研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第6章 研磨という職

2話 商品は誰が使うもの?

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 日々忙しくしている中、やはり生産ギルドのアリベスから、㋪美研の新商品状況はどうなっているか聞いてきた。

「オイオイ……そんな事言えるわけないだろ?」

「ですが、㋪美研の新作はシルフォード様も待ち望んでいるんですよ?」

「それは分かるが……しかし、企画段階で外に漏らすわけないじゃないか」

「だけど、シルフォード様に約束してましたよね?」

「それとこれは意味が違うだろ?それに、生産ギルドでも新商品を販売して見たらどうだ?」

「そ、それは……それが出来たのなら㋪美研へ来ていませんよ」

「新商品の開発は難しいって、ちゃんと理解しているじゃないか?」

「うっ……でも、ヒロトシ様はいつも新商品で世間を驚かしているではありませんか?」

「だから、今回もすぐに新商品が開発されると言いたいのか?」

「それは……」

「アリベスさんの気持ちも分からない訳ではないが、0から1を生み出す事は、やはりそれなりの時間がかかるんだよ」

「はい……」

「まだ納得がいかない感じか?」

「それでもヒロトシ様なら……」

「なら、生産ギルドも俺の得になる何かを生み出してくれ」

「何でいきなりそのような事を!」

「いやいや、生産ギルドが俺にやっていることを、俺も要求しただけだよ?俺達の関係は持ちつ持たれつだろ?俺が新商品を考えたら、生産ギルドは利益が生むだろ?だったら俺にも、生産ギルドから新しいもので得になる何かを求めても罰は当たらんだろ?」

「そ、それは……だったら、新商品の売り上げの取り分を……」

「いやいや、そういうんじゃなく!生産ギルドが何かを開発し、町の人達の生活がよくなり、その影響下で俺に得になる事だよ」

「どういうことですか?」

「つまり、俺が商品開発するのはシルフォード様や生産ギルドの為じゃないと言う事だよ。あくまでも、ミトンの町に住む人間が幸せになることで、俺はその結果で皆様からお金を頂いていると言う事だよ」

「えーっと……」

「分からないかい?研磨技術は冒険者が強くなることで生活が楽になったり、サンライトのスイーツは、町の人間が日々の疲れを癒すためにある事が前提だ。鏡にしたって女性が綺麗になる為の物だろ?それに納得してお金を払っているんだよ」

「はい……」

「だから、生産ギルドはミトンの町の人間が、その商品を購入しても損はないという物を開発してくれ」

「そんなの無理ですよ!」

「なんでだよ?その商品がいいものなら俺も購入するからさ。これは俺が購入して得したな!という物を開発してくれ」

「そ、それは……」

「そうなれば生産ギルドも俺を頼らなくても独自の商品ができるし、町の復興にも役に立てるというものだろ?」

「うっ……」

「いいか?よく考えてくれよ。今、町の復興で大変な時期だ。生産ギルドは、生産者を管理するだけが仕事だと考えていたらダメなんだよ」

「なんでですか?今まで通りでいいじゃないですか?」

「前の地震で、町の人間の財布のひもが固くなっているだろ?」

「当然です。町の人間達も生活に不安がありますからね」

「だが、あんた達町の役員は、町の復興のためにみんなに金を使って貰わなきゃいけないんだろ?」

「はい……」

「それで、今まで通りでいいじゃないですかというのは間違っているだろ?」

「うっ……」

「生産ギルドが、こんなに㋪美研に急かしてくるという事は、他の店の売り上げが出てないと言う事なんだろ?」

「はい……」

「その理由は?俺が言うまでもないだろ?」

「……」

「つまりだ。それだけ町の人間達はそれら商品に魅力を感じていないからだよ。震災前なら少しは生活に余裕があったから、余分に購入していたが今は生活に不安があるから、本当に必要な分にしか町の人間は金を出さないということだよ」

「うぐっ」

「俺もそうだよ?金に余裕はあるがそんな殿様営業しているところから、物を購入することはしないさ。だけど、これを購入したら生活が楽になると思わせる商品が、生産ギルドから出たなら間違いなく購入するよ」

「だけど、ヒット商品がそんな簡単に……」

 興奮して言いかけた言葉を、アリベスは慌てて飲み込んだが、ヒロトシがそれを見逃す事は無かった。

「だよな?そんな簡単にヒット商品が出来るわけなない!アリベスさんもわかっているじゃないか?」

「うううう……」

 ヒロトシはしてやったりとニヤリと微笑んだ。

「じゃあ、申し訳ないがこういうやり取りは不毛という事でお引き取り願います」

「又、きます……」

 アリベスは、肩を落として生産ギルドへと帰っていった。そのアリベスの姿を見てヒロトシは苦笑いをした。そして、研磨工房に戻り作業を再開したのだった。

「主どうでした?」

「ああ、アリベスさんがまた急かして来ただけだよ」

「やっぱりですかい?」

「まあ、そんな言ってやるな。ギルドも今回の震災で何をしていいのかよくわからないだけだよ。だったら㋪美研を頼るのが手っ取り早いだろ?」

「ホント、主は人がいいなあ。どうせ、ギルドにアドバイスもしたんだろ?」

「まあな……だけど期待は出来そうにないよ」

「だろうな」

「まあ、でもシャーロットからヒントも貰えたし新しい商品を作ろうと思うよ」

「なんだかんだ言っても、凄い商品を作ってしまうのが主の凄いとこだよな……」

 ガインは、呆れながらヒロトシに言った。ヒロトシは人ごとのように、ガインの言葉を笑っていた。





 数日後、ヒロトシはガラスを作れる人間に、分厚い円形のガラスを作ってもらった。

「主、マードンに何を作らせたんだ?」

「これだよ?」

「こんな分厚い円形のガラス何をするんだ?」

「こいつを綺麗に磨き上げて眼鏡を作るんだよ」

「眼鏡って何だ?」

「要はよく見えるようにする道具かな」

「ルーペみたいな物か?」

「まあ、そうだな。常時つけていれるようにできるかな」

「へええ……こりゃまた凄いものだな」

「これで老人も本が楽に読めると思うよ」

「もしこれが売り出されたら老人は喜ぶだろうな」

「まあな。目がよく見れれば行動範囲も広がるだろうし、裁縫もやりやすくなるだろうしな」

 町の老婦人なら、昔は裁縫師としてその腕を振るっていた。しかし、目が悪くなりその職を引退する人が多い。目さえ良くなれば、老人も趣味の範囲でも収入が得る事ができるのだ。

 ヒロトシは、見本となるレンズをいくつも磨き上げた。そして、一ヶ月後眼鏡の見本を置き、老人用として販売を開始したのだった。



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