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第5章 意外なスキル

33話 混乱するローベルグ

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 ヒロトシは直接、㋪美研にリコールして帰ってきた。まさか、ローベルグはこの世に瞬間移動が出来る人間がいるとは思ってもいなかったのだ。なので、ミトンの町にいる王国騎士団が動き出した時には、㋪美研とサンライトには誰一人はいることが出来なくなっていた。

「ただいま」

「おかえりなさいませ。どうでしたか?」

「それがだな……とりあえずシャーロットを呼んできてくれないか?」

「わ、わかりました」

 セバスはヒロトシの只ならぬ顔つきに、何かがあったと悟りすぐにシャーロットを、サンライトまで呼びに行ったのだった。

「ヒロトシ様、急ぎって何ですか?あたし、サンライトで皿洗いの仕事で忙しいんだけど」

「まあ、そんなに文句を言うな。今後のシャーロットにとって重大な事なんだ」

「重大?」

「まず、シャーロットの母親の名は何というんだ?」

「母はローザだよ?それがどうかしたの?」

「父親の名前は知っているか?サキの父親じゃないぞ?」

「あたしが赤ちゃんの頃に母は離婚したし、なんでも魔物に殺されたと聞いて何も知らないよ」

 ヒロトシはローザの名前を聞いて、ローベルグの娘と確信を持った。

「シャーロット、落ち着いて聞いてくれ」

「落ち着いているよ」

「君の本当の父親は存命している」

「えっ?」

「君の母親は、何で君にその事を言わなかったかはよくわからんがどうする?」

「聞きたい!あたしの本当の父親は誰なの?」

「ローベルグ様というお人だよ」

「ローベルグ様って誰?」

「ロドン王国国王陛下だよ」

「国王……様……」

「この10年君を探していたそうだ。そして、君を王女として迎え入れたいと俺に言ってきた」

「あたしが王女?嘘でしょ?」

「本当だよ。君は、これを受け入れれば王族となれる。これから君は王族として、その人生を謳歌することができるよ」

「本当に!あたし王女になる」

「そ、そうか。じゃあ、4日後俺が王都へ送り届けてあげるよ」

「えっ?あたしは王都に行く事になるの?サキお姉ちゃんは?ジュリお姉ちゃんは?」

「あの二人は俺の家族だからな。ここで生活することになるよ」

「あたしは王都で生活するの?王都というより王城だな」

「えっ?そしたらヒロトシ様との結婚は?」

「君は王族となるんだ。俺との結婚はないよ。多分どこかの貴族様とご結婚となるだろう」

「じゃあ、嫌です!あたしは王族にはなりません。ヒロトシ様に一生を捧げると決めたんです」

「やっぱそうなるよな……」

「何でそんな残念そうなのですか?」

「……」

 ヒロトシはシャーロットへの返答に困っていた。すると、それを察してセバスが代わりに答えた。

「シャーロット様、私から説明さしあげてもよろしいですか?」

「えっ?」

「旦那様は、シャーロット様の願いを叶えたいと思っているのですよ」

「だったら、何でそんなに困った表情を……」

「当たり前ですよ。シャーロット様が王族になりたくないと言えば、旦那様はそれに力を貸す事になり、国王陛下にたてつく事になるのですからね。そうなれば、旦那様は王族にたてついた者として、どうなるかは火を見るよりも明らかでしょう?」

「だったら、あたしは王族になるしかないと言う事なの?」

「セバスの言う通りなんだが、シャーロットは王女になりたくないと言うんだよな?」

「そんな事を聞いたら当たり前じゃない。国王陛下が実の父と聞いても、今まであった事も見た事ないお人でしょ。何で、そんな人の為にヒロトシ様の側から離れないといけないとのですか?」

「じゃあ、シャーロットは俺達から離れたくないという意見でいいんだな?」

「当たり前じゃない!」

「じゃあ、やることは決まったな。シャーロットは王族にはならないという事だ」

「それはあたしの自由にしてもいいと言う事ですか?」

「まあ、そうだな。シャーロットは、これから王族とは関係のないところで生活することを認めてもらおう」

「それは叶うのですか?」

「叶えると言うのが正解だな。そして、セバス達はシュガー村に避難してくれ」

「私達が避難?」

「俺はこれから、シャーロットとミルデンス達を連れて王都に行ってくる。ようは、ローベルグ様に意見をしてくることになるからな」

「ですが、それでなぜ?」

「いいか?俺の弱点はお前達セバスやマイン達だよ。俺が言う事を聞かないなら、お前達を人質にされたら一貫の終わりだ」

「私達が旦那様の足かせに……」

「そういう不安要素はあらかじめ潰して置くに限るよ。まあ、ここにいても悪意のあるものは侵入できないが、シュガー村に避難した方が安全だ。あの場所には近づく事も出来ないからな」

「わ、分かりました……」

「サンライトは明日は通常業務にして、店には休業の張り紙をする。㋪美研は明日からの受注を中止し、3日の業務をして全員がシュガー村に移住してもらうので準備をしてくれ!」

「承知いたしました」

 準備できた者から順次、転移プレートでシュガー村に移住したのだった。そして4日目の朝には㋪美研とサンライト関係者は全てミトンの町から撤退したのだ。
 理由としては、ヒロトシが王都に行く事で材料がそろわない事にした。そして、王都に行くメンバーはヒロトシとシャーロット。護衛メンバーでミルデンス・ミランダ・アイリーン・アイリ・ウィノア・オリビア・カノン・シアンとセレンにした。
 最後にビアンカとブルーも着いてくる言ったのでブルーは厩舎に入って貰った。

「このメンバーなら心配は何もいりませんね」

 助手席に乗ったシアンが、ヒロトシに話しかけた。

「まあ、お前達はもう魔の森にサトウキビを採取できるくらいに強いからな。ローベルグ様より強いだろうし、俺の研磨装備もしているから大丈夫だと思うが油断はするなよ」

「任せておいてください。シャーロット様は必ず守りますよ」

「あくまでも話し合いだからな?絶対にこちら側から手を出すなよ」

 そして、ヒロトシ達が出発して次の日にウィンドバードの書簡が届いた。その時にはヒロトシの関係者は全員がミトンの町にはおらず、王国騎士団はこの事実に驚愕し何もできずにいた。

「どういう事だ?ヒロトシ男爵様はいつの間に王都に行っていたんだ?」

「我々には全然……」

「それに、あの少女が王女かもしれないとはどういう事なんだ?」

 出張に来ている王国騎士団は、第40番隊という下の方の番隊だった為、この事実を初めて知ったのだ。 

「これはもう我々の手には負えぬ……昨日から㋪美研の人間はミトンの町にはいないんだ……」

「ギルドの通信機を使わせていただき、主君の指示を仰ごう」

 ギルドからローベルグは呼び出されたのだった。緊急の要件でありその話を聞き、何が何だか訳が分からなかったのだ。

「どういう事だ!ヒロトシは4日ほど前に結婚の報告に王都に来たのだぞ」

「何故主君がそのことを知っているのですか?それに、ヒロトシ男爵様は王都には行っていません」

「馬鹿な事を!宰相もレオナも一緒に会話をしたのだぞ」

「そんな事はありません……ヒロトシ様は昨日ここミトンの町を出発なされたのですよ。それに、今ミトンの町にはヒロトシ様の関係者は誰もいません」

 ミトンの連絡に、ローベルグは何が何やら全く分からず頭を抱えるしかなかった。

「本当にヒロトシは……ミトンの町にいたと言うのか?」

「はい!」

「わ、分かった……あの手紙の内容は他言無用だ。お前達はそのまま業務に戻ってくれ」

「はっ!」

 ミトンの王国騎士団隊長は、ローベルグから通常業務に戻れと指示をもらいホッとしたのだった。そして、通信を切ったローベルグは頭を抱えたのだった。

「ヒロトシの奴め……どんな隠し玉があると言うのだ……まったく底の見えぬ奴よ」

 ローベルグはヒロトシの手のひらの上だった事に苦虫を噛みしめた顔となっていた。


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