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第6章 研磨という職

閑話 女神の誤算

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 ここは天界で、ミレーヌとジェシカが、ヒロトシと司教達の会話を見ていた。

「嘘でしょ?」

「ミレーヌ様、ヒロトシさんは何で、聖教国にあのような事を?」

「本当です・・・・・・あれでは、司教達は教皇に正直に報告して、ヒロトシ様が聖教国から要注意人物と認定されてしまいます」

「教会の改装依頼は頼みづらくなりますよ」

 ヒロトシが、司教達に自分はやり方を変えるつもりはないと公言したのだ。
 聖教国でも、平民達が不当な扱いは普通にされていたからだ。聖職者の中には病気で苦しむ平民達に魔除けの札を買わせたり、ヒールの治療費をぼったくったりとやりたい放題であった。
 聖教国では、聖職者やヒーラー、錬金術師が権力を握り、回復能力を使ったアコギな商売が横行していた。

「ヒロトシ様には、教会の改装をしてもらい、聖教国の実態を知ってほしかったのに!」

「ミレーヌ様、このままでは聖教国は、ヒロトシさんに受注はしないかと?」

「ですよね・・・・・・」

 ミレーヌは、聖教国にヒロトシの事を教えて、改装工事の依頼を出すように仕向けていた。なのに、ヒロトシは視察団に権力者にとってのデメリットを話してしまったのだ。
 ミレーヌは、聖教国にヒロトシを送り込むことで現状をなんとかしてほしかった。

 視察団は、ヒロトシの話を聞き思い悩んだ感じで席を立ち、ヒロトシの屋敷を後にした。

「旦那様?今日はどうなされたのですか?」

「何かおかしい事があったか?」

「いえ、そうではないのですが?あれでは仕事の依頼が来ないかもしれません。というより、わざとそのように仕向けていたように思います」

「さすが、セバス。よく見てるな」

「誰でもわかりますよ。ですが、何故そのような事を?」

「この世界の人間ってプライドばかりじゃないか」

「どういう事ですか?」

「うん。あんなやつらと俺は仕事をしたくないからだよ。はっきり言って王国貴族達でお腹一杯だ。それなら、ミトンの町で冒険者相手に研磨の仕事をしてたいからな」

「それでは、王国や生産ギルドが困るのでは?」

「いや、それはないだろ?聖教国が依頼を出さないだけだ。俺がやりたくないとは言ってないだろ?」

「では、聖教国が改装工事の依頼を出したら受けるのですか?」

「まぁ、そうなるけどな」

「旦那様なら、直接断ることもできるのでは?」

「できるけどね。今回はちょっと気になる事があったから、聖教国に選択させる事にした」

「気になる事?」

「ああ!聖教国のバックについている人だよ」

「バックに?」

「ミレーヌさんだよ」

「女神様なら素直に受けた方がいいのでは?」

「いや、そんな事したら後々面倒臭い事になるから嫌だ!」

「旦那様は女神様相手にも容赦がないですね」

「当たり前だろ!」

 女神ミレーヌは、天界からヒロトシとセバスの会話を聞いて唖然となっていた。

「ヒロトシさんは女神様の考えを見破ったみたいですね」

 ジェシカは、ミレーヌの顔を見て苦笑いを浮かべていた。

「くぅ~~~~~~!やっぱりヒロトシ様にはお見通しか」

「やっぱり、ちゃんと報酬を用意してお願いした方がいいのでは?」

「と、とりあえず、聖教国の出方を見てからにしましょう」

 それから、聖教国の視察団はいろいろ見て、近隣の町にも足を運び、聖教国へと帰っていった。
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