかった。ただ、相手がヒロトシではなかった場合である。ギルドカードの返納をギルドが断り、冒険者達の生活を保障するのが正解だったのに、冒険者ギルドは厄介者として放り出してしまったのだ。

「本当によろしいのですね?あなた達はもう二度と冒険者ギルドに所属はできませんよ?」

「そういうのなら、冒険者ギルドが俺達の生活を保障してくれよ」

「あなた達に保証金をお支払いしたではありませんか?」

「それじゃ食っていけねぇんだ!」
「「「「「そうだ!」」」」」
「だから、俺達は冒険者ギルドを見捨てたと判断する!」

「しかし、本当ならFランクの依頼をまわすことはしないのですよ?ギルドは見捨ててなんか!」

「言い方によっては、俺達をいいように扱っているだけじゃねぇか!」

「そんなことは!」

「とにかく俺達はもう!冒険者ギルドは信用できない!」

「話は平行線になりそうですね。わかりました。返納の手続きはさせていただきます」

 この日、冒険者ギルドから大量に脱退者が出て、冒険者ギルドを去った。

「これからのあなた達の生活が幸せになるように祈らせてもらいますわ」

「心にもない事言ってんじゃねぇよ!」
「「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」」

「形式上の言葉です。真に受けないで下さい!ギルドを脱退して、あなた達の生活が苦しいものになるのが目に見えるようですわ」

「はっ!言ってろよ!これ以上、生活が苦しくなんかならねぇよ。それより、俺達を厄介払いしてどうなるか、自分達の心配をするんだな」

「何を訳のわからない事を!負け惜しみはみっともないですよ」

「そう思うならそう思ってな」

 脱退した元冒険者達は、松葉杖をつきながら冒険者ギルドを去った。そして、元冒険者達はヒロトシの奴隷に志願したのだ。

 アーセルドを、町中で見かけて手足が治っていたのに驚き、ヒロトシを紹介してもらっていたのだ。
 最初、ヒロトシは負傷した冒険者達にギルドに保障してもらうようにと言って断った。

 アーセルド達は、自分の家族だから治療したのであって、君達は冒険者ギルドに生活保障を求めるように説明した。
 もし、冒険者ギルドが生活保障を断った場合、ヒロトシの奴隷となる覚悟のある人間だけ受け入れようといわれたのだ。
 そして、奴隷になった場合どういう待遇になるのか、アーセルドに負傷した冒険者は意見を求めたのだった。

「確かに油断した場合、魔物に殺される事になるがそれは今までと同じだな」

「なんだよ?言い方が気になるな」

「魔物は、最終的に魔の森に生息する魔物なんだよな。俺も今はAやSランク冒険者がいくような森に潜入しているんだ」

「「「「「「はぁあ?」」」」」」
「アーセルド、お前がそんな場所に行かされているのか?」

「ああ、そうだ!しかし、先輩達にフォローはしてもらってだけどな。今は、俺のレベルも成長したんだぜ」

 アーセルドは負傷した冒険者達に、ヒロトシの奴隷になった場合、どういう待遇になるのか詳しく説明した。
 その説明で、平民よりずっといい生活ができる事はわかった。しかし、冒険者としての自由がなくなる事もわかった。

しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

処理中です...