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第6章 研磨という職

9話 王都に進出

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 ローベルグは、この現状を受け入れることが出来なかった。

「ヒ、ヒロトシ……国王のこの俺がここまで頼んでいるのに駄目なのか?」

「ちょっとローベルグ様の言っている意味が分かりませんね」

「何を言っている!こうして俺は、いや余は頭を下げているではないか?」

「それは、ビアンカにですよね?俺にお願いなんて今までしていましたか?」

「はっ?何を言っている!余は!」

「だから、それはビアンカを王都に住まわせる為に頭を下げていたのですよね?俺はその問いに駄目だと言っていただけですよ。ローベルグ様は俺に何を助けてくれと言ったのですか?」

「「……」」

「それともレオナ様が、俺に王都を助けてくれとおっしゃいましたか?」

「ちょっと待ってください!ヒロトシ様は、さっきから何を言っているのですか?」

「まだわかりませんか?貴方達王族は楽をしようと、ビアンカを囲もうとばかり考えていると言いましたよね?チョットは今の状況を受け入れて、自分達で政を考えろと言っているのですよ」

「考えておるではないか?」

「それは今まで、ビアンカがいた地域で国を運営してきた事ですよね?これからは、ビアンカは他の土地に移った事でそれを受け入れて、政を図れと言っているんですよ」

「だからそれは無理だと……」

「じゃあもし、ビアンカがミトンじゃなく帝国に移り住んだら、帝国に国が成り立たないから、ビアンカを返せと言うおつもりですか?」

「それは……」

「そんな事を言えば、帝国と戦争が始まりますよ?それがローベルグ様の国の経営なんですか?ロドン王国はそんなに自分勝手で危ない国だったのですか?」

「馬鹿な事を言うな!」

「で、そのことを踏まえてローベルグ様は、俺に何をお願いをされたのですか?」

「それは……」

「あなた!」

「ヒロトシは、ビアンカは王都に戻さないと言ったではないか!」

「ビアンカは、俺と一緒にミトンの町で暮らしたいと言っているのです。当たり前じゃないですか?」

「だったら……」

「ヒロトシ様の言いたいことは分かりました!どうか王都の手助けをして下さい!」

 レオナはヒロトシの言う事をようやく理解できたようで、ローベルグでは話にならないと思い、レオナがヒロトシに助けを求めたのだった。

「レオナ様は分かったようですね?」

「は、はい!ヒロトシ様が言う貴族達が意見を出し合って、王都を盛り立てないといけないのですね」

「本来は、王都に住む貴族だけでやってほしいかったのですが……レオナ様が、俺に助けを求めるのであれば手を貸しましょう」

「そういう事か……」

「ローベルグ様は俺に助けを求めましたか?」

「い、いや……」

「だったら、俺は俺のやることを優先するだけですよ。何せ俺はミトンの町で生活しているのですからね」

「た、頼む!王都の手助けをしてくれ!」

「はい!分かりました。お義父さんとなる人のお願いを格安で聞いてあげますよ」

「金をとるのかよ……」

「俺は商人ですからね。タダ働きはしませんよ。それともタダで協力しましょうか?」

 ヒロトシは、ローベルグに不穏な笑みを向けた。その笑顔を見てローベルグは背筋が寒くなった。

「い、いや……タダより怖いモノはないな……報酬は支払わせてもらうよ」

「毎度!」

「それで、ヒロトシ様は王都でどんな協力をしてくれるのですか?」

「サンライトの2号店を開きますよ」

「う、嘘ですよね?あの砂糖菓子を使った人気店が、王都に進出すると言うのですか?」

「ええ!それぐらいの余裕は出来るようになりましたからね」

 シュガー村でサトウキビの栽培が拡張されているのと、護衛メンバーが魔の森を捜索できるようになり、砂糖の収穫量が増えたことにあった。

「砂糖豆の入荷量が増えたのか?」

「その辺はノーコメントです。しかし、サンライト2号店を出店すれば、人を集める自信はありますよ」

「しかし、ヒロトシ様!」

「レオナ様、なんとなく言いたいことはわかりますがなんですか?」

「サンライトの責任者は誰を?」

「そりゃ、俺がするに決まっているではないですか」

「しかし、砂糖の行商はミトンの町からするのですよね?時間がかかるのでは……」

「何を言っているのですか?俺には瞬間移動があって、ここに来たときの事をもう忘れたのですか?」

「「あっ……」」

「ようやく俺の計画が理解できましたか?」

「ああ……」

「ローベルグ様は、ビアンカがいなくなったこの土地を受け入れて、王都の経済をまわす手段を考えてください!」

「わ、分かった……」

「俺は一旦ミトンの町へと帰還し、サンライト2号店の計画を練りますので、後はよろしくお願いしますね」

「ヒロトシ様……本当にありがとうございます。これで王都は持ち直すでしょう」

「レオナ様……」

「はいっ!」

「その言葉は早いですよ。俺が王都に進出すればメリットもありますがデメリットもあります。今までのような黙認されていたものは無くなると思ってください!」

「ヒロトシ様が王都にくる事でのデメリットなんかあるのですか?」

「シルフォード様の所でさえ、色んな不正があったんだ。王都にないわけないだろ?」

「「うっ……」」

 ローベルグとレオナは言葉に詰まった。

「それともサンライトの進出をやめた方がいいか?俺はどっちでも構わないよ。進出することになれば、俺も王族として口を出させてもらうから覚悟しておいてくださいよ」

「そ、それは……」

「王都を建て直すと言う事は、王族や貴族の不正や無駄遣いを取り締まるという事ですからね」

「そんな事をすれば!」

「反感を買うなんて言わせませんよ?ローベルグ様。王族や貴族は平民達が住みやすい国を作ってください。じゃないと、王都の人口が減るんですよ?そのことを第一に考えて政策をしてください」

「だが!サンライトが進出したら、平民達は王都に集まって来るではないか?」
「そ、そうですよ!なにも貴族達を取り締まらなくても」

「そういう考え方なら、俺は王都の協力は止めさせてもらうよ」

「「なんで?」」

「それならビアンカに依存していた事が俺に変わるだけだからな。俺は、王族や貴族達の私腹を肥やす為に税金を納めるつもりはないよ。住みやすい王都になるのを願って、税金を納めるんだよ」

「うっ……」

「ヒロトシ!もうこの人たちに手を貸すのは止めた方がいいよ」

「なっ!お前は黙っておれ!王都から離れるのであろう?もう関係はないじゃないか!」

「ローベルグ様?何を言っているのですか?ビアンカも関係者ですよ?サンライトの従業員なんだ」

「しかし、そ奴はミトンの町に帰るのであろう?関係ないじゃないか?」

「分からない人達ですね。本当に国の経営を任せられるのか?」

「また馬鹿にしおってからに!」

「いいですか?サンライト2号店がここに出店されても、そこで働く従業員は毎日ミトンの町に帰るのですよ?そうなれば、ビアンカも2号店で働く事になります」

「なんだと?従業員全員がミトンの町に帰るだと?」

「そりゃそうですよ。1号店の人間も全員立場上は奴隷なのですからね。2号店も、立場上は奴隷を雇う事になります」

「何故奴隷を雇うのですか?平民でいいじゃありませんか?」

「サンライトには、企業秘密が多いからですよ。スイーツのレシピも内緒ですからね」

「だが、何でビアンカが王都で働くのだ?」

「ビアンカは俺と生活することが望みなんだ。だったら、ちゃんと帰還さえできれば問題はないだろ?それに……まあこれはまだ内緒にしておこうかな?ビアンカにはもっと頑張って貰わないといけないしな」

「ヒロトシはホントいろんなことを考えているね。でも、ヒロトシの命令ならできる事なら何でもやるよ」

「ありがとな」

 ヒロトシとビアンカは見つめ合って、何かを確信しあっていた。


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