研磨職人！異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

第７章 新たな進化

４５話 対応策

　ミルファーは、ヒ美研に押し掛けている冒険者を追い返していた。

「とにかく今は、冒険者達をなんとかしていただけますか？」

「は、はい！」

　マイン達は、ミルファー達ギルド職員に任せて店を閉める事ができた。ミルファーの説明を聞いた冒険者は、怒りを露にしてギルドに訴えたのだ。

「ヒに、そんな馬鹿な事をしたやつは誰だ？」

　ミトンの町では、Ｂランクに上がったばかりの冒険者が急増していたのが、今回の騒ぎに発展したようだ。
　ミトンの町周辺は豊かになり、駆け出しの冒険者も昔と変わってランクが上がりやすくなっていた。
　薬草採集も、簡単にこなせるようになり、薬草採集だけでも、その日の飯に困らなくなっていた。
　つまり、冒険者は貯金がしやすく、昔では考えられない装備が、低ランクで買うことができ、ゴブリンやオークを討伐する事ができるようになっていたのだ。
　そうなると、ヒ美研を利用できるＢランクに昇格ができて、成りたてのＢランク冒険者達がいい気になって暴走した形になった。

「ギルドは、何をやっていたんだ？そんな精神が成長してないやつらをＢランクに昇格させて！」

　古参の冒険者達が、ギルドに文句を言っても後の祭りだった。ヒ美研は、閉まってしまい今さら謝罪をしようにもその門は固く閉ざされていた。

　ギルドマスターは、地下の部屋で座り込みをしていた冒険者達を集めて言い聞かせていた。

「お前達はいったい何を考えているのだ！」

「だけどよ！俺達だってヒの客になれたんだ。マインちゃんと普通に話せる仲になれたんだぜ？」

「馬鹿か！それは客商売だからだ。お前に気がある訳じゃないだろうが！」

　ギルドマスターの言う事が正解である。

「しかし・・・・・・」

「しかしもへったくれもない！どうするのだ？ヒ美研がミトンの町から撤退したらとんでもない事になるんだぞ？」

「撤退ってそんな・・・・・・あんな人気店が撤退してヒロトシ様にどんな得になるんだ？」

「お前達は本当に馬鹿なんだな！ヒロトシ様にとって大事なのは売り上げじゃない！家族なんだよ。その家族に迷惑をかけたお前達は・・・・・・」

　そう言って、ギルドマスターは頭をかかえてしまった。



　その頃、マイン達は恐る恐るヒロトシの部屋に入った。

「戸締まりはしっかりしてきたかい？」

「「「「「はい」」」」」
「ご主人様、申し訳ありません！お店を閉めさせて迷惑をおかけしました」

「何を謝っているんだよ。あれはマイン達が悪いんじゃないよ」

「ですが・・・・・・」

「それより、マイン達が冒険者にあれぼど心の支えになっているとは思わなかったよ」

「やめてください！私達はご主人様の物です」

「いやいや・・・・・・そういう事を言っているんじゃないよ」

「「「「「えっ？」」」」」

「お前達は、俺の為にちゃんと客に向き合っていたからああいう事が起きたんだよ。本来、お前達の役目はギルド受付嬢達だ。しかし、冒険者達はギルド受付嬢より、お前達に支えになってもらっていたからああなっただけだよ」

「しかし・・・・・・」

「ああ、暴走した冒険者達には困った物だ。あれはストーカーと一緒だからな」

「「「「「ストーカー？」」」」」

「いや、なんでもない。こっちの話だ。だけど、店を撤退しても意味がないと思う」

「どういう事ですか？」

「お前達は、王都の２号店にいくだろ？」

「はい！」

「あいつらは、王都に押し掛けて来るぞ」

「ま、まさか？」

「ああ言うやつらをなめたらいけない」

　日本のような、ストーカー規制法のないここでは逃げても意味はないからだ。接近禁止令もないし、あの冒険者達は店で暴れたわけでもなかったのだ。
　ただ、マイン達をギルド受付嬢と同じようにして心の支えにしていただけである。

「しょうがないなぁ。マイン達は、ミトン本店で頑張ってもらうか」

「ご主人様が折れる必要は！」

「今回、暴走した冒険者は悪くないよ。当然マイン達も悪くない！」

　悪くないと聞き、マイン達は安堵した。店を閉めさせてしまい迷惑をかけたので、奴隷商に売られても文句は言えないからだ。
　ヒロトシはそんな事はしないが、やはり奴隷の立場からは不安になるものである。

　そして、ヒロトシは数日間店を閉めさせ、後日ギルドに訪問した。