研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第6章 研磨という職

61話 司教達の不安

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 ヒロトシが全員から、ツッコミをもらって客室は変な雰囲気になっていた。

「ヒロトシさん、冗談はそれくらいにしてもらえませんか?」

「俺は冗談なんか一切言ってないよ」

「言ったじゃないですか?教皇様と聖女様に謝罪って、冗談でもそんな事を!」

「今回は、説明をしていただけだからね。俺も司教様が本当にわからない呈で話しているから、依頼があれば受けさせて頂きます。但し、貴族達のように仕事を与えてやると言う態度が見えたならお断りしますよ」

「どういう事ですか?実際仕事を与えているのは、こちらではないですか?」

「確かに仕事をいただいています。しかし、俺はこの仕事を誇りに思ってやっています。なので、金を払うのは聖教国だからいいなりになって働けというのは納得出来ません」

「納得とかではなく、お金を払うのだからこちら側が!」

「どちらかが偉いとか関係ないです」

「そんな馬鹿な事が・・・・・・」

「わかりませんか?」

「「「「「「まったく!」」」」」」

「俺はこの研磨業に誇り持って働いてます。しかし金をたくさん払うのだから言う事を聞けというのは納得出来ない。それなら、冒険者達からの仕事が良いということです。仕事は楽しくするのが一番ですからね」

「嘘でしょ?聖教国の依頼を断って、冒険者を取ると言うのですか?」

「ええ!俺達、現場の人間を見下すような態度だと気分よく仕事が出来ないからね」

「いやいや、訳がわかりません。なんで払う側が気を使わねばならないのですか?」

「だから、それを良しとする職人を探せば良いんですよ。俺は尊重しあえて対等の立場で仕事をする方がいいんだ」

「ヒロトシさんの言う事はおかしいです。なんで教会が気を使わねばならないのですか?お金を払うのだからこちらの言う事を聞かないと!」

「そこまで、どちらかが偉いとか下手に出ると言うのなら、聖教国が下手にでないと仕事をやって貰えないのですよ」

「「「「「馬鹿な事を!」」」」」
「なんで金を払ってやって貰わないといけなくなるのですか?」

 とうとう、司教達が顔を真っ赤にして怒鳴ってしまった。

「わからないですか?」

「わかりません!」

「ミトンの町のようにきれいできらびやかな教会にできるのは、大陸広しと言えど、ひ美研だけだからですよ」

「「「「「あっ!」」」」」

「つまり、どちらかが偉いとか言うと損するのは聖教国側なんですよ。うちの研磨職人は全員立場は奴隷です。教会が神様に失礼だから、職人を平民の職人に代えろとか納期をもっとはやくしろ等、命令はまず出来ないと思ってください」

「もし、したらどうなると言うのですか?」

「やってみたらわかりますよ」

「教えてくれないのですか?」

「こういう事は、体験しないとわからないものだからな。聖教国が、馬鹿じゃなければここまで詳しく説明したから、俺との商談はお互い気持ちよく取引ができるだろ?」

「・・・・・・」

「こういう事もちゃんと、教皇様に報告した方が司教様の為にもなると思いますよ」

「どういう・・・・・・」

「昨日、シルフォード様から俺の性格をきいたのでしょ?」

「なぜそれを?」

「じゃないと、司教様の行動の説明がつかないからですよ。今まで、俺はいろんな権力者と交流してきて、ここまで我慢強く俺の話を聞く人は初めてですよ」

「うっ」

「俺は、ここでは珍しい人間なのは自覚しているつもりです。王国でも、ローベルグ様を始め宰相様達の普通の常識にたてついて、弱い人間の権利の主張をしました」

「弱い人間の権利?しかし、ローベルグ様と言えば善政していると有名では?」

「はい。しかし、それは貴族の立場から見たものです。賄賂は普通に行われ、平民達の生活は一向に楽にならない。貴族に意見をするなんて、不敬罪に怯えもっての他だ!」

「それは・・・・・・」

「俺はね。貴族達の考え方が納得出来なかった。魔物や盗賊から守ってやってるから、税金を払うのが当然っておかしいってね」

「なんでですか?実際平民達は城壁や兵士から守られているではありませんか?」

「では、スタンピードが起きた時、冒険者はどうしてますか?そういう名目で税金を取るなら、貴族達だけで平民達を守らないと駄目だよ」

「そんな事が出来るわけが・・・・・・」

 ヒロトシの説明を聞き、司教は焦り顔から冷や汗が流れた。司教はヒロトシの考え方が聖教国にも、及ぶのではないかと思っていた。

「つまり、税金は納めた者のものです。税金は貴族達が裕福に暮らすものじゃないんだよ。俺はそれを王国でたてついて改革している途中なんだよ」

「うっ嘘ですよね・・・・・・」

「本当ですよ。今、王国ではローベルグ様が賄賂根絶しようと奮闘中です」

「なんでそんな事が?」

「当然ですよ。それをしないと王都が滅亡してしまうからですよ」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

 ヒロトシの説明が理解出来なかった。王国が滅亡する?なんでそれを回避するために、ヒロトシの言う事を聞かないと駄目なのか本当に訳が解らなかった。

「司教様は、なんで王国が滅亡するのか理解出来ないのでしょ?」

「はい・・・・・・」

「今まで、貴族達が好き勝手にしてたからです。それだと、国が回らないことを教えただけです。そういう危機感がなければ、人は変わらないんです」

「あの・・・・・・ヒロトシさんは、聖教国にもそれを求めるおつもりですか?」

「そんな面倒臭い事したくないなぁ」

 それを聞いて、司教達は安堵した。

「しかし、聖教国は俺に教会の改装依頼するのですよね?」

「はい。私はそのように思っております。ただ、教皇様に報告して検討してからになります」

「俺は、聖教国相手にもこの態度を変える事はありません。その結果、聖教国にも口出しする可能性がないとは言い切れませんよ」

「「「「「えっ?」」」」」

「つまり、聖教国が普通だと思っている事が、俺にとって普通じゃなければ、平民達の為に動くと言う事ですよ」

「どのように聖教国に口出しを!」

「平民達が幸せに暮らしてたら問題はないですよ」

 ヒロトシは、笑顔で公言した。しかし、司教達はその笑顔が無気味に見えたのだった。
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