研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第6章 研磨という職

22話 ヒロトシの王都復興計画

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 そんな中、サンライトでは色んなものが高沸してきていた。

「ご主人様……これではもう、今までの値段ではとてもじゃありませんが、利益を出す事は出来ません……」

「そうか……とうとうそこまで……」

 ケーキやドラゴン焼きに必要な小麦や卵の業者が、3度にわたって値上げをサンライトにお願いして来たことにあった。

「しょうがない……値上げをするしかないな……」

 王都でも、最後まで値上げをしなかったサンライトが値上げに踏み切った事は、町の人達に衝撃が走った。このころになると、王都のスラム街に人が増え始めたのだ。生活が出来ず住むところをおわれ、スラム街に身を寄せ始める人間が急増したのだった。

 王都はミトンの町より南に位置するが、これから冬の季節に入り野宿は辛い季節になる。王国の会議室でもそのことが問題になってきていた。
 風邪をひいても薬を買う事が出来ずに、こじらせる人間が増えると一気に風邪が広まる事になるからだ。

「小麦は貴族達の毒牙にかけられていませんが、王都はどうなってしまうのでしょうね……」

「小麦は独占できないんだろうな。しかし、他の物がこう高騰すればどうしようもないな……冒険者じゃない平民達が住むところを追われるのも無理はないな」

 ヒロトシとナミが、王都を嘆いていた時一人の人物がサンライトを訪ねてきた。

「ヒロトシ様!」

「えっ?ティアナか?どうしたんだよこんなところに?」

「どうかヒロトシ様の力をお貸しください!」

「オイオイ……ハボリムはどうした?お前一人でここに来たのか?」

「はい……」

「そんな事したら危険じゃないか?護衛の一人でもつけないと……」

「ご主人様。まず客室の方に……」

「ああ……そうだな。ナミありがとう。部屋の方を準備してくれ」

「わかりました」

「それにしても、王女殿下が一人でこんなとこにきてビックリしましたよ。護衛はどうしたのですか?」

「す、すいません……」

「いや、謝らなくてもいいですよ。俺もいつもセバスに怒られているけど、1人になりたい時もありますからね」

「ご主人様、部屋の準備が出来ました」

「ナミありがとうな。ティアナこちらへどうぞ?」

「ヒロトシ様はあんなことがあったのに、私の事をまだ呼び捨てにしていただけるのですね」

「俺達は友人だろ?」

「ですが王国は貴方様を……」

「まあ、国は国だな。俺達は国で繋がっている訳じゃないだろ?」

 ヒロトシがそう言うと、ティアナはその大きな瞳に涙を溜めた。

「それで、一人でここにやって来るとはどういう要件なんだ?」

「ヒロトシ様!お願いします。ハボリム様を助けてほしいのです」

「ハボリムがどうしたんだ?」

「この1年国王陛下と共に国を建て直すために尽力を尽くしてきました。しかし、ヒロトシ様も王都の現状が分かっているとは思いますがこの状況です……」

「まあ、しょうがないよ。あの時、国はあのような決断をしたんだ。このまま頑張るしかないと思うよ?」

「そんな事言わないで!このままではハボリム様も国王陛下も心労がたたって倒れてしまいます」

「う~ん……」

「お願いします!この通りです……私の事は友人だと言ってくれたではありませんか?ハボリムの事はもう友人ではないと言うのですか?」

「いや、友人だと思っているよ」

「だったら、お願いします。どうか……」

「いいかい?王国の歴史は賄賂と言ってもいいだろう。それは分かるかい?」

「はい……」

「これはローベルグ様が作ったものじゃない。ローベルク様の先代のその前から暗黙の了解として、受け継がれたものだ」

「それはそうですが……」

「俺がローベルグ様に引退を申し出たのは知っているよね?」

「はい……それを聞いたときは肝が冷えました。ハボリム様も物凄く怒って……」

「この引退を促した理由は、ブロッケン家とファート家を許したというか残した事での責任を取らせる為のものだ」

「責任って……」

「いいかい?あの家は麻薬密売という大罪を犯した家だよ。普通ならお取りつぶしだ。なのに、ローベルグ様は目先の理由で見逃したんだ」

「目先の理由?」

「ああ!その為に今の王都を見て見な?君ならわかるだろ?貴族がやりたい放題で、そのあおりを受けて平民達はスラムに住まざるを得なくなっているだろ?」

「そ、それは……」

「こんな言い方してごめんな?こういう状況にもかかわらず貴族や王族の考え方はまだ変わらない。保守的な考え方な奴らばっかりだ」

「そ、そんな、私達は少しでも改善しようと……」

「うん。これはティアナのせいでもないよ。だけどな……少しでも改善しようという気持ちじゃ駄目なんだよ」

「えっ?」

「王国の歴史を改善する気持ちじゃないと無理だと言っているんだよ」

「王国の歴史?」

「いいかい?今までこの土地には幸運の龍が住み続けていたおかげで、肥沃の土地だったんだ。だから、王族や貴族がその恩恵のおかげで、好き勝手しても成り立っていたと言っても過言ではない。賄賂を贈っても平民達がそのあおりを受けていたとしても、こういう情況にはならなかったと言う事だ」

「そ、そんな……」

「だけど、この土地が元に戻った事で、生産が落ちてもまだ貴族達は出世の為賄賂になる金をかき集める。しかし、その金となる産物が低下しているんだ。そうなると、こういう現状になるのは分かるだろ?」

「……」

「国を運営するには貴族の力は必要だよ。だけど、優秀な貴族は何をやっても良いわけでは無いんだよ。あの時、ブロッケン家とファート家は取り潰すべきだったんだ」

「でも……」

「でも?」

「そうなればだれが?」

「ローベルグ様は今この状況を作った責任を取り、ハボリムに王位継承したら良いじゃないか?」

「でも、ハボリムも私もまだ若くて……」

「いいかい?そんな気持ちで王族を続けるのなら辞めておいた方がいいよ。俺が言っている意味はそんな浅い意味じゃないよ」

「えっ⁉」

「俺が言っている意味は、破壊と再生だ」

「破壊と再生?」

「俺がローベルグ様に引退を言った時、普通なら打ち首ものだ。しかし、それをやらなかったのは、ローベルグ様とレオナ様もその意味を理解していたからだよ」

「国王陛下と王女陛下がその意味を?」

「まあ、それを踏み切れなかったのは、今の君を見てわかった気がしたかな?多分、ハボリムもまだ国王としての器ではないんだろうね」

「なにを!ハボリム様は立派なお方です!」

 ヒロトシの言葉に、ティアナは憤慨した。

「ああ。立派な方なのは知っているよ」

「だったら、今の言葉は取り下げてください!」

「じゃあ、君もロドン王国の王女陛下としての心構えを持ちなよ」

「なんでですか?レオナ王女陛下がいるではありまんか?」

「もう一度説明するよ?今の王都をよみがえらせるのは貴族達に賄賂をやめさせることだ。これは長年続く王都のしがらみを断ち切る事だよ」

「それじゃあ……」

「そう!これまでローベルグ様の代まで築き上げてきた王国は無くなるという事だ。つまり、ロドン王国は破壊される……」

「そんな!」

「そして、次の代はハボリム国王陛下とティアナ王女陛下の誕生だ!これが新生ロドン王国!再生となるんだ。つまり老害になっている貴族達は解雇。賄賂も無くしクリーンな王国を目指す事になる」

「そんなの無理です!」

 ヒロトシの説明に、ティアナは大きな声を出し冷や汗を流したのだった。


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