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第6章 研磨という職

48話 教会の誤算

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 ヒロトシは、教会関係者達の言い分に呆れて帰っていくのを苦笑いで見送った。そして、このやり取りが運悪く、町に噂が出回ってしまったのだ。

「おい!きいたか?」
「ああ!聞いた聞いた。教会の人間やっぱり、何も悪いと思ってねぇな!」
「ヒロトシ様に、教会の事を丸投げしようとして、ヒロトシ様に断られたらしいぜ」
「そりゃそうだぜ。ヒロトシ様には、関係の無い話じゃないか」
「だよね。そんなの学の無いあたしだってわかることだわ」
「「「「「そうだな」」」」」
「しかし、教会の奴ら自分達が何をやったのか全然わかってないんだな」
「まったくだぜ」

 教会の聖職者は、町の人達に反感をかってしまっていた。この事で、教会には誹謗中傷がさらに酷くなっていた。
 この事で聖職者達は、どうにもならない状態になってしまった。

「ヒロトシ様!なぜ我々の事を町に噂をながしたのですか?」

 シスターのマリアは、ヒロトシの屋敷に苦情をいれにきたのだ。

「ちょっと待ってくれ。俺は貴方達教会の事は何も言ってないぞ」

「嘘です。町中に噂が広がって前より教会への嫌がらせが酷くなっています」

「いやいや、俺には教会の事は関係の無い話だと言ったじゃないか。俺は教会に関わることはごめんだからな。噂として流したら、こうして貴方達が苦情を言ってくるのはあきらかだろ?」

「じゃあ何で町の人達が教会の事を悪く言っているのですか?噂の内容は、この間訪問させてもらった事なんですよ」

「そんなの知らないよ。俺達は絶対この間のことは何も言ってないぞ」

「だったら何で誹謗中傷が、ヒロトシ様に迷惑をかけるなとか、教会が反省の意を示せとか言われるのですか?」

 ヒロトシはマリアに責められていると、フッと姿を現す二つの影かあった。
 その二つの影は、シアンとセレンであり、二人の顔は怒りで満ちていた。

「「ご主人様失礼します」」
「この女、もう我慢がなりません!あたし達が始末してよろしいでしょうか?」
「闇に葬る・・・・・・」

「ひっ!」

 マリアは、シアンとセレンの怒りの表情に、小さく悲鳴をあげた。

「おいおい。いきなり何を言ってんだ」

「こいつら教会の連中は、自分達の事は棚にあげてご主人様に文句ばかり言ってもう我慢なりません」
「そうです。今回町の人達に噂が広がったのは、こいつら自分達のせいなのに!」

「何を言っているのですか?私達が自分で自分の首を絞めたと言うのですか?そんな事をするわけないじゃないですか?」

「それは本当なのか?」

「はい。こやつらは前の訪問で、ご主人様に追い返された時、協力してくれなかった事を不満に思い愚痴を言いながら教会へと帰ったのです」

「まさか、教会に帰る道中で愚痴を?」

「はい!それを町の人達に聞かれていたのです。そして、その話は一気に噂として広がったのです」

「そんなの嘘です!」

「町の人達に直接聞いた話です」
「貴方達は本当に愚かと言うしかありません」

 それを聞いた、マリアはその場に崩れ落ちた。

「マリアさん、これはもうどうしようもないな」

「そんな・・・・・・・私達はいったい何をやっているのですか」

 マリアは、愕然となり自暴自棄のように、ひ美研を出ようとした。

「ちょっと待ちなさい!」
「そうです!何を黙って出ていこうとしている」

「えっ?」

「えっじゃあない。ご主人様に難癖をつけて、謝罪の一つもないとはあまりに不敬ではないか?」
「やはり、この女始末してよろしいでしょうか?」

 シアンとセレンは、マリアを睨み付けた。その言葉を聞き、マリアは顔を真っ青にして、ヒロトシに土下座をした。

「申し訳ありません。私の勘違いでした」

「ああ。もういいよ」

「「ご主人様!」」
「この女は不敬罪で処刑すべきです」
「そうです!ご主人様は王族の一人なのです」

「まぁ待て!処刑までする必要はないよ」

「ありがとうございます」

 マリアはヒロトシの恩情に感謝した。しかし、それに不満だったのは、シアンとセレンだった。

「ご主人様!こんな不満にはありえません」
「そうです!ここで恩情を与えては!」

「まぁ、二人の気持ちはわかるが・・・・・・・」

「「だったら!」」

「俺の意見も聞いてもいいだろ?」

「「はい・・・・・・」」

「マリアさんも聞いてくれ。今回、貴方が教会の代表として乗り込んだと理解してよろしいでしょうか?」

「はい」

 マリアはそう答えるしかなかった。実際他の聖職者達は、苦情を言ってくる町の人達の対応に追われていて、壁の落書きを消していたりしていた。
 そして、今回の事でヒロトシには責任をとってもらおうと、教会の代表としてやって来ていたのだがまさか自分達が原因で悪化していたとはおもいもしてなかったのだ。

 マリアも、相手がヒロトシだった事で調子にのっていた。これが普通の貴族だった場合確実に不敬罪で、その場で処刑されていたはずである。

「じゃあ、俺は教会側に侮辱されたとして、損害賠償を請求します」

 それを聞いたマリアは顔を真っ青にした。王族を侮辱したとなればどれ程の損害賠償を請求されるのかわからなかったからだ。
 そして、後日教会に向かうとマリアに言って、今日のところは帰ってもらった。
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