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第6章 研磨という職

27話 王族の覚悟

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 またしても、ヒロトシのおかげ?で貴族の不正が暴かれた。ヤンの綿花問屋は他の業者に対しての恐喝等が、次々に証言された。これはダイアン男爵が逮捕され気兼ねしなくてよくなったからだ。

 そして、ヒロトシの裁縫工場からスリーピングシープの寝具が販売されると、まず飛びついたのが貴族達だった。
睡眠が快適になる事で、日々の忙しさの疲れを取りたいと言う理由から注文が殺到したのだった。しかし、それらをヒロトシは無視をして購入したければ、店に買いに来てくれと言った。
 ヒロトシは、あくまでも貴族を贔屓するような事は無かったのだ。そして、スリーピングシープの毛布等、冒険者達にも人気だった。冒険で少しの時間で快眠が得られるからだ。求めやすい値段設定にしている事で、平民達も購入することが出来たのだった。

 そんな時、ローベルグがヒロトシを呼び出したのだった。

「よく来てくれたな」

「今日はどのような事でしょうか?」

 ローベルグは、個人的にヒロトシを呼び出していて、謁見の間ではなく大部屋に通されていた。そこには、ローベルグだけではなく、レオナやハボリムやティアナ、それに宰相や公爵が揃っていた。

「ヒロトシに聞きたい。お前は王国をどうしたいのだ?」

「俺がですか?」

「そうだ!」

「そりゃ住みやすい町にしたいだけですよ?」

「だったら、何故貴族達や業者を再起不能にさせる!」

「ローベルグ様は、この間のダイアンの件の事をおっしゃっているのですか?」

「言わなくともわかるだろう?」

「ローベルグ様は、ダイアンが逮捕されたのは、俺のせいだと言っているのですか?」

「そうは言わん。だが少しやり過ぎではないか?ヒロトシは、次々貴族達を……」

「そういいますが、あいつ等は王都の事を考えず出世する為に賄賂を受け取り、平民達の生活は何も考えていないではありませんか?」

「しかしだな……貴族は国の運営に必要な人材だ。こう何人も賄賂の証拠を提出されたら、人材が不足するではないか?」

「それだけ、王国は賄賂で成り立っていると言う事ですよ。そんなに言うなら賄賂は駄目だって言わなければいいんじゃないですか?」

「そんな事をしてみろどうなるか……」

「いやいや……ローベルグ様は、俺に賄賂を目をつむれと言っていたようなものでしょ?」

「そ、それは……もっとうまいことできないのかと言っているんだよ?」

「俺には無理ですね。王国で賄賂は犯罪でないと決めてくれたら、俺はそれに従いますよ。だって法律で罪には問わないと言っているんですらね。しかし、贈賄は罪と決められているんですよね?」

「そうだが……」

「今回の件は、ダイアンがヤンのバックに着く事で綿花を買い占めによる恐喝と賄賂の犯罪です。貴族から圧力をかけられ綿花の購入量の制限です。そして、ヤンの卸問屋だけがその制限を受けていなかったんだ」

「……」

「そうなれば市場に出るはずだった綿花が品薄になるのは明白で、綿花の価値が高騰したんですよ?そこでヤンの卸問屋が綿花を高値で売ると言うことです。その儲けたお金の一部がダイアンの懐に入ることになっていたんです。これは、王国に必要な人材ですか?」

「しかし、ダイアンは政治もしっかりする人間だった」

「だから言っているじゃないですか?」

「なにをだ?」

「贈賄は犯罪じゃないと、王国で発表しろと。そうすれば、俺もそんな証拠は集めないし、貴族が逮捕される事はないでしょ?」

「それはそうだが、そうなれば……」

「そうですね。今やっていない真面目な貴族達も賄賂をし始めますね。だって犯罪じゃないんですから」

「そうだ!そんな事になれば……」

「ローベルグ様もちゃんとわかっているじゃありませんか?そんな事になれば国は終わるって事が!」

「ぐっ……」

「だから、ダイアンみたいな貴族は人材じゃないんですよ。犯罪者です。国を食い物にする害なんですよ」

「そこまで言うのか……」

「いいですか?王族が、そんなどっちつかずだから悪人が得する国なんですよ」

「なっ!」

「だったら、ヒロトシも王族として会議に出席してくれてもいいではないか?」

「いえ、俺は遠慮しておきますよ」

「なんでだ?」

「前から言っているように、俺の王都復興計画は賄賂の撲滅です。その為には、ローベルグ様はブロッケン家ファート家を許した責任を取ってもらっての辞任!ハボリム殿下が国王として就任し、王国を贈賄のないクリーンな国へとたてなおしてもらう事です」

「それは無理だと言ったではないですか?」

「ティアナの言う通り無理な話だ。と言う事は、俺が王国の会議に出席をしても時間の無駄と言う事です。なので、王国のたてなおしは貴方方でやって貰ったら構いません。どんな王国になろうが、その法律の中で俺は俺のやれる事で、王都の役に立つことをやらせていただきます」

「そんな事をやったら王国に貴族が……」

「それだけ、貴族の皆さんは王都にとって害ということですよ。それか……」

「何かいい案があるのか?そういう意見を言ってほしいのだ!」

「本当によろしいのですか?」

「ああ!いい意見と言うのならそれを実行したい!」

「そうですか……俺が身を引きますよ」

「はっ?身を引くとはどういう事だ!」
「ちょっと待ってください!ヒロトシ様!そんな事をされてしまえば!」

 レオナが、慌てて話しに割り込んできた。

「俺がミトンの町に帰り、王都の事に口を出さなければ問題は無くなるということですよ」

「なんで、ヒロトシが王都を去らねばならん?」

「裏で貴族達は賄賂を当然の様にやっても、国の仕事はちゃんとしてくれますよ」

「それはそうだが……」

「俺はそんな貴族に税金を使われるのが嫌だから、賄賂を平気でする貴族達を取り締まりいなくなるのは無理だとしても少なくなってから、ビアンカをこの地で時々働いてもらおうと思っていた」

「それなら……」

「俺達の税金は、貴方達貴族を裕福にさせるものじゃない!だったら、ミトンの町に帰り王都の事は関係のないとこで生活すればいいだけだ。王都も俺がいなくなれば、貴族が減る事も無いしお互い安心だろ?」

「そ、それは……」

「俺がミトンの町に帰れば、王都に税金を納めるのは俺じゃなくてシルフォード様になる。俺はシルフォード様が治める町に税金を納めるだけで良くなるからね」

「確かに……」

「何を言おうとしているのですか。貴方は!この地から、ヒロトシ様の店が無くなったら、さらに王都は悲惨な事に
なるのですよ!」

「あっ!」

「アッじゃないですわ!ほんと、その脳筋をなんとかしなさい!」

「そんな、言い方ないだろうが!」

「そんな風に言われたくないのなら、もっといろいろ頭を使いなさい!」

「やっぱダメか……」

「やっぱダメかとはどういう意味だ?」

「ローベルグ様。実際の所、俺は自分の家族が幸せに生活できたらいいだけなんですよ。正直、王都がどうなろうが俺には関係ないと言う事です」

「何を言うんだ!」

「しかし、俺はシャーロットの婚約者だ。ローベルグ様とは義理の親子だから、王都がこんな状況だから助けになろうと思ったんだよ」

「だったら!ビアンカをこの地に住まわしてくれたいいではないか?そうすれば、王都は元に戻る」

「それじゃ駄目だと言っているんですよ。王国は建国1000という長い月日が経った。今時代の変わり目になったんですよ。このままビアンカに甘えても王国は滅亡しますよ」

「何故だ!」

「あなた……それ以上はもう……」

「レオナも何を言っているんだ?」

「俺は貴方を義理の父親だと思っていますが、ビアンカも家族と思っていると言うことですよ。国のトップがこう頼りない決断をするのなら、俺は見限ると言う事ですよ」

「なんだと!」

「ビアンカが頼れなかったら、俺に無理な事ばかり言うんじゃしょうがないでしょ?」

「それはだな……」

「いいですか?貴族が減るから賄賂をする貴族を見逃せってどういう了見ですか?その見逃した結果どうなりましたか?貴族が調子に乗って、平民が今どんな生活をしていると思っているんですか?」

「それはだな……」

「今回、俺は裁縫工場を開きました。家や働き口を失った平民を優先的に雇いましたが、それでも200名程です。募集に応じてくれた平民の数は2000人です。この人達は貴族の犠牲になって工場が潰れて行き場を無くした人達ばかりですよ?」

 ダイアンやヤンが、綿花を買い占めたせいで、綿かを買う事が出来なかった工場のオーナーは利益を出せずに利益を出せずに工場を潰してしまったのだ。

「そんな事が分からず、貴族が少なくなるからやめろってどういう事なんですか?国のトップなら今の状況をちゃんと把握して、貴族を取り締まる事をしないといけないんじゃないんですか?それと、ハボリム殿下!」

「は、はい!」

「本当に国の運営は自信ないのか?今までローベルグ様に教えてもらってきていたんだろうが?」

「それはそうだが……やはり父上のようには……」

「何で一人でやろうとしてんだよ?」

「へっ?」

「ローベルグ様は引退ってだけで、お前にアドバイスはできないのか?それと宰相様や公爵様は、ローベルグ様と一緒に引退してしまって、もう何もしないと言うのかよ?」

「「そんな事は!」」

「王国の長年にわたる悪癖は今のうちに根絶しないと、平民達は本当に王都を去る事になって王都は無くなるよ?」

「「「「……」」」」

「俺からの意見はそれだけだよ。ハボリムに言っておくが、俺が言われたからローベルグ様の後を継いだと決断したと、後から言ってきても俺の怒りを買うだけだからな?」

「なんでだよ?」

「当たり前だろうが!国を継ぐとなれば、お前の肩には貴族はもちろん国民の生活を守る責任があるからだ!俺のせいで決断したと言うのなら、俺が王国を乗っ取ってやるから覚悟しろよ!」

「そんな……」

 決断が出来ないハボリムを見て、宰相や公爵はそれならヒロトシの方がとちらっと思ったが、すぐにヒロトシから忠告を受けた。

「もし……そうなった場合、俺が国王となり今の王族や貴族は全てその責任を取ってもらうから覚悟しろよ?」

「「なっ!」」

 ヒロトシの言葉に宰相と公爵は、冷や汗を流す事になった。


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