研磨職人！異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第７章　新たな進化

６話　町を出るのも一苦労

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　ヒロトシは、アンシーンサーバントの魔法を唱えた。すると、光輝く人形の魔法生命体が現れた。ヒロトシはアンシーンサーバントを５体作り出し、それぞれの生命体に、研磨スキルを複写した。

「お前達は、お客様の装備品を注文通り研磨してくれ」

　ヒロトシが指示を出すと、敬礼をして装備品を磨きだした。

「これなら俺がいなくても仕事が止まることはないな」

「主、だんだん人間じゃなくなってきたな」

「おいおい。まだ人間だぞ」

「「「「「まだ？」」」」」

「なんか、ミレーヌさんからこれ以上強くなると進化するかもしれないって言われたからな」

「人間が進化するなんて、何千年に一回あるかないかじゃないか？」
「さすが主殿じゃなぁ」

　研磨工房では、ガイン達が感心していた。ヒロトシは人間の進化って何千年に一人の割合なのかと、他人事のように聞いていた。

「へえ。人間の進化って滅多に起きないんだな」

「まあ、人間の寿命は長くて８０年ほどだからしょうがないと言えばしょうがないんだけどな」

「なるほどな」

「それより主は明日から、町をでるのか？今度は聖教国に行くとなると長い間会えなくなるな」

「いや、毎日帰って来るよ」

「そ、そうなのか？だったら、こいつらはいらないんじゃないのか？」

「いやいや、俺は聖教国までトラックで運転しなくちゃならないだろ？」

「なるほど。その間こいつらが磨き続けるのか」

　ヒロトシとガインが、話している最中もアンシーンサーバント達は黙々と磨き続けていた。

「１日運転して、ハウスを建てたらハウスは安全地帯だからな、転移マットでここに帰ってこれるからな」

「なるほどな。次の日は、転移マットでハウスに帰れば昨日の到着点からスタートすればいいのか」

「そういう事だ！」

「ところで、主は聖教国で何をするつもりなんだ」

「ああ。平民達の生活を楽にするだけだよ」

「それだけ？」

「ああ。それだけだ」

　ヒロトシは、聖教国の権力者に一泡くわせようと悪い笑みを浮かべていた。そして、次の日ミトンの町を出ようとしたら、兵士達に呼び止められた。

「ヒロトシ様、何処へ行かれるのですか？」

「ちょっと聖教国の聖都まで行ってくるよ」

「そうですか。気をつけ・・・・・・はぁあ！聖教国ぅ～～～～～～～～！」

「なんだよ。いきなり大きな声を出すなよ。耳がいたいじゃないか！」

「ちょっと待って下さい。ヒロトシ様は往復で何年ミトンの町を留守にするつもりですか？シルフォード様は知っておられるのですか？」

　兵士の大声に、城門前は冒険者や町の人達で騒然となった。

「ヒロトシ様！そんなに長く留守にするのか？」
「研磨の依頼は、その間どうなる？」
「サンライトの営業は？」
「鏡の依頼はどうなるんだ？」

　今や、ミトンの町の経済はひ美研なくしては成り立たなくなっては言い過ぎだが、それでもヒロトシが長期にわたりいなくなれば、困る人間が続出するのは確かである。

「ああ。皆さん！うちの店を閉める事はしませんし営業は続けます。安心して下さい！」

「「「「「それでもヒロトシ様はいつ、ミトンの町に帰ってくるのですか？」」」」」

　ひ美研の営業を心配より、ヒロトシが長期にわたりいなくなる方が心配だった。

「まあ、待て待て！俺は聖教国に行くが、町からいなくなる訳じゃないから！」

「「「「「「本当ですか？」」」」」」

　町の人達は、ヒロトシが他国に行く事が心配だったようだ。今まで、町から離れると聞いても、王国領のどこかだったので安心していたのだ。

「それに、ミトンの町にはひ美研もサンライトも営業している。俺だけがこの町からいなくなるのはおかしいだろ？」

「「「「「「「たしかに！」」」」」」」
「でも、大商人になれば店を任せて、他の地に移り住む事もあるだろ？本当にどこにもいかないのか」

「おいおい。俺だけが他国に住むなんて言ったら、セバスやマインは絶対許可しないし俺について来るぞ」

「「「「「「た、確かに！」」」」」」

　日頃からヒロトシと奴隷達の関係性を知っている町の人達は安心した。しかし、兵士達は違ってシルフォードを呼んでくると言って、ヒロトシ達を出発させてくれなかった。

「ちょっとお待ち下さい。このままヒロトシ様を行かせると我々がシルフォード様に叱られます」

「大丈夫だって、毎日帰って来るよ」

「何を訳のわからないことを！聖教国まで下手をすれば、一年かかるのですよ。いくらトラックがあると言っても、船を使う事になればトラックより時間はかかります」

「わかったよ。シルフォード様に連絡入れて出発するよ」

　ヒロトシは、トラックをUターンさせてミトンの町の中に入って、シルフォード宅に兵士と共に向かったのだった。

「ヒロトシ君が聖教国に向かおうとしただと？それでもう行ってしまったのか？」

「いえ、行くのを止めてここに連れてきました」

「そ、そうか・・・・・・よくやった。お前達英断だったぞ！それでヒロトシ君は？」

「客室に案内させていただきました」

「わかった。すぐに行く」

　シルフォードはあわてて、ヒロトシの待つ客室に入室したのだった。

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