上 下
317 / 347
第7章 新たな進化

53話 絶望する冒険者達に提案

しおりを挟む
 ヒ美研王都営業所では、ようやくCランク冒険者達からの依頼がなくなった。今回、犠牲となってしまった冒険者は数多くいて、また負傷者は冒険者家業を引退する程の大怪我を負っていた。
 冒険者ギルド王国本部で、新たに就任したギルドマスターと幹部達が、入院している冒険者のもとへお見舞いに来ていた。

「この度は、ギルドの判断が間違ってました。本当にすまない」

「頭を下げられても、俺の腕はもう・・・・・・」

 ギルド関係者達は、冒険者に一人一人謝罪してまわった。冒険者達もギルド関係者達にきつく文句を言えなかった。
 自分達も、ヒ美研が研磨をしてくれなかった時に文句を言って、ギルドに掛け合って欲しいと願ったからだ。

「慰謝料と生活費はギルドカードに振り込ませてもらう」

 ギルドからの慰謝料と生活費は雀の涙だった。あまりにも負傷者がいて、全員に満足いく保証がなかった。

「これでどうやって・・・・・・」

「すまない!ギルドとしてこれが精一杯なんだ」

 もらった金額では、普通に生活したら2年でなくなってしまう金額だった。

「これじゃ、俺達に死ねと言っているのか?」
「そうだ!足があればまた復帰もできるが、もうそれも無理なんだ」
「慰謝料というなら、欠損を治してくれよ!」

 重傷者全員に欠損治療はギルドでも無理だった。パーフェクトヒールを冒険者達にかける事になり、そのような金は出なかった。ようは、エリクサ-を一人一本渡すようなものだからだ。

「本当にすまない・・・・・・」

「「「「「・・・・・・」」」」」

 結局、冒険者は個人経営であり組織に属していないため、泣き寝入りするしかなかった。
 ギルド関係者達は、それでもFランクの雑用依頼で片足でもできる依頼をまわすと言ってくれて、病院を後にした。

「いったいこれから俺達はどうやって生活をしたらいいんだ・・・・・・」

 王都に入院していた冒険者は、ヒロトシの言っていた自分の未熟さに後悔するしかなかった。Cランク冒険者では、欠損を治して又冒険者になる選択がなかった。Bランクでそこそこ活動していたら、貯金もあるだろうが、Cランクでは田舎に引っ込むか
ギルドの言うようにFランクの雑用依頼をして、その日暮らしで生活するしかなかった。
 その時、ヒロトシが冒険者達の部屋にお見舞いにやってきた。

「やぁ・・・・・・君達には悪いが、俺の忠告は正解でしたね」

「「「「「ヒロトシ!」」」」」

「おいおい!呼び捨てにしたい気持ちはわかるが、あからさま過ぎないかい?」

 入院していた冒険者達が、ヒロトシの顔を見てやるせない気持ちで一杯になり、ヒロトシに怒りを向けた。

「なんだよ・・・・・・俺達を笑いにきたのか?」

「笑ってほしいのか?」

「そんなわけあるか!ああ・・・・・・あんたの言ったように俺達では欲を出して高ランクの魔物がいる地域に踏み入れて、対処できずこの様だよ」

「だけど、あんた達は運がよかった。襲われた時にB・Aランク冒険者に命を救われたんだからな」

「どこが!」

「お前達は生きているじゃないか?パーティーの仲間は死んでしまっただろ?」

「はっ・・・・・・こうなってしまえば、俺達もあの時仲間と一緒に死んだ方が幸せだったかもしれない」

「馬鹿な事を!お前達は、死んだ仲間の為にも長生きしなきゃいけないんだよ」

「こんな姿で長生きだと?馬鹿言ってんじゃねぇよ!生き地獄じゃねぇか!」

「あんた達は、こんな経験してギルドは頼りにならないとわかっただろ?」

「いきなりなんだよ?」

「俺は、ギルドにあんた達の生活費を保証してやれと言ったんだがな・・・・・・」

「「「「「はっ?」」」」」

「ヒロトシが、いやヒロトシ様がギルドに生活費の保証?いや、貴族様がギルドに関与などできるはずが・・・・・・」

「結局、ギルドは自分達の都合のいいように解釈して、欠損した冒険者にFランクの雑用を押しつけただけだったか」

「何を言ってんだ?」

「まぁ、こっちの話だ。それより話がある。聞いてくれないか?」

「話だと?今さら、俺達に何の話があるんだよ」

「君達、全員俺の奴隷にならないか?生活の保証は心配はいらない」

「「「「「馬鹿言ってんじゃねぇ!」」」」」
「奴隷にならないかだと?」

「ああ。このままじゃ生き地獄なんだろ?」

「はぁあ!奴隷になっても・・・・・・」

「俺の奴隷になっても地獄か?ライラを見て本当にそう思うか?」

「しかし、俺達を奴隷にしてもあんたにメリットがないじゃないか?」

「奴隷になれば、お前達は俺の家族だよ。その怪我も治してやるよ」

「欠損は、エリクサーがいるんだぞ?そんな重傷者がここに何人いると思っている?」

「200人以上かな」

「エリクサーはダンジョンからしか取れねぇ。オークションで何億ゴールドもしてだな」

「そんな事知ってるよ。まぁ、なんにせよ退院したら君達の好きにすればいいよ。このまま冒険者ギルドに、いいように扱われて一生を終えるか?俺の奴隷になって一生を終えるか?」

「なぁ?ヒロトシ様の奴隷になれば何をやらされるんだ?」

「俺の村に来てもらう。そして、その村で冒険者として暮らしてもらうつもりだ。当然だが、俺の奴隷になってもらうので冒険者ギルドは脱退だな」

「冒険者にもどれるのか?」

「当然だが、平民としての自由は無くなるが衣食住の心配はないよ。ライラを見てわかるが、奴隷食ではないし、冒険者として活躍してもらうので栄養のいいものを提供する」

 入院していた冒険者達は、ヒロトシの後ろに立つ護衛メンバーを見た。
 ミランダやアイリーン達は、奴隷だが女性らしい丸みはあるが、たんぱく質も与えられ一流の体格を持った冒険者のようだった。
 ヒロトシは、入院していた冒険者に一人一人お見舞いして提案してまわった。そして、病院を後にしたのである。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠
ファンタジー
大学受験に失敗し引きこもりになった男、石動健一は異世界に迷い込んでしまった。 特殊な力も無く、言葉も分からない彼は、怪物や未知の病に見舞われ何度も死にかけるが、そんな中吸血鬼の王を名乗る者と出会い、とある取引を持ちかけられる。 その内容は、安全と力を与えられる代わりに彼に絶対服従することだった! 吸血鬼の王、王の娘、宿敵、獣人のメイド、様々な者たちと関わる彼は、夢と希望に満ち溢れた異世界ライフを手にすることが出来るのだろうか? ※こちらの作品は他サイト様でも連載しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...