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第6章 研磨という職
28話 想定外
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ヒロトシは、王城から帰ってきて、下を向いて考えこんでいた。そこに、シアンとセレンが声をかけてきたのだった。
「「ご主人様?どうでしたか?」」
「このままじゃ、王国は滅びそうだな……」
「そんな!もう時間がありませんよ?」
「うん……わかっているよ。だが、前のような強さの王国はもうないからどうしようもないな……」
ヒロトシとシアンとセレンは深刻な話をしていた。
「やはりビアンカを王都で働いてもらうか?」
「今のところ、それがベストの状況かと……」
「しかしなあ……ビアンカも、今や俺の意見に賛成してるし意見を覆したりしないだろうな……」
「ですが、私達の調べによれば明らかに魔の森が拡がっているのですよ?」
「そうです。王都にまでは魔の森が拡がる事はありませんが、あの辺りは多分危険地帯になりかねないのです」
シアンとセレンの調べに寄れば、あの土地からビアンカがいなくなったことで、豊穣の土地じゃなくなった。そればかりか、魔の森が拡がってきていることが分かったのだ。王都がある場所までは広がらないと言う予想だが、魔素の多い場所が拡がる事で王都周辺には、強力な魔物が出現してもおかしくない土地になりそうと、シアンとセレンから報告を受けたのだった。
この報告を受けたのが、綿花問屋が賄賂を贈っていると判明したあたりだったのだ。この事を、王家に報告したらより一層自分達に依存してくるのは明確だった。
そのため、ヒロトシはローベルグに対して強い口調となっていたのだ。今この時も、毎日魔の森は1cmづつだが確実に広がっていたのだった。
ヒロトシは、ミトンの町に帰りビアンカと話していた。
「なあ、ビアンカ?」
「ヒロトシ、どうかした?」
「うん、相談なんだが2号店で働いてみないか?」
「何でそんな事言うの?嫌に決まってるじゃない」
「そうだよな……」
「ヒロトシが、そんな事を言うなんて何かあったの?」
「ああ……お前がこの土地に住み着いた事で、王都周辺は元に戻ったと言ったのは覚えているか?」
「うん、覚えているよ。今はここミトンが豊穣の地となったって言ってたね」
「ああ。そして結果、王都は貴族が好き放題して平民が生活しにくい町となっている」
「だけど、あたしには関係ないよ。あたしは人間の為に制限されたくないし、あたしはヒロトシの側にいるって決めたんだよ」
「それは分かっているんだが、王都周辺がな……」
「ひょっとして魔の森に何か影響出てきたの?」
「何で分かったんだ?」
「だって、あのあたりはあたしが住みつく前は、魔の森が目と鼻の先まで茂っていたもの。そうね。わかりやすく言えば、シュガーの村と同じような感じだよ。あはははははは!」
ビアンカは、無責任に笑っていたのだった。その笑顔を見てヒロトシは顔を青くしていた。
「はぁあ?シュガーの村と同じだと?」
「うん、そうだよ。まあ、今は人間が住みついているし、そこまでは広がらないとは思うけどね?まあ数万年前は、あの辺りは魔の森の入り口だったよ」
「ぐはっ!なあ、ビアンカ?」
「あたしは嫌だよ!サンライト1号店で働くのは楽しいし、お客様も良くしてくれて毎日が楽しいからね」
ビアンカは、何十億年と生きてきて今がとても幸せだった。ヒロトシの側にいることももちろんだが、1号店で働く事で毎日が充実していたのだ。そして、自分が働く事で平民達の生活が充実していく事も理解していた。
ここミトンの町では、シルフォードが町の人間の為に税金を使い、今や色んな施設が出来ていたのだ。それをしっかり理解していたので、王都に行っても貴族達に好き勝手される事が分かっていたので、王都には行きたくなかったのだ。
「ヒロトシも言ってた。賄賂で自分勝手にする貴族を少なくするまで、王都に行かなくていいって!」
「ああ……そうだよな」
「しょうがないな……もう一回忠告してもう少し様子を見ることにするか?」
そして、一週間後ヒロトシはミトンでの仕事を終え、王都に顔を出し王城へとでかけた。
「どうも!」
「ヒ、ヒロトシ様!」
王城の入り口で警備する兵士が、ヒロトシの姿を見てビックリしていた。
「何をビックリしてんだ?」
「ヒロトシ様、お願いします。主君の力になっていただきたいのです」
「その様子だと、王城もようやく事態を把握したのか?」
「えっ?どういう事ですか?我々は王都の経済を!」
「なんだ……まだそんな事をうだうだやっていたのか?それでローベルグ様は?」
「王都の内情を調べたところ、賄賂で私腹を肥やす貴族達を調べた結果、もう手に負えない事がわかって、ローベルグ様は引退を決意したのですが、殿下が……」
「ローベルグ様はやっと現状を把握したのか?」
「はい……しかし、殿下の方はこの状況を建て直す自信はないと……」
「まいったなあ……これだと今の状況は更に言いづらい」
「どういう事ですか?まさか、ヒロトシ様は王都を撤退なさるのですか?」
「今の状況はそうなる可能性が高いな」
「ちょっと待ってください!いったい何を!」
「まあ、いいや。ローベルグ様は会議室においでか?」
「はい」
「じゃあ、王城に入らせてもらうよ」
「よろしくお願いします、ご案内します。こちらへどうぞ!」
王城では、ヒロトシの案が採用される流れになっていた。ローベルグはブロッケン家とファート家を許した責任を取り引退することで、ハボリムに後を譲り犯罪は絶対に取り締まり、贈賄もハボリムの代では重大な犯罪にする事に決めたのだった。
しかし、この決定は王国史上類を見ない改革だった。その新しい事を先導してやっていく自信が、ハボリムには無かったのだ。
「失礼します」
「ヒロトシなんでここに?余は引退を決意した。だから!」
「ちょっと遅かったようですね……」
「何故そんな事を!今からでも十分王家の信用は取り戻せるはずだ!」
「いや……こういっては何ですが、政治と金だけの問題ではなくなってしまいました」
「どういう事だ!」
「自分勝手な貴族を逮捕し、もっと住みやすい王都を目指し、その上で税金を平民達の為に使ってもらうようになってから、ビアンカを2号店で働いて貰おうと思っていたのですが……」
「だから、王家ではお主の言う事を聞いて世代交代をしようと思い、贈賄という犯罪を撲滅しようとこうして、ハボリムを説得しようと!」
ヒロトシは、ハボリムの前でこんな事を言うのは忍びないが、目をつむりゆっくり謝罪した。
「申し訳ないです……これは俺の判断ミスでした」
「何を言っておる?」
「この地は、ビアンカがいなくなったことで、元に戻ったと言ったのを覚えていますか?」
「ああ。それがどうした?」
「うちの偵察員が情報を持ってきました。今、この時も魔の森が、南に拡がっています……」
「はぁあ⁉何を冗談を言っておる!」
「冗談ではありません……ビアンカの説明では、この辺りは数万年前は魔の森の入り口だったそうです」
「ば、馬鹿な……」
「ビアンカが言うには、今は人も増えここに王都も出来ているので、ここまでは魔の森も進出はしないだろうと言ってますが、このままでは目の鼻の先まで魔の森が広がるだろうと……」
「だったら、すぐにでもビアンカをこの地に!」
「申し訳ありません……ビアンカは王都には来たくないと……」
「馬鹿な!」
それを聞き、ローベルグは言葉に詰まり上級貴族はその場で膝から崩れ落ち、ヒロトシをこの会議室に案内した騎士は呆然となっていたのだった。
「何とかならんのか?」
「俺からは何とも言えませんね……だから言ったじゃないですか?このままでは王都は滅亡すると……まあ、俺もまさかこういう形で滅亡の危機を迎えるとは思いませんでしたが……」
「何を他人事のように言っておるのだ!」
「もう今から動いても時間が足りないからどうしようもありませんよ。今からハボリムがローベルグ様と世代交代しても、すぐに貴族達を処分出来ますか?」
「そ、それは……」
「今は証拠を掴んだ所で、自分は知らなかったと惚ける貴族ばかりですよ?」
「今はそんな事を言っている場合では!」
「そうですね……今から町のバリケートの強化や王国騎士団の人材育成など、やる事はたくさんありますが可能ですか?」
「そ、そんな予算は……」
「ですよね?」
それを聞き、王都の危機はスタンピードではなく、高ランクの魔物が生息する森そのものであり、その魔の森がスタンピードの様に王都を取り囲むと言われて、ハボリムとティアナも顔を真っ青にしていた。
「「ご主人様?どうでしたか?」」
「このままじゃ、王国は滅びそうだな……」
「そんな!もう時間がありませんよ?」
「うん……わかっているよ。だが、前のような強さの王国はもうないからどうしようもないな……」
ヒロトシとシアンとセレンは深刻な話をしていた。
「やはりビアンカを王都で働いてもらうか?」
「今のところ、それがベストの状況かと……」
「しかしなあ……ビアンカも、今や俺の意見に賛成してるし意見を覆したりしないだろうな……」
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「そうです。王都にまでは魔の森が拡がる事はありませんが、あの辺りは多分危険地帯になりかねないのです」
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この報告を受けたのが、綿花問屋が賄賂を贈っていると判明したあたりだったのだ。この事を、王家に報告したらより一層自分達に依存してくるのは明確だった。
そのため、ヒロトシはローベルグに対して強い口調となっていたのだ。今この時も、毎日魔の森は1cmづつだが確実に広がっていたのだった。
ヒロトシは、ミトンの町に帰りビアンカと話していた。
「なあ、ビアンカ?」
「ヒロトシ、どうかした?」
「うん、相談なんだが2号店で働いてみないか?」
「何でそんな事言うの?嫌に決まってるじゃない」
「そうだよな……」
「ヒロトシが、そんな事を言うなんて何かあったの?」
「ああ……お前がこの土地に住み着いた事で、王都周辺は元に戻ったと言ったのは覚えているか?」
「うん、覚えているよ。今はここミトンが豊穣の地となったって言ってたね」
「ああ。そして結果、王都は貴族が好き放題して平民が生活しにくい町となっている」
「だけど、あたしには関係ないよ。あたしは人間の為に制限されたくないし、あたしはヒロトシの側にいるって決めたんだよ」
「それは分かっているんだが、王都周辺がな……」
「ひょっとして魔の森に何か影響出てきたの?」
「何で分かったんだ?」
「だって、あのあたりはあたしが住みつく前は、魔の森が目と鼻の先まで茂っていたもの。そうね。わかりやすく言えば、シュガーの村と同じような感じだよ。あはははははは!」
ビアンカは、無責任に笑っていたのだった。その笑顔を見てヒロトシは顔を青くしていた。
「はぁあ?シュガーの村と同じだと?」
「うん、そうだよ。まあ、今は人間が住みついているし、そこまでは広がらないとは思うけどね?まあ数万年前は、あの辺りは魔の森の入り口だったよ」
「ぐはっ!なあ、ビアンカ?」
「あたしは嫌だよ!サンライト1号店で働くのは楽しいし、お客様も良くしてくれて毎日が楽しいからね」
ビアンカは、何十億年と生きてきて今がとても幸せだった。ヒロトシの側にいることももちろんだが、1号店で働く事で毎日が充実していたのだ。そして、自分が働く事で平民達の生活が充実していく事も理解していた。
ここミトンの町では、シルフォードが町の人間の為に税金を使い、今や色んな施設が出来ていたのだ。それをしっかり理解していたので、王都に行っても貴族達に好き勝手される事が分かっていたので、王都には行きたくなかったのだ。
「ヒロトシも言ってた。賄賂で自分勝手にする貴族を少なくするまで、王都に行かなくていいって!」
「ああ……そうだよな」
「しょうがないな……もう一回忠告してもう少し様子を見ることにするか?」
そして、一週間後ヒロトシはミトンでの仕事を終え、王都に顔を出し王城へとでかけた。
「どうも!」
「ヒ、ヒロトシ様!」
王城の入り口で警備する兵士が、ヒロトシの姿を見てビックリしていた。
「何をビックリしてんだ?」
「ヒロトシ様、お願いします。主君の力になっていただきたいのです」
「その様子だと、王城もようやく事態を把握したのか?」
「えっ?どういう事ですか?我々は王都の経済を!」
「なんだ……まだそんな事をうだうだやっていたのか?それでローベルグ様は?」
「王都の内情を調べたところ、賄賂で私腹を肥やす貴族達を調べた結果、もう手に負えない事がわかって、ローベルグ様は引退を決意したのですが、殿下が……」
「ローベルグ様はやっと現状を把握したのか?」
「はい……しかし、殿下の方はこの状況を建て直す自信はないと……」
「まいったなあ……これだと今の状況は更に言いづらい」
「どういう事ですか?まさか、ヒロトシ様は王都を撤退なさるのですか?」
「今の状況はそうなる可能性が高いな」
「ちょっと待ってください!いったい何を!」
「まあ、いいや。ローベルグ様は会議室においでか?」
「はい」
「じゃあ、王城に入らせてもらうよ」
「よろしくお願いします、ご案内します。こちらへどうぞ!」
王城では、ヒロトシの案が採用される流れになっていた。ローベルグはブロッケン家とファート家を許した責任を取り引退することで、ハボリムに後を譲り犯罪は絶対に取り締まり、贈賄もハボリムの代では重大な犯罪にする事に決めたのだった。
しかし、この決定は王国史上類を見ない改革だった。その新しい事を先導してやっていく自信が、ハボリムには無かったのだ。
「失礼します」
「ヒロトシなんでここに?余は引退を決意した。だから!」
「ちょっと遅かったようですね……」
「何故そんな事を!今からでも十分王家の信用は取り戻せるはずだ!」
「いや……こういっては何ですが、政治と金だけの問題ではなくなってしまいました」
「どういう事だ!」
「自分勝手な貴族を逮捕し、もっと住みやすい王都を目指し、その上で税金を平民達の為に使ってもらうようになってから、ビアンカを2号店で働いて貰おうと思っていたのですが……」
「だから、王家ではお主の言う事を聞いて世代交代をしようと思い、贈賄という犯罪を撲滅しようとこうして、ハボリムを説得しようと!」
ヒロトシは、ハボリムの前でこんな事を言うのは忍びないが、目をつむりゆっくり謝罪した。
「申し訳ないです……これは俺の判断ミスでした」
「何を言っておる?」
「この地は、ビアンカがいなくなったことで、元に戻ったと言ったのを覚えていますか?」
「ああ。それがどうした?」
「うちの偵察員が情報を持ってきました。今、この時も魔の森が、南に拡がっています……」
「はぁあ⁉何を冗談を言っておる!」
「冗談ではありません……ビアンカの説明では、この辺りは数万年前は魔の森の入り口だったそうです」
「ば、馬鹿な……」
「ビアンカが言うには、今は人も増えここに王都も出来ているので、ここまでは魔の森も進出はしないだろうと言ってますが、このままでは目の鼻の先まで魔の森が広がるだろうと……」
「だったら、すぐにでもビアンカをこの地に!」
「申し訳ありません……ビアンカは王都には来たくないと……」
「馬鹿な!」
それを聞き、ローベルグは言葉に詰まり上級貴族はその場で膝から崩れ落ち、ヒロトシをこの会議室に案内した騎士は呆然となっていたのだった。
「何とかならんのか?」
「俺からは何とも言えませんね……だから言ったじゃないですか?このままでは王都は滅亡すると……まあ、俺もまさかこういう形で滅亡の危機を迎えるとは思いませんでしたが……」
「何を他人事のように言っておるのだ!」
「もう今から動いても時間が足りないからどうしようもありませんよ。今からハボリムがローベルグ様と世代交代しても、すぐに貴族達を処分出来ますか?」
「そ、それは……」
「今は証拠を掴んだ所で、自分は知らなかったと惚ける貴族ばかりですよ?」
「今はそんな事を言っている場合では!」
「そうですね……今から町のバリケートの強化や王国騎士団の人材育成など、やる事はたくさんありますが可能ですか?」
「そ、そんな予算は……」
「ですよね?」
それを聞き、王都の危機はスタンピードではなく、高ランクの魔物が生息する森そのものであり、その魔の森がスタンピードの様に王都を取り囲むと言われて、ハボリムとティアナも顔を真っ青にしていた。
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