上 下
284 / 347
第7章 新たな進化

20話 スティーブの自業自得

しおりを挟む
 生産ギルドにやってきた、薬草問屋の営業は今まで仕入れた薬草を高値で売っていたたけだ。
 他の業者を国の権力者に排除してもらい、独占業者で好き放題してきただけだった。
 そして、国の権力者が通用しなくなったライバル業者が現れた今、ギルドを始め錬金術師達が優位に立ち、薬草を購入してくれないのだ。

「だ、旦那様!ギルドが薬草を購入しません」

「なんだと!それでお前は何もせず帰ってきたのか?」

「それがギルドが薬草一株を4ゴールドなら買い取ってやると・・・・・・」

「4ゴールドだと?馬鹿にしているのか?」

「私もそのように反論しました。しかし、ヒロトシの薬草は魔力をたくさん蓄えた高品質の薬草で、その薬草があるので、うちの薬草は要らないと!」

「ぐぬぬぬ!」

「ヒロトシは、完全にうちを潰すつもりで動いてます。旦那様、もう一度教皇様に!」

「む、無理だ・・・・・・」

「な、何を言っているのですか?」

「教皇様からは、もう援助はしてもらえん」

 スティーブは、教会本部から切られていた。教会はスティーブと手を組むと、ヒロトシの店と敵対することになる。
 そうなれば、ギルドはヒロトシを取り聖教国から撤退すると面と向かって公言されたと明かされ、教皇から暇を言い渡された。

「そんな!今まで我々がどれほど聖教国に尽くしてきたか!」

「・・・・・・もう聖教国は終わるかもしれない」

「旦那様、いったい何を!」

「教会本部は、我々にかまっていられないのだ」

「えっ?」

「今、聖教国の平民達が大人しくしているのは、聖女様のおかげだ。あの方がいる限り女神様の声を伝えてくれる」

「当たり前です。教会が繁栄する事で我々の生活が成り立つのですから!」

「その言葉を教皇様が聖女様から聞き、我々平民に伝えてくれる役目だったが、聖女様が失踪なされたのだ」

「聖女様が失踪?どういうわけですか?」

「そ、それが・・・・・・教皇様は聖女様を監禁していたという噂も出ておるのだ」

「聖女様を監禁?それが本当なら・・・・・・」

「ああ・・・・・・聖教国は、いや、教会本部の幹部達が終わるかもしれない。聖女様が失踪できる訳がなく、監禁させた聖女様を救い出されたという方がしっくりくるのだ」

「それが本当なら我々は!」

「ああ・・・・・・」

「ですが、教会本部から聖女様を救い出すなんて可能なのですか?」

「一人おるだろ?」

「ま、まさかヒロトシが?」

「そんな事ができる人間が他におるか!」

 スティーブは教会から切られ、頼りにしていた教皇が聖女様を監禁していいように扱っていたと知りどうすればいいのかわからなくなっていた。
 
「だ、旦那様!ヒロトシが店に!」

 スティーブは頭をかかえていたとき、別の従業員が書斎に飛び込んできた。営業の人間もヒロトシが店に来たと聞き身を乗り出した。

 スティーブ達は、急いで店のホールに顔を出すとそこには、ヒロトシとその護衛メンバーがいた。

「き、貴様!何をしに来た!」

「あんたがスティーブさんかい?」

「そんな事をわざわざ言いに・・・・・・」

「そんなわけないだろ?どうだ?店の経営は諦めたか?」

「何を・・・・・・」

「あんたの言いなりになっていた錬金術師はいなくなり、最後の取引先のギルドからも切られ、頼りにしていた教皇からも切られ、もうどうしようもないだろ?」

「貴様のせいで!」

「俺のせいじゃなく、今まであくどい商売してきた付けが回ってきただけだ!」

「ぐぬぬぬ・・・・・・ぬかせ!」

「もうどうしようもないだろ?薬草を購入してくれる所がもうどこにもないんだぞ?」

「何もかも貴様のせいで!」

「だから、俺のせいじゃないって。それより、薬草問屋を諦めなよ。今なら、まだ傷は浅いだろ」

「馬鹿な!すでに赤字が出ておるわ!」

「だが、本年度の税金は支払えるだろ?今なら薬草問屋を解体したら、何もしらない従業員には迷惑はかからんだろ?」

「ワシはどうなる?借金をかかえて奴隷落ちだ!」

「そりゃ、お前の自業自得だ!俺の知ったことか」

「ぐぬぬぬ!」

「従業員の退職を認めて、薬草問屋を解体しろ。商売ギルドに申し立てしろ」

「誰がするか!まだ、薬師には薬草が売れるからそこから持ち返してやるわ!」

「そうか。ならしょうがない」

 そう言い残し、ヒロトシは薬草問屋を後にした。そして、ヒロトシはポーション屋で次の手に出た。

「マーガレット、お前薬を売り出すから頑張ってくれ」

「わかりました」
「「「「「「はい!」」」」」」

 マーガレットを主任として、部下達が元気よく返事をした。これにより教会の収益がなくなり、悪徳薬師が一掃される事になる。
 スティーブは、まさかこんなすぐに薬を売り出すとは思っていなくて、従業員から報告を受けてその場に崩れ落ちた。

 そして、スティーブの薬草問屋は半年後聖都からなくなり、奴隷に落ちたのだった。その際、薬草問屋の幹部達も責任を追求され、贈賄に加担していた事で奴隷に落とされた。
 後の従業員は、薬草問屋がつぶれてしまい給料の支払いがなくなり、迷惑をかけられたが後日、スティーブと幹部達が奴隷に落ちたお金が商人ギルドから支給された。
 中には、その支給が間に合わず借金をかかえて者もいたという。スティーブがあの時ヒロトシの言う通りにしていれば、迷惑をかけられなかった人間であり、不幸だと言うしかなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

処理中です...